暗黒騎士フラウリア(17) 17
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第17話 侵攻
隊長の指示に街を囲む塀に備え付けられた階段を上り塀の上に出ると、遠くより魔族たちが押し寄せてきているのが見えた、
オークやゴブリンやコボルトや・・・
その中で、中央前線に出ていた下半身が竜巻で、頭に両角を持つ魔族が街に向かい
「この爆破は我々魔族が起こしたものだ!次回にはさらなる大爆発を起こす!!嫌なら降伏することだ!!」
あの爆発音の元凶、魔族たちが起こしたんですか!?
私達は塀の上の私達の中央に立つ団長に向かい
「どうします団長!?」
「団長!指示を!!」
「団長!!」
団長は魔物達を見据え悔しそうに歯噛みする表情から口を開き
「俺達だけでどうにかできる話じゃない、攻めてくるまでここで待機、俺は領主に状況を報告、今後の方針を議論、確認してくる」
どうすることもできないのか・・・?
隊長が行ってしばらく・・・
「あいつらが皆をっ!!」
左の方から聞こえた声を見ると、今にも魔法をぶっぱなしそうなほど歯を食いしばり、魔物たちに憎しみの目を向けるシべリリアちゃんがいた!?
「ど・・・どうしたのシべリリアちゃん!?」
「崩れたのよ・・・」
え・・・?
「あの爆発で!豊穣騎士団の宿舎が崩れて!!中にいた仲間たちが潰されて!!私だけ・・・突き飛ばされて救われて・・・」
声から力を失っていくシべリリアちゃん・・・
私はシべリリアちゃんに近づき、後ろから両手をその両肩に当て
「落ち着いて、怒りにとらわれていては、勝てるものも勝てないわ、今は冷静に、状況を見て、より確実に勝てるように・・・」
「より確実に勝つ・・・」
と、シベリリアちゃんが敵軍を見て右拳を握る・・・
が、何かに気が付いたように目を見開き
「方向が違う・・・」
「え・・・?」
「爆発が起きる直前、感じた魔力の波、それは・・・」
「じゃあ、どこから来たの?」
「あっち」
シベリリアちゃんが差したのは軍の方より右に傾いた先、
魔族たちが来た方向とも違うし・・・
もしかして・・・あっちの方に魔石を爆発させた敵が!?
「シベリリアちゃ~ん!!」
あれ?白衣の先輩の声・・・?
塀の一部である梯子内蔵の上下移動用の塔の木の扉から先輩が出て来て
「確かこっちに・・・」
何かを探すように左右を見回す中でこちらを見て
「シベリリアちゃん!!」
私達を見つけ急いで向かって来て、疲れたのか両手を両膝に当て前かがみで顔を下に向ける!
「全く、私達が見つけたとたん走り出すんだもの・・・はぁ・・・はぁ・・・」
私と一緒に先輩を見ていたシベリリアちゃんが先輩を見据え
「感じた魔力の波動を追って来たの、でも、違ったわ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・違った?」
先輩がシベリリアちゃんに向かって顔を上げる、その右頬上には汗が光っている
「多分、魔力の波動はもっと向こうに・・・」
「お前らどうした?」
団長が戻ってくる・・・
皆の目線が団長に向かう中で私は団長に向かって顔を開いた
「団長、実は、街を爆破したのやつはここにはいないらしいんです・・・」
「なんだと?」
疑問の声を上げる中で私はシベリリアちゃんの方を見て、
「シベリリアちゃん、お願い」
シベリリアちゃんが団長を見上げたまま口を開く
「私はね、爆発する前に特殊な魔力の波動を感じたの」
私の目線につられシベリリアちゃんを見ていた団長が
「それで?」
返事をして、シベリリアちゃんが話を続ける
「多分その波動で魔石を爆発させたんだと思う、でも、それはここよりかなり遠くに・・・」
「つまり、そっちにいる魔族を倒せば・・・」
「魔石を爆破されない・・・かも・・・」
「私も同意見です」
団長に向かい、シベリリアちゃんの意見に同意する
「でも、そうじゃないかもしれないわ、仮に、別の場所にも爆発の鍵となる魔力を持つ者がいたとしたら・・・」
先輩の言葉に、私達は思わず俯く・・・
対し、団長は私達三人を見るように見回した後目線を三人全員を見るように修正し
「なら、同時に三つやるしかない、幸い人員はいる」
え、でも・・・
「領主の戦法は?」
私の言葉に団長が私を見る
「修正する必要があるならもう一度話し合うだけだ、だが、ある程度はここで決めてしまった方がいいな、話がスムーズにいく、」そしてシベリリアちゃんを見据え「豊穣騎士団の方はどうだ?」
「動けるのは私ぐら・・・痛っ!!」
シベリリアちゃんが突如足を抑える
「ちょっと!見せて!!」
先輩がシベリリアちゃんのズボン裾を引いてめくり足を見ると、ふくらはぎの部分が青くはれ上がっていた!?
「腫れてるじゃない!!」
「でも・・・」
シベリリアちゃんの目に涙をため口を震わせた泣きそうな表情の悲しそうなかすれ声・・・
「無理しないで!!」
「豊穣騎士団は動けないか・・・なら、俺達が行くか・・・」
降ってくるような、少しあきれたような団長の声に思わず見上げ返す
「団長?」
見上げた私の目に映ったのは口を真一文字に結んだ決意の表情
「領主に許可をもらって来る、魔族の居る方向は向こうで間違いないな?」
「多分・・・」
魔族軍の右の方を右人差し指で指した団長にシベリリアちゃんが応え、
「いいの?前線に出ないことで批判を受けるかもしれないわよ?」
「元より、評判は良くない、この位、どうってことないさ」
見上げ忠告する先輩にそう言って返し、団長は、領主の元に走って行った・・・
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