ダブモン!ダブルカードモンスター!!08 妖魔版
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「わかったぜ、答えは王水だ!」
「わかった、答えは王水だ!」
「わかったよ、答えは王水!」
「王水?」
カンテーラがいきなり言ってくる
「濃塩酸と濃硝酸を混ぜた液体の事、ってネットで見たぜ!」
「金属を溶かす時に使うって」
「人体にとっても有害だから、飲んだら喉がどうこうじゃなくなっちゃうよ」
「ははは、全員正解だ、にしても、驚いたな、まさか三人とも答えを知っているとは、これも時代の流れというやつか・・・」
実際にはゲームでそういう単語が出て来たんだけどな、
俺達全員やってたやつで、それで気になって検索したことがあるってだけで・・・
「まぁ、他にも答えはあるかもしれないが、今回はそれでいい、君たちをここから通してあげよう」
そう言った途端、イーグリンが消え、その部分の水が、奥の水ごと左右に分かれて行く、
「すっげぇ・・・」
「なんて言ったっけこれ、モーゼの奇跡?」
「海が割れたってやつだね、規模は段違いだけど・・・」
そして、一番奥まで水が割れた後、奥の扉が向こうに開く
「さ、行きたまえ、早くしないと、私の力が尽きて元に戻り、エジプト人の様におぼれ死んでしまうかもしれないぞ?」
「いや、まだ外だし、大丈夫だろ」
「だったら、君たちを階下まで押し流してしまうかもしれないな?」げっ!?
「うっへぇ~脅迫かよ・・・」
あの火の海にまた落とされるのは勘弁だぜ・・・
「そうではないよ、単なる警告だ、なんせ、この技、私にとってもかなりきついものだからね、君たちが行ってくれれば扉を閉めて施錠し、また楽に待機できるし・・・」
うぅ・・・しょうがねぇなぁ・・・
「みんな、ちゃっちゃと走り抜けるぞ!!」
「お~!」
「お~!」
「お~!」
俺の号令と共に四人は左右の水の壁が立つ間を駆け抜け、そのまま階段の踊り場まで走り
ドドド・・・
階下で盛大な水音がする中で立ち止まる、ちゃんと扉閉めたんだろうな・・・
そんな考えの中でも俺達は踊り場で各々散ってメモを取り、書きたいことを書き込んでいく・・・
「なぁ、お前ら、一生懸命書いてるけど、なんでそんなもん書いてるんだ?」
「ネットで上げるため」
「だな」
「そうそう」
カンテーラの唐突な質問にメモを見ながら答える俺達
「ネットって、外じゃスマホってやつで写真とか自由にとれるって聞いたが?」
「俺らそんなもん持ってねぇよ」
「俺ん家金ねぇもん、」
「親から携帯電話すら持つなって言われてるし、持ってる者といえば防犯ブザーぐらいだし」
「親父達は持ってるけど、俺にはお下がりのパソコンがあるぐらいだ」
「母さんは持ってるんだけど、その母さんにしろ、連絡用に持ってるだけだ」
「僕はとにかく高校生までは待てって言われてる」
「ま、ガキどもには持たせらんないか・・・だが、じゃ、ネットに上げるとはどういうことだ?」
「このメモに書いたことで色々作ってそれをネットに上げるんだよ」
「絵を書いてさ、それをネットに上げて売るんだよ、割といい金になるんだ・・・」
「これをネタに動画作るんだよ、北南西方動画を・・・」
「ああ!そういえば、それで思い出したけど、俺の提供した素材でリアル頭身絵の紙芝居動画作ってたろ!」
「そうだぜ、あれ周りに勧めめらんねぇんだからな!!」
「いいじゃん別にどんなのでも」
「よくねぇよ、それならゆったりとかMMDDアクション動画とか、ギャグ動画とか・・・正体伏せてクラスメイトに勧めるのにも無理があるんだからな!!」
「そうだぜ、お色気系は勘弁だ!」
「そんな無茶苦茶な・・・」
「おい・・・」
「なんだよカンテーラ?」
「さっきから言ってる意味が解らん・・・」
「え・・・?わかんない?」
「わからん・・・」
・・・
「ネットとか、動画見たりとか、北南西方とかやったことねぇ?」
「そもそもここに電話線とか電波とか通ってると思ってるのか?後、北南西方ってなんだ?」
・・・
・・・凍った空気があたりに流れる・・・
・・・
「・・・仕方無いんで、軽く説明しとこうか・・・」
兎白の言い放った言葉が、この状況を打破する、
「北南西方っていうのは色々なキャラクターが出てくるゲームだよ、二次創作がかなり広い範囲で認められてて、そのキャラクターを使った動画を始めとした創作物が人気なんだよ、紙芝居動画っていうのは直の紙芝居ではなく、絵の下の方に台詞が流れて、その絵に描かれたキャラクターや欄外のキャラクターが喋ってる風な動画、って意味合いだ、ゆったりっていうのは、特徴的な音声の音声ソフトだよ、まんじゅう、って言ったってわかんねぇか、まんじゅうに顔が描かれて頭に髪やその上にリボンや帽子いろいろ付けたような一等身絵看板キャラクター群がいてだな、それを使った動画もあるんだ、MMDDっていうのはコンピューター上で立体人形を動かすソフトだよ、フリーでかっこいいかわいいきれいな素体がいっぱいあるし、自由に動かしたりエフェクト掛けれたりするから、色々な動画が作られて投稿されてんだ、どれもかなり人気があってメジャーなんだ」
「軽いと言いつつずいぶんと長いな・・・」
「そんなに訊きたいなら鼓動に解説を頼むといい、一晩だろうが二晩だろうが語ってくれるぜ」
「わかったから、さっさと進もうか」
「おい、絶対わかってねぇだろ」
カンテーラの台詞に思わず突っ込む俺
かくいう俺もここいらへん著作権以外はまったくわからん人間の一人なのだが・・・
そんな思いもよそに、カンテーラは踊り場をUターンした先にある階段を飛んで上って行く、
俺の方もメモを一通り書いたが二人の方は・・・
チラリと目線を送ると二人ともメモを仕舞っている所だった、書き切れたかどうかはわからないが、とりあえず、後を追うことを選択したのだろう・・・
でもこの調子だとメモの残りの量大丈夫か、って思ったが、この間三人揃って替えたばっかりだから紙量はバッチリだったな・・・
俺もちゃっちゃとしまい込み、カンテーラの後を追う、
そうして辿り着いた今までと同じ重厚な次の扉、火、水と来て次は何だ・・・?
