バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

ハーフビースト:ハーフヒューマン/2

ハーフビースト:ハーフヒューマン 2
 
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 「健康診断終わり、試薬の効果は出とらんようじゃな・・・」
 「外れかぁ・・・」
 ま、健康に害が無いよりかはマシか・・・
 壁紙がはがれ、煉瓦の見える、ボロの診察室、
 一応右手側に白いベット、前方左手に白い机のある部屋で丸椅子に互いに座り対峙するドクター、
 いや、半分蛾のドクター・・・
 俺と同じ半人半獣である、
 人間側はしわくちゃで白衣着て聴診器を首からかけた老ドクターという印象だが、
 蛾側は茶色い体に大きな触覚、全体的にブラウンで外側に広がる薄茶の半円の模様付きの大きい羽を持つ・・・
 「・・・」
 で、それをドクターの右後ろより見守る看護師・・・
 人側は肌が黒く、妖艶な美女という感じで、裾の短い看護服に身を包み眼鏡をかけ、
 反対側は白いハナカマキリであり、蟷螂側はかなり大きい、
 ・・・そうだ、もう五年ほどになるか・・・
 世界中で体の右半分が人外になる、という現象が巻き起こった、
 世界中で混乱が起こり、様々な国で隔離政策や保護政策が行われた、
 そんな中で分かったことの1つがこれは近くの人に感染するらしい、ということだ、
 俺は三年ほど前にこれに感染、
 大学卒業間近であった俺はそれまでは余りにも邪魔で白く大きい感染防止スーツを着るなどして日本にいたものの近くの人に感染させずに済む方法をネットなどで模索、
 結果、このアメリカのスラム街に身を寄せたというわけだ・・・
 だが、俺は家族のもとに帰ることをあきらめてはいない・・・
 半人半獣が集まる街は他にもあるのだが、それらは隔離政策や保護政策の一環で作られたものであり、ありていに言えばあまり自由が無い、
 逆にこの街は自然と半人半獣が集まった結果、後追い的に半人半獣の街と認められた、
 結果、様々な制度が緩い、
 例えば、個人の医者の政府から公認されてない半人半獣の研究に協力したりとか、ね・・・
 「で、今は何か協力しなければならないことは無いですか?」
 丸椅子に座ったまま蛾の医者に俺は問う
 蛾の医者は少しすっとぼけた感じで少々上の空に
 「今は無いのう・・・」そう言った後改めて俺に向かい「試薬の協力に集中してくれい」
 「了解」
 それで、俺は試薬の試験などでこの爺さんの研究に協力し、時には爺さんの頼み事などを聞いたりするが、
 その代わり、半人半獣を治す、もしくは、感染を防ぐ方法を見つけたら真っ先に受けさせてもらう、
 という契約を交わしたというわけだ・・・
 そういえば、あの事を話しておくべきか?半分注意喚起に、
 「ああ、そうだ、仕事中に奇妙な連中と会いましたよ」
 「なんじゃ?」
 真正面から訊き返して来る
 「世界征服するとか言ってる奴らです、あいつら、兵隊がいるとか言っていきなり襲い掛かってきて・・・」
 先ほどと同じく少し上の空に
 「さぁ、わしは知らんの、」そう返しつつ再び俺を見る「散歩と買い物以外で外に出る事は滅多にないからのう・・・バナンシーはどうじゃ?」
 医者は言いながら右後ろの看護師の方を向くも、看護師は医者を見つつ静かに首を横に振った
 それをドクターは見て、俺に向き直る
 「だそうじゃ、ま、何かわかったら教えてくれい、あと、誰かボコったら連れて来てくれい、治療してやるぞ、特別料金でな!」
 ふぇっふぇっふぇっ
 と可笑しそうに笑うドクター、
 僕がボコってドクターが治すって、
 それじゃ、ほとんどマッチポンプじゃないか・・・
 ・・・それに、教えてくれって、どうやら、ドクターに専門外の事を訊いたのが間違いだったようだ・・・
 「んじゃ、俺はもう帰るよ」
 「おう、それじゃあな!」
 最後だからか元気が出ているドクターの声に合わせ、バナンシーが会釈する、
 俺はそれを見つつ立ち上がって振り返り、
 目の前の重く灰色の鉄の扉の方に椅子を避けながら歩いて行き、扉を開いたのだった・・・
 
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