御前教会の真実 ダブモン!!2話/10
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村の中央道を俺達は進む、
ワハハハハ・・・
左手から聞こえた声にそちらを向くと、民家の木のドアに付いた田の字の窓の向こうから、酒に酔ったおっさんの顔が見えた、
前髪が少し長いだけのみすぼらしい髪に無精ひげ、安物の水色の前開きのシャツを着ている、
と思えば首から紐付で木製の棒に両翼が付いたようなものをぶら下げている、
昼間から酒浸りのおっさんか・・・
よく見ると民家のドアの右上に刺された金属の棒に泡吹く手持ち付ジョッキコップの焼印がされた木の看板がぶら下がっていた、
なるほど、酒場か何かか・・・
だが、その声以外には何も聞こえない、静かなもんである、村民も誰もいない・・・家の中にでもいるのか・・・?
ん・・・?
「あれは・・・?」
その右手にあったのは大きな民家、おそらく、三角屋根の二階建てだろう、そう、先ほどいった教会だ、
そういえば、あの一番上の四角錐の上、先ほどのおっさんが下げていた首飾りと同じ形のシンボルが立っているな、あれって、一体何なんだ・・・?
さらには奥から微かに歌が、たくさんの人が歌う、まるで荘厳な讃美歌のような・・・
「良星、あれ・・・」
「良星、あれ」
兎白と鼓動の声にふと己を取り戻す
「なんだよ二人とも」
「あれ、青空教室ってやつじゃないか?」
「そんな感じだよね」
「青空教室・・・?」
二人が教会の横奥の方に目線を向け、俺もそっちの方を見る、すると、そこには子供たちがいた、
簡易で背もたれの無い丸椅子、こちらも簡素に板に足を付けただけのような木の机が並べられ、奥には大きめの広葉樹の袂にそれにしては少し小さめの黒板があり、そこにいる教師役の誰かに白い小円柱のチョークで長い文のようなものを書き込まれていて、
その前にいる黄や茶の単色の簡単な衣服にその身を包まれた子供たちは、それぞれに配られたであろう小さな黒板にチョークをこすりつけていた、
しかし、黒板の前にいる教師役、先生の方は俺の知る教師とは違い、白い半円の首かけの付いた紺色の分厚い衣服をまとい、頭に同じ色の頭巾をかぶり、頭巾からは白い留め布に頭巾の下から濃い茶髪が垣間見え、優しげな雰囲気と共にほくろが左目下と口の右下についていて、
胸の所にはやはり、建物の上のシンボルと同じシンボルが付いた木の首飾りをかけている、そしてあの・・・
「あの黒板の前の人・・・」
「シスターよ」
今度は教会側にいた四葉の声、
「ここは教会、今の曜日と時間だと、大人達は中で聖書を読み、讃美歌を歌っているわ、そして、子供達は外で読み書き計算なんかを習っている、一通りできる様になったら、中で大人達と一緒に聖書を読み、讃美歌を歌う、でいいわよね?ウィルピー?」
「そうです、子供たちがああやって勉強を教わるのは、そもそも、聖書を読むためなんです」
と、シスターの視線がチラリとこちらを向いた、そして、驚いたように目を開くと、チョークを黒板に置きこちらの方に近づいてきた
そして、ある程度近づいたところで確信する・・・
やはり、あのシスター・・・
「おっぱいだぁあああ!!」
ごっ!
跳躍をかましたところ何かに突き飛ばされ、しりもちをついた!
いつの間にか俺とシスターの間にいたのは・・・首からあの木のシンボルを下げた蟻型のダブモンだ、それが木のかごで俺を突き飛ばしたのだ、
「いってぇな、何すんだよ!」
「自業自得だろ・・・」
「正当防衛だね、でも良星が好きそう・・・」
「好きか嫌いかとかどうでもいいわよ、女性に跳び付くのもよくないし、シスターの相手方から復讐にでも来られたらどうすんのよ」
よく見るとシスターの左手の薬指に指輪があった、なるほど、既婚者か・・・
と蟻型のダブモンが背にかご背負い、さっさとどこかに去って行く・・・
その間にも俺は立ち上がり、尻に付いた土をはたく
「というか、こういうのが好みなのね・・・」
四葉がジーットした目で呆れたジト目で俺を凝視する
「なんだよ、どんなのが好みだろうと俺の勝手だろ!」
「それになんで好きなのかも丸わかり、あほらしい・・・」
「人のどういうとこを好きになろうと俺の勝手「さいって」
四葉の吐き捨てるような言葉
「あの・・・失礼ですけどあなた達は?」
と、シスターがきょとんと目を見開いた表情で俺達に問いかけてきた、
それに四葉が素早く振り返り、答える
「勇者よ」
は・・・?
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