バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

暗黒騎士フラウリア(17)/13

暗黒騎士フラウリア(17) 13
 
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第13話 幽霊教授
 
 「いました!白い熊です!初めて見ました、あれが白熊なんですね!」
 緑の森の中に場違いな白い熊がいる・・・
 「馬鹿野郎!魔石に適応したせいで身体に変化をきたしてんだよ!!狼の時も見ただろうが!!」
 団長の指摘に思わずはやる気持ちが収まる、
 本物の白熊かと思ったのに・・・
 でも、団長の指摘が正しいとするとあいつの魔石の属性は・・・
 すると、白い熊がこっちを向いて立ちあがり、大きく両腕を下から上に振り、地を走るように連続で逆氷柱を生み出しこっちに向かわせてくる!?
 思わず左右に分かれ避ける私達
 「クーベル!ジャンド!左から向かえ!俺とフラウリアは右から向かう!できれば挟み撃ちにするぞ!」
 了解!
 目じり上げて緊張した面持ちの団長の指示に一斉の返事と同時に左右に分かれたとおりに外側を回るように私達は無理やり森の茂みを走破し白い熊に向かう!
 鎧を着た人間は鉄の塊と同じですね、茂みなど何の障害にもならない!!
 ・・・と白い熊はこちらを向き先ほどと同じく氷の力を振るってきた・・・
 やはり、寒いところにいる白熊のように体が変化したのだろう、体の氷属性に適応するために!!
 一気に逆さ氷柱を避けながら右より近づき、上より大振りで斧を振るう!
 ガッ!
 これを熊は氷結された右腕で防ぐ!
 「こっちはどうだ!」
 私の正面よりジャンドさんが熊の後ろから一気に横殴りに斧を振るうも右足を凍らせて防ぐ熊、
 「砕くっ!」
 しかし、ジャンドさんの斧の破壊力は私よりも大きい!凍った部分ごと右足を砕いた!
 「グォオオオオ!!」
 が、熊は体を回転させ両腕を振り回し、私とジャンドさんに攻撃を加えてこようとする、
 咄嗟に私とジャンドさんは後ろに下がり、熊の額に斧が刺さり熊の動きが止まる!ジャンドさんの後ろにいたクーベルさんの投げた斧だ!!
 「団長!今です!!」
 「おうよ!」
 団長の大きな横ぶりの槍斧で、熊は真っ二つになったのだった・・・
 ・・・そうして、私達はスタリアさんの研究所まで熊を革袋に分割して入れて運んでいく・・・
 「そういえば、ここ最近、動物の魔石誤飲事件が多いなぁ・・・」
 街に入るすぐ前、一番大きな袋を肩にかけ先頭を行くジャンドさんのつぶやき
 「私の記憶では今月で十四件・・・これって多いんですか?」
 「魔石の鉱脈のあるなしがあるから地域によって変わるんだが・・・少なくともこの辺りじゃ多いな、以前は月に一件あるか無いかだった・・・」
 「へぇ・・・」
 私の言葉に教えるような口調で返してくれるジャンドさん
 「今回の件で近くの村に常駐していた兵士三人が大けがをした、しばらくは動けないそうだ」
 「そうですか・・・」
 全身甲冑に身を包んだ見張りの槍兵が敬礼する中で門をくぐり街を歩く中でのジャンドさんのすぐ右後ろの団長の言葉になぜか私の頭が回る・・・
 はて・・・この状況、前にもあったような・・・
 「おお、すまんが見せてくれ」
 スタリアさんの研究所の前にいた緑のローブ纏った白髭のおじいさんが、いきなり私達の熊だったものを入れた袋に駆け寄る!?
 「おい爺さん!これは人に見せられるもんじゃ」
 団長の至極もっともなきつい言葉
 「いや、いいんだ、見せてくれ、ついでに魔石もな」
 そこで研究所の扉を開けて紫の入った黒髪白衣のスタリアさんが出て来て許可を出す
