Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒 5
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たどり着いたのは戦いにおあつらえ向きの平たく広い場所、
そこではドレイクがとぐろを巻き、平然とこちらを目を細め睨みつけてくる、
どうやら、気付かれていたらしい、当然か・・・
「どうすんだよ!?」
「こんな奴、へでもねぇだろ・・・」
俺の言葉を理解したのか、いきなり口を開け、火を吐いてくるドレイク、火のトカゲ三体よりも勢いが強い!
だが、俺は盾でそれを防ぎ、火が途切れた瞬間に一気に近づき、剣を振るう、
「爬虫類っていうのはどいつもこいつも行動パターン一緒なのかぁ!?」
が、横ぶりに剣を放ったところに、ドレイクはいなかった・・・
「なにっ!?」
一瞬遅れて上より吹き付ける熱風、盾で防ぎながらも来た方を見れば、ドレイクは両翼羽ばたかせ悠然と空を飛んでいたのだった・・・
なるほど、俺が剣を振る前に空に逃げてたってわけね・・・
そこで上空から火炎弾が吐かれ降り注ぐ!
が、俺は盾で簡単にそれを防ぎ
「今はこっちはこういう手があるんだよ!」
腰元で持ち替えた鉄パイプを振り上げ魔の銃弾を放つ、
しかし、ドレイクはほんの少し横にそれただけでそれを避け、
「っち、当たれよおら!!」
魔の弾丸を三連射する!
弾丸の源は俺の魔力だが、ま、これくらいはどうとでもなる、
しかし、向こうはそれを大きく避け飛び、上より火炎弾を振らせてくる、
それを盾で防ぐ俺、続けて旋回しつつ火炎弾を順次五発ほど吐き撃ち込んでくる!
律儀に盾で防ぐが・・・しかし、いくつも当たった衝撃にはさすがに足腰に来る・・・
これは・・・向こうが先に力尽きるか俺が先に力尽きるか・・・
互いに持久戦を覚悟してか弾の撃ち合いが散発的になっていく・・・
向こうは空を飛んでいるが、この熱気は俺の方がつらい、さて、どっちが先に力尽きるか・・・
バキッ!
等と考えていると、鉄パイプに割れ目が!?
っつ、一番最初に根を上げたのはこいつかよっ!?
しょうがねぇな・・・だがどうする、この状況・・・
・・・一か八か・・・
俺は少し位置をずらし、火炎弾を足元に着弾させ、その爆発で吹き飛んだように見せる!
「ぐわっ!」
「ヴァルカ!?」
そのまま倒れ込み、リッキーが心配の声を掛けてくるが無視、
追加の火炎弾を倒れ込んだ上に配置した盾で何とか防ぎ・・・
羽ばたきの音が徐々に近づいてきた・・・
「あああ・・・」
リッキーが逃げる気配がする、まったく・・・
そして、羽ばたきの音がすぐ近くまで・・・ここだ!!
一気に立ち上がりつつ腹に左手で持ち替え持った銃の銃口とミノタウロスのとこで手に入れた水鉱石を一挙に叩きつける!
「悪いな・・・」
銃もろとも水鉱石に槌を叩きつけると、そこに水で出来た戦乙女が現れた!
腹出し水着に上と下に曲線を中心とした女性用の鎧を身にまとい、それにブーツと小手を合わせ、頭にはヘルムティアラを付け、同時に大きな両刃の両手剣を持つ・・・
「斬り裂けウンディーネ!!」
まるで舞うようにドレイクの鱗を斬り裂いていくウンディーネ、しかし、傷はつけられても決定的な一打は与えられていない!!
水鉱石程度の媒介じゃ、これが限界か・・・
そのうちにウンディーネが水に還り床に落ち蒸発、ドレイクが一気に飛び退る
しかし、俺の手元には今打ち付けたばかりの銃口からまっすぐにのび撃鉄とグリップ底に金の装飾が曲がるのが印象的な青い銃が手に握られていた・・・
当たればかなりのダメージを与えられそうだが・・・さて、俺の腕で当てられるか・・・?
・・・面倒くさがらずに射撃訓練しておけばよかったな・・・
だが、今はこれしかない!!
青き銃、ブルースパイラルを向け、引き金を引く、
すると、水の玉が螺旋のようにねじり回転しながら撃ち出された、
そう、これがスパイラルの由来、どっかの話で聞いた、回転させながら撃てば弾道が安定する、というのを再現したものだ!!
弾速も上がっているが、ドレイクは左に飛び避け・・・
仕方無い、もう一発・・・
そう思った次の瞬間、水弾がかってにドレイクの方に曲がり、ドレイクを直撃!
お・・・ドレイクで作ったことで銃がそれを覚えて弾が追従するようになったのか・・・?
