忍者マウンテンサイクリングレース 3
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「あっぱれなり、輪蔵」
「はっ!」
俺は先の方にいた濃紺の忍び装束を纏った年配の忍びに右拳を地に着け姿勢を下げる
年配の忍びは胸を張り俺を見降ろし
「忍者マウンテンサイクリングレース1位とは、他の成績を見ても次の任務はお前が適任か・・・」
「おほめにあずかり光栄にございます、では、正式に任務が決まったのであればご連絡を・・・」
「わかっておる、では、進言してこようか、今度のアラブ王族暗殺任務を・・・」
「アラブ王族暗殺任務・・・」
その数週間後、俺はスーツを着て城の建つ夜の砂漠に来ていた、
俺の目線の遠く先には砂の海の上に白い塔の上に黄色い玉ねぎ型の物が乗っている建物、それが複数、白色の石城壁に守られて並んでいる・・・
もちろんスーツは白いシャツ部分を濃紺のマフラーで隠し、頭にターバン風濃黄頭巾をかぶり、
俺の背には相棒の折り畳み自転車がある、もちろん、砂漠対応型だ・・・
「あそこか・・・」
目標を双眼鏡で補足する、
塔の最上階の窓の向こうにいる、
バスローブを着て頭にバスタオルを巻いた日に焼けた小太りで少し髭の生やした中年の男性、
なんと不用心な、狙撃銃で狙われたらどうする気だ・・・?
もっとも、あの窓は銃弾も通さないのだろうが・・・
・・・俺ならどうにかできる・・・
自転車を取り出し、一気に砂漠を漕ぐ!
上方はともかく下の方は風がひどく砂を巻き上げ視界も悪いうえ、
警備と監視カメラの穴を突き、この一瞬は両方の視線が逸れ見られず、悟られないコース、
白い城壁を自転車の乗ったまま一気に登りきり右手で掴んで上に乗り、その勢いでターゲットのいる白い塔に漕いで飛び出しとりつき駆け上る、
そして、ターゲットのいる窓まで登り、
ターゲットの驚き大きく開けている目を見つつ、
胸元から取り出した特製のサバイバルナイフで窓を逆手で一突き、
調査通り、穴が空く、
そのままサバイバルナイフを抜き胸元に仕舞い直しつつ拳銃に持ち替え、
窓の穴に無理矢理銃身をねじ込みターゲットに撃ち込む、三発程、
胸と首と頭に一発ずつ、ターゲットは向こうに倒れ込む、
おそらく、生きてはいまい、
生死確認をしたいがそこまでの余裕は・・・無い、
即刻拳銃を抜いて胸元に仕舞い後ろに返り自転車をこいで下に降りつつ後輪を上げて塔に叩きつけ壁を超えられない寸前の位置で跳躍、
そのまま壁の上を超え砂漠に着地し、誰も見ていないことを確認しつつ自転車のペダルを漕いで走り込み砂漠の砂風に紛れ姿を消していく・・・
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