バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒/7

Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒 7
 
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 出てきた先にあったのは、白い木製の桟橋の上から望む太陽の光にきらめく青い海・・・
 「どうなってるんだこりゃ・・・?」
 こりゃまた趣向が一気に変わったな・・・
 見回してみると右手側は桟橋がすぐに途切れ先には水平線が広がり、後ろ側は扉だが、ご丁寧にも城内に通じてはいるものの、裏側は存在していない、
 そして左手側には遥か続く桟橋の先に島が見えた、
 白い砂浜が周りを囲い、ドーム状に森が盛り上がっている・・・ダジャレではない、
 道があっこにしかつながっていない、
 南国ムード溢れる涼やかなで透明な水色の海は思わず飛び込みたくなるが残念ながらその先に行く場所はやはりあの島しかない、
 「んじゃ、行ってみますか・・・」
 「あ、待ってよ!」
 リッキーの声を背後に聞きつつ桟橋を通り、島へと近づく、
 島に近づくと、海岸沿いや森の中などにたくさんの藁ぶきの屋根の木造の丸太家が点在しており、
 誰かが住んでいる様が分かる、しかし、肝心の住人が見当たらない、
 てっきり魔物でも住んでいるかと思ったが・・・
 手近な一つを覗くと、影のあるその内部には奥に木製の本棚のようなタンスに木の足の短いテーブルが一つ、ここに座って食事とかしてたんだろうが・・・
 それ以外は何もない、朽ちた木くずがそこかしこに散らばるのみ・・・
 本棚も木のテーブルもかなり朽ち始めている、小物などはすべて木屑に変わってしまったのだろう・・・
 残っているのは・・・右手奥の方に立てかけられた先の分かれた鉄の棒だけだ、ところどころさびてやがる・・・
 思わず近づいて手に取る、
 ふむ・・・これは・・・
 「何なんですかそれ?」
 「大方、返しの付いた鉄の銛の残骸だろう、ほれ、先の方が部屋の端に突き刺さってやがる」
 「あ、本当だ・・・」
 「どっかの商人の口車に乗って買ったもんだろう・・・もういい、他に行くぞ」
 鉄の棒を手に持ちつつ島を海岸沿いに時計回りに回りながら、一つ一つ家を探してみる、
 しかし、どれも中は似たような状況・・・
 っち、何かいいものはねぇのか・・・
 砂浜で気晴らしに鉄の棒を振り回し、先の方で魔力の爆発を起こしてみる
 「うおっ!?」
 リッキーが驚き俺の後ろに隠れる
 「いきなり爆発した!?」
 「おいおい、魔力の爆発を見たのは今が初めてか?」
 「へ・・・?」
 リッキーが出てきて俺の方を不思議とした緩い目で見つめる
 「じゃあ、今のはヴァルカが・・・?」
 「まぁな、魔力の一端を飛ばしてそこと杖にバイパスをつないで魔力を込め・・・ってお前にはわからんか・・・」
 「い、いえ、とにかくすごいっす!」
 わからないけどすごい・・・って目が語っている
 「今のは見た目重視で威力とかはあまりねぇよ、剣を振るった方がいいくらいだ、傷一つ付けられん」
 「そ、そうなんですか?」
 「ま、鍛冶をすれば別だが、強い魔法は俺の魔力を大量に使うしな・・・」
 「ヴァルカは魔鍛冶師とか言ってましたけど?」
 「専任魔法使いじゃねぇから、あんまり魔力ないんだ、媒介がねぇと良い魔法なんてのは使えねぇの」
 「でもあのすごい鍛冶とか、精霊召喚したりとか・・・」
 「言ったろ?媒介がねぇといけねぇの、それが俺の槌であり鉱石ってわけだ、あと、ついでにこの杖もな」
 言いつつも鉄の棒を軽く振る
 「へぇ・・・」
 そうして、森の一番奥の方にある家に入ると足元に丸い石と葉っぱを模した緑の焼き物が付いたひもの髪飾りを見つける
 「お、これは地鉱石だな・・・」
 ん?なんか、リッキーが力なくこの髪飾りを見てるな・・・
 「どうした、リッキー?」
 見ていた俺に気付いたのか視線がこちらに向き
 「い・・・いや、何でもないです」
 「そうか・・・?まぁいい、」
 返し、もう一度髪飾りに視線を落とし手に取る
 「こいつはもらっておこう、この分だとどのみち、この髪飾りの持ち主は生きてはいまい、生きていたら、その時に謝ればいい」
 「はぁ・・・」
 気の無い声を聴いたまま、俺たちはとうとう島を一周し、桟橋まで戻ってくる、
 見たところ、島の中央の方も普通の森だなこりゃ・・・
 「一旦、城に戻るか・・・別の道はどこかあるか、リッキー」
 「え、ええっと、それが・・・」
 「お前たち、私の島で何をしている!!」
 
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