こいつはラッキーだ!
一気に水弾を扇状に五連発!!
ドレイクは真正面に来た弾を右に飛び避けようとするがそこに来た別の玉に被弾、
避けたやつ以外の三つの弾にも次々と貫かれ、最後に避けたはずの弾にも背後から貫かれ、
落下して顔を弱々しく上げ一声するも、すぐに大地に伏せ、動かなくなり息絶えたのだった・・・
「おーっし、どうにかなったな・・・」
竜種の素材は鍛冶師としては興味があるが・・・後で解体して爺さんとこにでも持っていくか・・・
「おーっ凄いっす!!」
リッキー
「どこ行ってたんだ?」
後ろからの声に俺は振り返ることなく言葉を放つ
「いやぁ、もう負けちゃったんじゃないかと思って・・・」
まったく・・・
でも今はーっと、
辺りを見回すと、奥の壁に生えた透火石が見えた、
あれだ!!
透火石、文字通り透明な水晶状の結晶に、中に火が燃えているように見えるものだ、
近づいてみるとそれは薄い赤に染まり、大きなものが二本、小さいものが三本、根元より生えている、
その根元に剣を突き刺し、掘り出し、手元に持って見定める・・・
・・・見れば見るほど綺麗な上質の透火石だ、
この辺りの火山には生えないもので、確か、ここより遠方の火山でしか手に入らなかったはず・・・
・・・やっぱり、空間ねじれてんなー・・・
だが、こんなもんが手に入るってことは、やはり、賢者の石もここに・・・
ん?
何だ?左手の方、ここの入口の方からは岩壁の影になっていて気付かなかったが、奥の方に別の空間があってその中央に、あれは・・・祭壇・・・?
屋根も無く、柱が土台の上の外側四隅に乗っかってるだけの簡易なものだが、
下が二段上がる構造になっていたり、柱にちゃんと神殿の波型幾多角柱な装飾は施されていたり、
何より周りと違って赤くない、クリーム色だ、岩の組成のせいか全体的に赤黒い火山の中にあって、である、ここだけ火山とは別世界のような気がする・・・
思わず近づいていって正面に立ち・・・
と、中央に誰かの映像・・・残留思念か!?
そこにあったのは眼鏡をかけた知的で穏やかで優しそうな顔の青年だ、青い衣に簡素なシャツにズボン、両分けで先の跳ね回った髪型で学者肌に見える・・・
「助けてください・・・王子を・・・ここから・・・解放して・・・」
何だぁ・・・王子ぃ~・・・?
そういうと、その映像はとたんに消えてしまった・・・
「何なんだよこれ?」
「さぁな」
そうリッキーに返しつつ頭を回してしまう
この映像を残すための祭壇か?見回してもそれ以外の機能なんかなさそうだが・・・?
それとも、もうすでに役目を終えたか?とすると、やれることもなさそうだな、仕方ない・・・
「とりあえず、あの爺さんのところと往復して、あのドレイクの素材をもっていこうぜ、ふぅ、大変だ、リッキー」
言いつつ左後ろのリッキーの方に振り返る、しかし、リッキーは祭壇の方に見入っていたらしく、俺の声に驚き目を見開きながら俺の方に視線を向かす
「な・・・何!?」
「素材を運んでる間に次行くとこ決めておけよ?その体躯じゃドレイク持ってく役には立たねぇだろ」
「失礼だな!俺も手伝うって!!」
怒気をはらんだ声と顔を前に突き出した自己主張、だが、役に立つのか?
「しゃーねーな、じゃ、まずは解体作業だな・・・」
「ねぇ!この本に書かれてる火山ってどういうところ?」
赤じゅうたんの敷かれた部屋で、確かに僕は本を広げてこう言ったんだ、
ページ上半分に真っ赤に塗りつぶされたかのような絵、まるでこの世に存在しないかのような・・・
「行きたいって言ったら皆から怒られたんだ・・・」
「ああ、だって危ない場所だからね、子供どころか、大人でも危ない」
一緒に本を読んでいるのは家庭教師の先生だ、眼鏡をかけた優しそうな人・・・
「ええっ!?でも行きたいよ!!」
「ははは・・・君がいい子にしていれば、それぐらいのわがままは許してくれるさ、でも、その代わりにこの国をこれ以上ないぐらいに良くしていけるような人間じゃないとね・・・」
「うん!わかった!僕良い子にしてる!そして、この国をよくして、ほんのちょっと、ここに行って、お土産を持って帰ってくるんだ!!」
「ははは・・・それがいい、この国をよく出来れば、護衛付きだろうけど、みんなが許してくれるさ、だって君は・・・」
王 子 な ん だ か ら ・ ・ ・
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