バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

御前教会の真実 ダブモン!!2話11

 

御前教会の真実 ダブモン!!2話/11
 

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 「では、どこからまいりましょうか?」
 少しの時間笑いあった後、マリアナが問いかけてくる、
 「そうですね、一番近いのはキッチンとシスターたちの部屋ですが、女性たちの部屋にいきなり入るほどぶしつけではありません、後日にしましょう、嫌ならば行かなくても構わない」
 「そうですね、それは他のシスターと相談しましょう、では他は・・・」
 「キッチンはさっきさっとですが見ましたので、礼拝堂を通って資料室に行きましょう、その後、教職者長の執務室も、構いませんよね、リビエーラ教職者長」
 「ええ、構いませんよ」
 そう言って、私達は椅子から立ち上がり、キッチンの扉の方に向かい、開ける、
 さて、ここからだ、アントイワンは興味が無いといったが、それとなく外の様子を見に行ったのだ、
 森の中には教会の畑もあるため、それを見るのも兼ねて、である、
 出来うるなら、周辺のダブモンから情報を得てほしいと、打ち合わせでは言っておいたが、さて、そこまで余裕があるかどうか・・・
 「こちらに・・・」
 気が付くと、礼拝堂の、キッチン真向いの扉の前にまで来ていた、
 そのままマリアナが右手で丸ノブを持ちドアを引き放ち、先の狭い廊下の先の扉も次いで手でドアノブをひねり開け押す、
 「おぉ・・・」
 そこには、暗い、石床の室内で、右手に向かって古ぼけた二列の本棚が並んでいる光景があった、
 光源といえば右手と奥に窓が一つずつあるのみ、と思ったが、左手の机と椅子が置かれたスペースの上中央に鉄のカンテラがぶら下がっている、夜などはあれに火をつけて対応するのだろう、
 他には机の奥の方に小さな黒板がいくつも、一番奥には大きな黒板もある、
 讃美歌を歌う日などはあれを使い子供達に勉強を教えているのを見たことがある、机やいすは教会外の倉庫に入れているのだろう、
 教科書用の聖書と一緒にここから持ち出すに違いない、
 「素晴らしい、古い本がたくさんある・・・」
 「いえいえ、褒められるものではありません、ただの古ぼけた本ですわ」
 少し照れくさそうにマリアナが返してくる、それに対し、マリアナに目線を移しながら・・・
 「いやいや、教皇庁でもあれらの本は少し見ません、少しだけ、見て行ってもよいでしょうか?」
 「ええ、どうぞ」
 マリアナの言葉に、私は資料室に入り、本棚の間を歩く、
 ・・・先ほどの教皇庁でも見ないという話、あれは半分本当である・・・
 この教会の歴史は古い、一時期は巡礼者でごった返していたはずである、
 何せ女神がいて世界樹のある聖域が目と鼻の先にある、当然、当時の信仰者たちは教会を、正確にはその元となる巡拝堂を、最優先で打ちたてた、教皇庁が出来る前から存在していると言っても過言ではない、
 その証拠に、教皇庁大図書館によく出入りしていた私ですらも知らない本がちらほらと見える、
 ただし、ここ最近(といっても百年以上だが)は巡礼者たちも数少ない、なぜなら教皇庁が“聖域に用無き者は訪れることを禁ず、犯した場合は重罪なり”というお触れを出したためである、
 理由は知らない、たくさんの巡礼者に女神が対応に苦慮したからとも言われるがはてさて・・・
 その為、すでに当時に必要や貴重だった本は、お触れが出た後、教皇庁に接収されているはずなのだ、巡礼者が少なくなるにつれ、神職者も別の場所に移り、管理能力無しと判断され・・・その書類は今でも教皇庁に残っていて、私も目にした、
 ただ、接収する必要のない本はそのまま残されたため、古い本というのは当然のごとく残っているのだ、
 教皇庁大図書館は今でも拡張を続けているが、それでも収蔵選考に落とされる本というのはあるわけで・・・
 と、いけない、考え事で気を散らしている場合ではなかった、
 マリアナに見えないように目を閉じ、意識を集中する、
 魔の気配、正確にはそれが存在する感じというのは、一般の人間でも感じることができる、
 ただし、少しのコツと修業が必要なのだ、
 魔その物を感じるのではなく、漂ったり流れ出るそれによって押し引きれる空気やその空気の流れを感じる・・・
 私がここに戻るのに少し時間がかかった本当の理由がこれ、
 そもそも、上司への婚姻届の受理も、転属手続きも、一日と掛からずに終わった、
 洗礼の方もその日の内に、受理手続きの間に終わった、何せ、私の属する宗派の婚姻の洗礼は滝行なのである、一時間程度、滝の下で座禅をする、
 宗派によって洗礼は異なる、左右にたき火を置いて座禅を組む火行、氷原の雪や砂漠の砂の上で同じく座禅を組む雪行、砂行、重いものほど時間は短い、
 この辺りでは森の中で座禅を組む森行だったはずである、森林浴ではない、
 洗礼は以前は上司が指定していたものがあり、それがために上司が嫌がらせできつい洗礼をさせていたこともある、たき火上の鉄板で座禅しろとか・・・
 それを前教皇庁の長が“愛する者と一緒になるのにそのような苦痛は必要ないでしょう”と、命に関わったりけがや大けがをさせるものを禁止させたのである、
 かわりに上司に届け出を出さなければならなくなったが、これは必ず受け取らなければならない決まりがある、これは単に教職者の婚姻を把握しておくためであり、
 婚姻を邪魔できる制度にはなっていない、
 ここから教皇庁まで大急ぎで一か月ほど、私がこちらに戻ってくるのに三ヶ月ほどかかった、その一か月の間に
 ん?何か妙な気配がするな、左手の方・・・
 マリアナに気付かれないよう、まず、かがんで気配の下の本を見て、ごまかしていく、
 ここにある本に気を引く物は無い、適当に一通り見て、そのすぐ上の段まで膝を伸ばして見る、
 ・・・中央少し左のこちらに背を向ける古ぼけた薄緑の本・・・
 その本の右側の本を見るふりをしてその本も観察する、奥に錠が見える、封印された本だ、他の物に比べ埃をかぶっていない、頻繁に持ち出しがされている証拠だろう、
 どさくさに紛れて触れてみたところ、空気の押し引きから魔の気配が濃厚だ、それを封印で無理やり気配を消しているという感じだろう、本にしては軽いため、本型の入れ物で、中に何か仕込んであるのだろう・・・
 魔の気配がする物は許可無く教会に持ち込んではならない、持ち込むときは必ず届出をしなければならない、教職者が知らぬはずはない、これだけで・・・
 そのままごまかすように上の方に体を伸ばし、
 「これなど少し読んでみましょうか・・・」
 気配の本の右上にある本を取ってみる、
 題名は“聖域の前の教会、その起こり”どうやら、この教会の始まりについて書かれた本のようだ・・・
 
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