御前教会の真実 ダブモン!!2話/14
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「もう少し、ゆっくりなさって行けばいいのに・・・」
「いえいえ、もう日も落ち始めている、逆に長居をしすぎてしまったほどだ」
教会の入り口で、残念そうに少し顔を伏せるマリアナに、私は言って聞かせた、
資料室で少々本を読み漁った後、資料室の上階の教職者長室にも行ってみたが、結局何もなかった、
後は教会の外と鐘の場所のみ、しかし、鐘のある場所へははしごを使って外から登らねばならないし、外に出るとこんな時間だった、外にあるという倉庫はまた今度にしよう
「今日の所は宿に泊まって、明日、村の中の適当な空き家を借りようと思う、どこかないかい?」
「ええ、心当たりがあります、旅に出ている間に探しておきましたわ、時間があれば紹介したかったのですが、今の時間では、村の役場に申請は・・・」
「ははは、時間の配分を間違えてしまったね、それでは、今日は互いに引越しの準備ということで」
「夜の間に荷物をまとめておきますわ」
そうだ、早い内に渡しておこう・・・
私は、鞄のふたの端から右手を突っ込んで、中から一つの小箱を取り出す、
紺色の布で表面を作り上げた角の丸い小型の箱だ、
マリアナの方に出してかちりと中程からこちらに開けると、中の中央が横にへこんだ濃紺のクッションの中に、二つの銀の指輪が左右に、少し重なり並んでいた、
「まぁ・・・これは・・・!」
マリアナの表情が優しげな驚きに満ちる
「わざわざ、教皇庁で一番人気の物を選んで来たんだ、と言っても、あそこは質素な物が好まれるから、飾り気の無い物なんだけどね、君から見て左側の物が男性用の物だ、式で・・・その・・・」
「わかっています」
左側の物を取り、わざわざ、両手を首の後ろに回して首にかけたシンボルのひもをほどき外すと、そこに指輪を通して首後ろで結び直し、
シンボルと指輪を法衣の下に納めこんだ、
「これならば無くしませんわ」
「盗まれないように気を付けてね」
「はい、あなたこそ」
「ああ、そうだね」
言われ、急いで蓋を閉じて鞄に入れ直す
「それじゃ、明日、朝起きたらすぐに来るよ」
「お待ちしております」
マリアナがゆっくりと頭を下げ、私は、神殿側にあったはずの宿屋に向かい、歩き出す、
そこにしばらく行った後に左手からアントイワンが後ろに付くように合流する
思わず、真剣なトーンに声が変わっていく
「首を振るだけで答えろ、怪しいものは?」
アントイワンが首を横に振る
「こちらは残念ながら存在した、周辺のダブモンに話は訊けたのか?」
今度はかすかに首を縦に振る
「どれくらい聞けた?多くに訊けたのか?」
大きく首を横に
なるほど、たくさんは聞けなかったわけか、もっとも、アントイワンはこうだから、へたすると虫系のダブモンのみとしか会話できなかったという可能性も十分にあるが・・・
「今後は情報収集と共にこの村で手伝えることを探して村人の信頼を得る様に、その際に高すぎない限りなら賃金をもらってもいい、なに、教会所属のダブモンなら難しいことじゃない、賃金がもらえないなら、食べ物と寝床も教会からもらえるように話しを着けておこう、だが、今日は宿に戻り休養を取ろう」
アントイワンは首を大きく縦に振って、
私達は暗くなる前に宿への道筋を急ぐのだった・・・
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