バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒/9

Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒 9
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 「すまないなじいさん、またここに頼っちまって・・・」
 「いやいや、いいよ、久しぶりの客人と会話できて楽しいわい」
 またまた魔鍛冶台のある部屋、外は明るさからしてすっかり夜、少し休むつもりが魔力が回復しきれずこのざまだ、
 仕方なしに今日はもう泊まると爺さんに頼み泊まらせてもらっている、
 リッキーなど、隅っこですでに寝いっている・・・
 背に壁を預けたまま
 「ほら、晩飯じゃ」
 と、爺さんが鉄の器に肉を入れたスープを持ってきた、
 澄んだ色のスープに先が掬う形状をしたスプーンが突き刺さっている・・・
 「干し肉にしようとしていたものの一部をこちらに転用したのじゃよ」
 「すまないな・・・」
 スプーンですくって味見してみるとこれがなかなかうまい、竜の肉エキスが利いている、
 疑って悪いが、毒なども入っていないようだ、そのまま食が進む、
 「よいしょ・・・のう、一つ聞いていいか?」
 右手の壁の前に座った爺さんがそう問いかけてきた
 「なぜおまえさんほどの男が世界を壊すほどの武器など欲しがる?」
 お前さんほどの男・・・ね・・・
 「言ったろ?男のロマンだって」
 「それだけなのかのう?」
 「・・・一度、見てみたいんだ、それだけの武器が、一体どんなものかって・・・」
 「ん?」
 「そして、一度振るってみたい、それだけだ、破壊はいるかもしれないが、称賛も恐怖も功績も罪罰もいらない、ただただ知ってみたい、それだけだ・・・」
 爺さんの目が真正に俺の方に向く
 「ふむぅ・・・不思議な話じゃ・・・おぬしは、いったいどこの生まれなのじゃ?いや、言いたくないなら言わなくてもいいが・・・」
 ・・・体が疲れているせいか、不意に口から言葉がついて出る・・・
 「・・・昔・・・一人の少年がいた・・・」
 「少年?」
 「少年の家には兄弟がたくさんいたが、全員奉公に出ていた、その中で少年も奉公に出ることが決まり、その先が・・・鍛冶屋だった」
 「ほほう・・・」
 「少年は鍛冶屋で修行するも、出来るものは質の悪いものばかり、同期たちが成長していく中で、少年はただ一人取り残された・・・」
 「ふむ・・・」
 「そんなおり、鍛冶屋に一人の魔法使いが現れた、曰く、魔法の武器を作って欲しいとのことだった、この位なら他の鍛冶屋でもしてくれるぞと、だが、少年の師匠は魔武具が嫌いだった為かそれを断った、なんでも、魔法の力を使うのは邪道だだとかなんとか・・・」
 「ほう・・・」
 「少年は師匠に黙ってその魔法使いと会い、自分が成長すれば魔法の武器を作ってやると約束した、魔法使いは半信半疑で魔法の知識を教えてくれた・・・」
 「それはそれは・・・」
 「しかし、そこでも魔法の腕は落ちこぼれ、ついでとばかりに召喚術も教えてもらったが、これもダメダメだった、媒介を必要とする上に精霊本体を召喚できず影程度しか召喚できなかった、媒介まで使えば、精霊本体まで召喚できるのが普通なんだがな・・・」
 「なるほど・・・」
 「さらに言うなら、師匠の言いつけで、街の狩猟団に参加し、肉と金を稼いでいたが、他の人の罠にかかったり、戦いでほんの少しも動けなくなった獲物にとどめを刺すのがせいぜいで、全く役には立っていなかった」
 「それは・・・つらいのう・・・」
 「・・・そんな中で少年は、自分の中途半端な才能を組み合わせてはどうかと考えた、そうして、周りの誰にも相談せずに狩猟団の裏に隠れ、向かってきた猪相手にそのを実践した・・・」
 「ほう・・・」
 「向かってきた猪に、狩猟団より支給されたなけなしの短剣を突き刺し、鍛冶屋の師匠のところからくすねた鉄鉱石を叩きつけ、召喚した精霊の影に抑えてもらい、すかさずにと勝手に借りてきた鍛冶槌を叩きつけまくり」
 「おお・・・」
 「・・・できたのは、俺だけの鍛冶槌だった・・・本当は秘密にしておこうと思ったが、血が飛び散って結果、何かやったのがばれちまった・・・」
 「ふむう・・・」
 「結果、鍛冶場の師匠からは激怒されて破門、その街を去ることになったって話だ」
 魔法使いの爺さんには後で埋め合わせはしたが・・・な・・・
 「そいつはのう・・・」
 「おっと、勘違いしないでくれるか?あくまで俺の知り合いの話だ」
 「だが、それならばなぜ、」
 言いながら視線が微小に部屋中央の黒い台に動いて
 「この魔鍛冶台を欲しがる?」
 元に戻る
 「根無し草なのじゃろう?」
 「俺の知り合いの話だと・・・まぁいい」
 ったく・・・
 「最初は、実家か師匠のところに送って拠点にでもしようかと思ってたが、よくよく考えりゃんなもん送っても迷惑なだけだ、だから、送りたくなる場所が見つかるまで保留にしといてくれ」
 「ほっほっほっ、あきらめの悪い、これは墓標じゃというとろうが、ま、おぬしならいつ来てもこれを使うて良いぞ」
 「すまねぇな、爺さん」
 「いやいや・・・」
 「ふぁああ~」
 ん?リッキーが起きてきやがった・・・?
 リッキーが大口を上げ上半身を上げると俺の方を見て大きく目を見開かせる!
 「ああ!何食べてんだよ!!俺も食べる!!」
 「こいつは・・・」
 呆れて思わず頭を右手で押さえてしまった
 「ほっほっほっ、追加で作るでな、ちょっと待っておれ」
 こうして、翌朝・・・
 「んじゃ、城に出て見ますか」
 俺はそう言って立ち上がる
 「リッキー心当たりは?」
 リッキーは両羽根羽ばたかせ俺の方に近づき少し力ない顔で
 「いやぁ、俺が知ってる場所全部見ちゃったよ・・・」
 しゃーねーな・・・
 「じゃ、手あたり次第に行ってみますか・・・」
 そうして、右手の方に突っ立っている爺さんの方を向き、
 「爺さん、またな」
 爺さんは軽く1度首を縦に振ってその後は正面から俺達を見つつ
 「うむ、気を付けて言ってくるのじゃぞ」
 「ああ、じゃあな」
 「またね!」
 右手を挙げて軽く振りながら、俺とリッキーは部屋を出ていった・・・
 
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