バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

魔石物語/1

魔石物語 1
 
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1 シンデレラの涙1
 
 「あ、いらっしゃーい?うちのバイト志望ね?」
 「はい!よろしくお願いします!!」
 あまり治安のよくない町の一角、木の両扉を開け入ると、そこには左部が紫に染まった木のカウンターと奥に様々な魔を放つ様々な材質と形の欠片の置かれた木の棚、
 ところどころにある木の蔓の模造物と天窓から入る東日が温かく、やわらかく明るい印象を与える店内、
 そこで私はカウンターと木の棚の間にいる人物に挨拶していた、
 柔らかな橙の髪に反比例してその目つきはやさぐれているのか悪く、
 白衣と黄色いシャツの大人の女性、
 対し、私は紫の三角帽に紫のマントとローブである、
 と、女性が毅然と私を見据え
 「で、資格は持ってる?うちは魔石取り扱い商の資格か紹介状が無いと雇わないことにしてるんだけど・・・」
 「あ!資格は・・・持ってないです・・・」
 慌てて目をそらしてしまう・・・
 「・・・」
 こっちを呆れ混じれの目で見てくる・・・
 私は慌てて目線を戻しつつ言葉を続ける!
 「でもでも!ここで働いて取る予定ですし、紹介状は・・・あります!!」
 慌てて腰元より大きく紹介状と書かれた手紙を右手で持ち取り出し、近づき渡す!
 「あ~まぁ、持ってなきゃ困るんだけど・・・」
 力の抜けた呆れ目から渡された招待状を両手で広げ見る店主・・・
 「ええっと・・・紹介状の主は・・・ふむ、あの先生か・・・ま、手紙で読んだ通りね、」
 手紙が行ってたのか?それならスムーズに進みそう・・・
 そう考える間にも女性は手紙を軽くたたみつつ再度私を今度は少し軽目に見据え
 「でもいくつか訊くわよ?名前と所属学科は・・・」
 「はい!マジュと言います!中央魔術大学魔石装飾科1回生です!将来の夢は王族にも使ってもらえるような装飾を作る事です!!」
 「あ、夢までは訊いてない」
 「今の時代って王族の付ける装飾って魔法での防御能力が無いと採用されないんですよね!私、デザインの勉強もしてるんですけどやっぱり実用的な物の方が・・・」
 思わず畳み掛ける私!!
 「あ~そりゃデザインを邪魔せずに防御能力あげられるならね、って違うわ!」
 いきなり怒り感じで大声でシャウトする女性!
 「へ・・・?」
 思わず怯む私!
 女性は怒り目のまま正面から私を見る!
 「いきなり余計なことをべらべら喋らない!お客が不快に思ったらどうすんの!!」
 「す、すみません!!」
 いきなり頭下げ謝る私・・・
 うう・・・やってしまった・・・
 「シンデレラの涙はあるか!」
 後ろから朗々とした男性の声!?
 振り返ると出入り口の扉のこちら側に・・・兵士!?
 半球の鉄兜と鎖帷子と鎧を着こみ鉄の槍を持った角々しい顔の王国軍の兵士・・・
 それは私達に向かい
 「ありったけだ!だが、傷ものとかは許さん!!」
 「はいはいど~も~ちょっと待ってくださいね~ほら!あんた!!」
 「はい!?」
 女性に呼ばれ振り返る間に、女性は力の抜けた軽い態度で右手を上げ
 「店番よろしく!すぐ戻ってくる!!」
 「あ・・・はい!」
 こうして数瞬・・・
 「ほれ!うちにある在庫!!」
 カウンターに寄る兵士に女性が右手で持って差し出したのは涙型の透明な石三つ・・・
 兵士はそれを見つめ・・・
 「ふむ・・・間違いなし!ほれ!代金だ!!」
 左手で腰元鎧の隙間より乱暴に差し出されたのは古さで茶色くなった紙切れ三枚・・・?
 何か事細かに書いてあるけど・・・?
 店主はそれを見たとたん目を見開き
 「げげっ!?王国証小切手!!」
 嫌そうに驚いた
 「なにがげげっ!?だ、代金も相場分だがしっかりと書いてある、足りないとは言わせんぞ!!」
 驚く店主に対し兵士が強く言い放つ、
 店主は今度は嫌さで力が抜けた顔で辛そうに兵士を見上げ
 「でもこれ、引換が遅い上に通らない時も・・・」
 「いいから!渡したぞ!じゃあな!!」
 こうして、兵士はシンデレラの涙を奪い取るように持ってカウンターに小切手を叩きつけ振り返り去って行ったのだった・・・
 「あ・・・」
 「あー・・・」
 私と店主は呆気にとられ去っていく兵士の開けた扉を見るばかり・・・
 流れる沈黙の空気・・・
 うう・・・どうにかしなければ・・・
 「あ!そういえば、シンデレラの涙ってなんでシンデレラの涙っていうんですかね?」言いながら私は店主の方を向きつつ愛想笑い「あのお話、涙流す要素ありましたっけ?」
 「・・・聞きたい?」
 私の思い付きの言葉に、店主の口端が楽しげに笑う・・・
 
 シンデレラのお話って知ってる?
 女性が王子様の舞踏会に行きたかったけど行けず、
 そこに魔法使いが現れてーってお話、
 でも、いきなり魔法使いが現れるなんて都合が良すぎじゃない?
 しかも、魔法使いは何も報酬を受け取らずに消えてしまう・・・
 実は、魔法使いっていうのは、王様の命令で、王子様のお相手を探してたんじゃないかっていう、
 魔法使いは密かに市中を回り、真面目に仕事をするシンデレラに目を付けた、
 そのまま行けばシンデレラも舞踏会に行って、そこで王子様と引き合わせればよかった、
 だけど、シンデレラは継母や義理の姉のせいで舞踏会に行けず、
 それで魔法使いは様々な魔法を使いシンデレラと王子を引き合わせた、
 そして、シンデレラと王子様の結婚式、
 シンデレラはそれに歓喜の涙を流し、魔法使いはその涙を魔法で固めて持ち去った・・・
 
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