カードゲームライトノベル Wカードフュージョン11話 策謀の中の少女5
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「ここだ、ここ!」
整備された道路を左手に逸れ、荒野の砂と土に埋まりかけた荒れた道路をたどり、ナユタさんの案内に基づきたどり着いたのは瓦礫の山、
元はなにか大きな建物だったのだろう、コンクリートのような物で作られた、奥で右手側に直角に曲がる多階層のボロボロの床に完全に崩落した正面の壁とその他のところどころに窓の様な四角い穴が開いた上に階層があったであろう崩落しかかった壁があり、それらのコンクリートのようなもので作られた瓦礫で、一階部分とその周りが埋まっている、
そう、いくつも言うが、コンクリートのような、なのだ、見た限り、僕の知る灰色のコンクリートとは異なる、
少なくとも、断面や表面のそここに鉄材や水晶材があからさまに見え隠れするものをコンクリートとは呼ばない、色も灰色ではなく灰と薄灰色がマーブル模様の様に不規則に混ざった独特の物である、
そういうデザインなのか、これが一番強度があるのかはたまた値段が安いのか、道路はわりに普通だったけど、あれも僕の知らない技術や材料が使われているのかもしれない
「ちょっと待ってろ!」
ナユタさんがシートベルトを外し、左手扉の方を向き、またもそこで動きが止まった
「え、えー」
「ドアにある取っ手を引けば開くから」
「わ、わかった!」
ナユタさんが左手でドアの取っ手を引いて
ガチャ!ガタッ!
・・・
扉のロックが外れたまま引いて引っ掛かる
「あ・・・」
が、力を緩めたことで反動でドアが空き、ナユタさんがそこでドアを押してカーディンから出て行き、反対側からドアを押してドアを閉める、
まったく・・・
ナユタさんはそのまま瓦礫の前まで走って立ち止まりつつゆっくりしゃがみ、
その右手甲で地を思い切りたたいた!
ドン!ドン!
え・・・何してんの、あれ・・・?
「開けてくれ!人がいるんだ!私達の仲間以外の人だ!ほら、」ナユタさんが僕の方を向いて右手で僕を手招く「双歩、こっちに!」
なんなんだよ、もう・・・
「ごめん、カーディン、行ってくる」
「わかった」
右手でシートベルトを外しつつ反対の手でドアを開け、外に出て右の手でドアを閉め、ナユタさんに近づく
「ほら!よく見ろよ!」
ナユタさんがそう発した瞬間、地面に一直線の隙間ができる、
うぉっ!
思わず驚き隙間を見ると、暗い中、誰かが覗いているように見える、一体、誰が・・・?
「警戒してるのか?大丈夫だって、こいつもあの機械、カーディンって奴も話してみたけど信頼できる奴だぜ!私が保証する!!」
しかし、ナユタさんの言葉に対し、何の応答も無い、
と思ったら、いきなり視線を感じなくなる、一体どうし
いきなり、シャッターを開けるように隙間から地面が一気に開く!
ガラガラガラ・・・ビシャン!!
え・・・?
そこに現れたのは、地下に続く灰色の幅広坂道、そして、その先には四角い出入口がある、なるほど、さっき地面が開いてたのはカモフラージュした床兼用の鉄扉と言うわけか
「おお、ようやく開いたっ!ほら!入ろうぜ!」
ナユタさんが走って入口の方に入って行く、
慌てて僕が追うと同時に、カーディンも後ろの方から着いてきた、
入り口の中は、地下駐車場のようになっていて、そこにボロボロの衣類やマントを着た幾多もの老若男女の人が部屋の様に分かれた駐車スペースにたむろしていた、
が、石材の関係からか、そこかしこで鉄や水晶が混ざっていて、ところどころで光を反射していたりする、
ガラガラガラ・・・ビシャン!!
え・・・?
背後から急にシャッターが閉まるような音が響くと同時に、辺りが一気に暗くなる!
わけではなく、確かに一瞬暗く感じたのだが、どこかから光が漏れてきているのか真っ暗、という状況にはならなかった、石材の中に混ざる鉄材や水晶も光を反射して、暗いライトのようになっている
そういえば・・・この上、盛大に瓦礫が積もってたな、デカい壊れた建物もあるし、天井が落ちてこないのか不安になる・・・
「父さん!」
「ナユタ!」
突如、ナユタさんが後ろに走り出すと、そこには一人の男性がいた、
黒髪で、やはり日焼けしたように肌が浅黒く、顔立ちはそこそこ精悍で髪は黒い短髪で無精ひげが生えており、首から薄黄色のマントを羽織っているほか、長袖の草色シャツをその下に着てさらにその下に長裾の草色のズボンを穿いていて、足に簡易な布靴を履き潰している、
と、ナユタさんと一時抱き合い、離れ、顔を向かい合せ
「まったく、心配したぞ、いくら倉庫の食糧が無くなってきたからっていきなり飛び出していくなんて」
「ごめんなさい」
ナユタさんが反省し、顔をうつむかせる
「なに、反省してるならいいんだ、次からは気を付けろよ、あ、」
と、すぐに気が付いたように僕達の方を向き、こちらに近づき、立ち止まり、僕達の方を真っ直ぐ見据え
「初めまして、ナユタの父です、出入り口から拝見させてもらいました」
出入り口から・・・?なるほど、この人があの床の扉の開閉を行ってたわけか・・・
よく見ると、上の天井の方に張り付く何かを仕舞うような大きな板のような物が見える、多分、あれの中身をスイッチで前後させる仕組みになっているのではないだろうか
「ナユタ!無事だったのね!」
「あっ、母さん!」
今度は左手の方から女性が駆けてきて、こちらも少しの間ナユタさんと抱き合う、
黒髪長めの髪型で、顔立ちはごくごく普通であり、草色の長袖ロングワンピースの上に枯葉色のケープを羽織っている、
しかし、それよりも目が引いたのはそのお腹だ、前方とその左右に、少しばかり不自然に大きい気がするのだが・・・
「ん?」ナユタさんが目ざとくこちらを向き、近寄ってくる「何だ、母さんのお腹が気になるのか!?」
「え、あ、いや、なんとなく目についただけ」
「ははは、隠すなって、気になったんだろ!実はさ、今度、弟か妹が生まれるんだぜ!」ナユタさんの言葉に、女性の方も僕達の方を向き
「ええ、そうなの、ようやくできた二人目なのよ、このご時世で、と思うんだけどね、どうしてもって、ねぇあなた・・・」女性が話しかけると、男性が女性を見て少しうなずき
「うん、みんなが祝福してくれたしな、」男性が再度こちらを見る「このまま産んでもらおうかと」
「もう、他人行儀ね」
「いやいや、ははは」
「ああ、そうなんだ・・・」
「生まれたら双歩、お前に名前を付けてもらおうかな、なんてな!」
「あ、ははは・・・」
面白い冗談だとは思えないが・・・
「ナユタ、まずはこの人たちを長老の所へ、とりあえず長老に会わせておいた方がいい」
「あ、わかったよ、父さん!」
「長老・・・?」
「ここの知恵袋ってやつさ!お前さんたちの素性もそこで訊こう!長老がいた方が色々安心だしな!ほら、行こうぜ!」
ナユタさんが勇んで奥に向かって歩き出すのを、僕はカーディンを見て少しうなずき、カーディンと共に追いかけ、進む
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