「開けるぞ」
カンテーラの言葉と共に扉が開け放たれ、そこにいきなり巨大な針が飛び出して来た!
「のわっ!」
「うわぁっ!」
「ぎゃっ!」
思わず左右に飛ぶ俺達!な・・・一体何だ・・・?
その薄茶色の針は、奥でつっかえたのか少し丸みのある根元から先は出てこない、
そのまま緑色の液体を滴らせながら上下に動いた後、引き抜かれ
今度は丸い複眼のような黒い巨大な球体が扉の奥に出てきて何かを探すように動き出す、
思わず左右の扉の影に分かれ隠れて様子を見守り数刻・・・
そろそろいいかと考え、覗き込んでみると、ようやく部屋の全貌が見て取れた、
部屋の特徴は二つ、一つは床が無いこと、
そう、まったく床が無いのだ、壁は変わりないが、あるのは奥の方にぽっかりと空いた穴が一つあるのみ、
もう一つ、それは、巨大な羽付き蠍がその部屋を悠々と飛んで見回っている、という事である、
「あれはダスティングだ・・・」
へ・・・?ダスティング・・・?
全体を薄茶色い甲殻が覆う甲虫、十本の足の前には鋏付きの両前足が存在し、その間にはいくつもの球体の眼が、後ろには先に針持つ大きな尾がある、
が、何と言っても特徴はあの羽だろう、根元部分前を甲殻に守られた蜂のような少し透明の薄長楕円の二対の羽だが、それが絶え間なく動いてあの巨体を浮かせているのだ、普通蠍にあんな羽は無い・・・
「人の話を聞かない、極めて危険な奴だ」
「聞かないって・・・?」
「闘争本能旺盛で、戦う正当性が出来ればその瞬間に狂戦士と化す、今はこの部屋を守るためにいるからな、その為にあんな状態になっているのだろう・・・」
うへぇ・・・、ん?ちょっと待て?
「その台詞聞くと」
どうやら兎白も気付いたようだ・・・
「まるで誰かがあいつにこの部屋を守る様に依頼したみたいに聞こえるんだが・・・?」
「そうそう、そんな感じだよね~」
「俺もそう思ったぜ」
もし、そんな依頼した奴がいたなら、誰がしたのか?なんのためにしたのかだが・・・?
だが、カンテーラは軽く両の手の平側の布を両肩外側に上げ肩をすくめ
「ま、どう思おうとかまわん、今はお前達は先に進むしかないんだろ?」
う・・・そう言われると・・・
思わず全員で部屋の中を覗き見る、ダスティングは中に上への階段が見える向こうの方の穴の前を時計回りに通り過ぎて行ったところ、しかし、こう見てると次は見つかったら鋏でも飛んできそうである、
だが、正攻法で進むとしても、足場も何もないこの部屋をどうやって・・・
いや・・・
「方法が一つだけ、ある」
思わず俺はぽつりとつぶやいていた・・・
名・風塵の遊撃手 ダスティング ダブモンNo.93
概・M モンスター コスト3 パワー1800 虫・風属性
発・戦闘前・自任意・時限無し・条文の頭に指定:主対象:
条・一・次の戦闘に参加するこのモンスター
二・相手のモンスターゾーンの
パワー2200以下のモンスター全て
効・二を全て相手のトラッシュに送る
文・巨大な蠍のようなダブモン、背に大きく生えた羽で空を飛ぶ、戦闘心旺盛で
極めて危険な存在だが、当の蠍は腹が減っている時と外敵が来た時以外は
他者を襲わない、しかし、戦闘依頼があった時と仲間を守る時は別である
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