御前教会の真実 ダブモン!!2話/16
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宿と思わしき建物はすぐに見つかった、何の事はない、入口の酒場のすぐ右隣りの建物だった
ドアの右上にベッドの絵の描かれた看板がたれ下がっている、シーツの掛けられ、下四つの足が生えていて、頭の方に四角のクッションとその先にたてかけがあるベット、その絵が描かれた逆U字形のプレートだ、それがあるのと、二階建てである以外は、他の民家と全く変わらない、
四葉がドアを開け放ち、
「すいませーん、宿屋ってここであってますか~」
「あってますよ~」
開け放ちざまに言ったセリフに誰かが答える、
四葉に続き中に入るとその答えはすぐに分かった、簡単な話だ、中に店主と思わしきおっさんがいたのである、
部屋の奥、カウンター代わりに三方に、おっさん側に引き出しが付いているであろう上に天板、右に多段引出し付きの下と中開きの木の机を並べ、その奥におっさんはいた
頭は禿げ上がり体型は少し太っていて上半身に白黄の貫頭衣をまとっている、下は薄青の簡易なズボンに茶の木のサンダル、
この上なくごくごく普通のおっさんである
と、そこに四葉が近づいて行き
「部屋空いてますか?」
「空いてますよ、何名様で?」
「四人、いや、六名か・・・?」
周りを見渡すと天井は高いものの木の床に木の天井、白い漆喰の壁という、少し古臭いものの普通の家という感じだ、
もっとも、待つための椅子すらおいていないのはどうかと思うが・・・
「でしたら、部屋が二つになりますが・・・」
「え~、一つにしてよ~、二名はダブモンだしっ」
「お客様がそれでいいなら・・・」
奥左手の方には上に行く階段が見えた、右手には奥に向かう通路、
「あ、でも、男の子と泊まるのは嫌だわ、ごめんごめん、二部屋、どのぐらい?」
「このくらい・・・」
なぜかおっさんが机を指差しそこを四葉が覗き込んでいる、と思ったらその机の上に木の板が乗っていた、恐らく、そこに料金表でも書かれてるんじゃないだろうか?
「うう・・・高いな・・・食料無いから食事もとりたいんだけど・・・」
「お泊りならサービスしますよ、四人までなら・・・」
「追加で二人分どのぐらい?」
「このぐらいで・・・」
「うわ・・・それなら・・・」
「いくらダブモンと言えど食事は必要だぞ」
「そうですそうです」
四葉の何かの気配を察したか、カンテーラとウィルピーが抗議する
「ちなみに、俺は人間と同じ食料でOKだ」
「私もですっ、知ってると思いますけど・・・」
「しょ~がないわね、もうっ、その換わり、最高級品よ、出来る限りいいの出しなさい、追加で払えないけど」
「ははは、うちの妻が腕によりをかけて作りますよ、部屋は?全室空いてますが、あ、全部ベットは四つありますので」
「暗いよりも明るいほうがいいわ、大通り沿いの二階よ、あと、酒場からは極力離して」
「だったら201号室ですね」
おっさんが上側の引き出しを引き、中から鍵を出してきて、机の上に置く
「あ、料金は前金で・・・」
「はいはい」
四葉がスカートの上面に右手をはわせると、いつの間にか銅で出来たような少し大きなお金を二枚ほど握っていた、それを机の上に差出し、
・・・あのスカート、一体どうなってんだろ・・・?
「はい、これでいい?」
「ええ、ええ、これで」
「じゃ、私達は部屋で待ってるから、料理が出来たら読んで頂戴、あ、朝ご飯は・・・」
「もちろん、用意させていただきますよ、あ、部屋は上がったらすぐですので」
「はいどーも」
四葉がやる気のない返事と共に階段に向い、上がって行く、と、こちらに顔と上半身だけひねり返り、
「ほら、あんたたちも来なさい」
言われ急いで俺達も向かい、四人と二匹で上へと向かう、
「いいのかよ、アイドル様が異性と同じ部屋に泊まって?」
「なんかあったらあんたら三人、いや、四人全員部屋の外で寝てもらうからね」
「まぁ、自分もいるですから、ちゃんとお守りしますよ、実際は二部屋分払えるのが怪しかっ」
四葉の視線が少し、チラリとウィルピーに向く
「ウィルピー、それ以上言ったらぶっ飛ばすわよ」
「たはは、失言失言」
なんだ、文無しだったのか、いや、文無しになったと言うべきか・・・
と、階段を上がったところで四葉がぐるりと見回し、右の方で視線が止まる
「あった」
駆け寄ったのは、入り口フロア奥すぐの右手の扉だ、確かに、201と扉に付いた楕円の小さい標板に彫って数字を黒く塗ってある
四葉が滑らか横長三角横ノブの下の鍵穴に鍵を差し込み回して、がちゃりと音を立てさせたのち、鍵を抜いてノブを押し下げ、扉を押し開ける
その部屋は狭めで、簡素なベットが部屋の四隅に向こうを向いて並び、
奥の窓の前には、背もたれと右積み引き出し付きなれどやはり簡素な木の机と椅子があったのだった・・・
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