 おもわずスタリアさんを見る私、その表情はいたって冷静でいつも通りだ
 「スタリアさん?どういうつもりです?」
 スタリアさんは私の方を向きやはり表情も変えず
 「この人は私の恩師だ」
 おん・・・し・・・?
 「え?もしかして、うちの大学の?」
 「魔石学科の教授だよ、いや、」スタリアさんが少し目を逸らす「研究に精を出し過ぎ授業や教育をおろそかにし続けた結果、名誉教授という名の追放を受けた元教授、かな?」
 そして私に視線を戻した
 私にはうわさでしか聞いたことが無いが心当たりはあった
 「あ、あの幽霊教授・・・名前だけは聞いたことありますよ、ステーン教授ですよね?」
 「そうだ」
 表情には出さないまでも声には少しあきれが混ざっていた・・・
 ああ・・・
 等と話している間にも、教授は熊の袋の中身を見たり、団長から魔石を受け取って片目をつぶって興味深そうに見たりしてる・・・
 「ふむ・・・偽装されているが綺麗に精錬された魔石・・・動物の肉も魔石の魔力がきれいになじんでおる・・・」
 しわがれた声に私は話の無いように思わず相槌を返す
 「それって・・・?」
 「この魔石誤飲事件は魔族が引き起こしておるものじゃ」
 なっ!?
 「どういうことですか!?」
 と、私の声に教授が初めて私の方を見る
 ひげを伸ばし、やせ細り、その姿はおおよそ現世の人間とは思えない、
 が、その目がいきなり興味を惹かれたように見開かれ
 「おお!おぬしが死神教授の娘か?噂はかねがね聞いておるぞ」
 ええ・・・
 「いえ、私の父は死神将軍と呼ばれているんですが・・・」
 思い出すように顎を撫でながら目線を逸らす元教授
 「はて?そうだったかの?まぁええわい、」そして私に視線が戻った「ともかく、おぬしなら知っておると思うのじゃが、以前魔族が大規模侵攻するまえ、同じようなことが無かったか?」
 ああ・・・
 「確かに、山の方で凶暴化した動物が多くなってきたって話を聞きました!」
 「そうなのか?」
 状況を見守っていた団長の言葉にそちらを見て答える
 「ええ、その中で魔族の進行があったって聞いて、私と弟は街へ避難、父は山に残ったのですが・・・」
 「となると・・・」
 言いながら団長が思考を回し始め
 「おお!そうじゃ、お嬢さん、耳寄りな話をしてやろう・・・」
 「はい?」
 なんでしょう?教授の方を見るも表情はしわがれたもののまま、でも、この人、私の知らないこといっぱい知ってるんですよね・・・
 「今わしは魔石の研究を離れてとある仮説の証明に動いておる、それはな?」
 「それは?」
 「この国のあるこの地方の人々は特定の行動をし続けることで魔力が上がっていくのではないかという」
 え・・・?
 どういうこと・・・?
 「それは・・・どういう意味ですか・・・?」
 「例えば、とある人は水で手を洗えば魔力が上がり、とある人は焚き火に当たれば魔力が上がるというものじゃよ」
 「ええと・・・」
 思わず目が泳いでしまう、理解が追い付かない・・・
 「ただ、その行動が何なのかはわからん上に人によって違うし、上がる魔力の量もわからんくらい微量なのじゃ・・・」
 「そ・・・そうなんですか・・・」
 「で、耳寄りな話というのはじゃな・・・」
 なんでしょうか?
 思わずまっすぐ見る元教授にこちらもまっすぐ見返してしまう
 「話というのは・・・?」
 「おぬしの父、死神教授はじゃな」
 「死神将軍です」
 「おお、すまんすまん、死神将軍はじゃな、わしの見たてだと・・・魔族や魔物を倒すごとにその怨念を吸収、魔力が上がるのではないかという事じゃ・・・」
 
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