カードゲームライトノベル Wカードフュージョン11話 策謀の中の少女9
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「長老・・・」
ナユタさんと共に、長老の元へと戻ってきた、その両手には先ほどの大きめの胎児がいだかれている、・・・腕の中の胎児は、まるでただの置物かの様に一切動くことは無かった・・・
ここに戻ってくるまで、まわりの人間、ロボット達は全て一様に驚きの表情を隠せずに固まり、
カーディン等最初見た時は
「どういうことだ、双歩」
とまで聞いてきたが、
「僕にだってわからないよ、とにかく、長老の所に戻って事情を聞こう」と返すことしかできなかった、
実際、これだけじゃ僕には状況が呑み込めないんだから仕方がない、恐らく、ナユタさんも一緒だろう、
と、ナユタさんが意を決したのか、真正面から長老を見据える
「どういう事か説明してくれ」
長老が少し、うなずいた「うむ・・・」
「さて、どこから話せばいいか、そうじゃな、まずはわしの出自から話した方がいいか」
「長老の、出自・・・?」
「そう、わしはな、お前達のプロトタイプにあたるんじゃよ」
「えっ!?」
ナユタさん達の、プロトタイプ!?
「タルワール国からフランベルジュ国にスパイするために作られたロボット、その実用第一号がわしなのじゃ」
「ス、」「ス、」
「スパイ!?」「スパイ!?」
僕とナユタさんの声が見事ハモる、周りの人たちからもざわざわと喧騒のような物も聞こえてきた
「そう、当時は今より技術が足りなくてな、生み出された時は二十歳前後の姿じゃった・・・」
「二十歳前後の姿で生み出されたのに、今は老人のように見えますが?」
「そうじゃよ」長老がカーディンから声をかけられ、カーディンに視線を移す
「これが当時画期的な事でな、年月が経つと共に人間の様にその姿と能力を変化させていくことができたのじゃ」
「な・・・」
ナユタさんが絶句し、辺りの声も鎮まる、なるほど、この機能があるなら、老若男女の姿をした機械を自然に作り出せるというわけか、ここにいる機械たちみたいに、その技術が発展して胎児の状態から成長させられるようになったと・・・
「その頃、わしはフランベルジュ国に入り込み、人間のパートナーと共に一般の人間を装いフランベルジュ国を調査しておった、」
「長老が、人間のパートナーと・・・?」
ナユタさんが想像できそうで想像できないといった不思議そうな顔をする、そして、それを見た長老が少し顔を縦に振り
「うむ、そうじゃ、」話を続けだす
「その時は、AIの精度もよくないし、実用化したと言ってもまだまだ不安要素が多かった、一般にスパイと言われイメージされるような相手国の中枢に入り込むようなことは出来ず、ごまかしごまかし一般庶民を装うのが精一杯だったわけじゃな、人間と組んでいたのもそのフォローが必要だったからじゃ、」
「なるほど、それで人間と組んで・・・」ナユタさんが納得したように返事を返す「そういうことじゃな、じゃが、一人でどうにかできると判断され、パートナーとは五年で分かれて、単独でスパイ活動をしておった、そうして徐々に相手国に活動を認められ、政府の中枢に入り込んでいき、そんな矢先、別の国への出向を命じられた」
「別の国・・・?」
「そう、そこで新型のAIが開発されたのじゃ、それに他のAIを融和させ、強化を試みたわけじゃな、わしが選ばれたのは経験豊富なAIを持っていたせいじゃろう、なんせ、当時すでに三十五年は人間社会に潜伏しておったからのう」
「なるほど、ただ動くだけではなく人間社会で三十五年、おまけにロボットだと疑われずにですか、確かにAIとしてはかなり優秀で経験も豊富だと思います」カーディンが賛同の意を示す
「まぁ、自画自賛するではないが、そこまでのAIはその時代、あまりいなかったからのう、そして、わしの中に新しいAIが埋め込まれたのじゃ、エメラルディアという少女が開発した、人工知能、Naeがな」
「ま、待ってください、エメラルディアという少女が開発した、Nae、ですか!?」
ん、カーディン、どうしたんだろ?
「何を驚くことがある、今やNaeはたくさんのロボットに搭載されているではないか、ここにいる者たちも、おぬしにも搭載されているのじゃろう?」
「ええ、そうです、ですが、私達は別の世界から来たんですよ!?、数か月前まで存在していることすら知られていなかった異世界から、そして、私には、いえ、私達には搭載されているのです、十五年、忽然と現れたエメラルディアと名乗る少女が残した置き土産である、人工AI、Naeを!」
「な、なんじゃとっ!?」
ええっと・・・これは・・・
「とりあえず、二人とも落ち着こうか、深呼吸でもして」
「し、仕方ないな」
「う、うむ」
「すーはー」「すーはー」
僕の言葉を聴いて、カーディンと長老が深呼吸を行い、落ち着く、
「じゃあ、とりあえず、一つ一つ処理していこう、長老、話の続きを、」
「う、うむ、そうじゃのう・・・」
長老が改めて僕達の方を見据える、
「さて、では、話の続きと行こうか、わしが試験に参加したNaeは画期的なAIで、人工知能の性能を一気に引き上げたのじゃ、ここにいる者たちを見ればわかるじゃろう、一見すれば人間と見間違うほどの行動をとることだってできる」
「それは、まぁ・・・」
「確かに・・・」
「Naeの開発に世界は湧き、様々な機械に搭載されるようになった、しかし、」
「しかし?」「しかし?」
「ある日、機械達が反乱を起こした、十三年ほど前の事じゃ、ナユタ達には口を酸っぱくしてまで話しておったはずじゃが・・・」
「ああ、知ってるぜ!」ナユタさんが少し元気よく返してきた、少しは回復したのだろうか・・・?、にしても・・・だ、
ううむ、この辺り、ナユタさん達は知ってるんだろうけど、僕とカーディンは全く知らない、いかんせん、この世界に来てまだそんなに経ってないからな、仕方ないな・・・
「その辺り詳しく話してもらってもいい?僕達、その辺りまったく知らなくて・・・」
「私も、その辺りの事は、反乱を起こしたということぐらいしかデータに入っていない・・・」
カーディン、そのへんの事、ちょっと知ってたんだね・・・
「いいよ、何度でも話してやろう・・・」
長老が少し座り直し、僕達の方に視線を戻す
「さて、機械達はNaeによって驚異的な性能を得たが、同時にあるものも手に入れていたんじゃ」
「それは、何?」
「感情、善意、そして、悪意じゃ・・・」
「それって・・・」
カーディンをチラリと見る、よくよく考えてみればおかしなことだ、なぜ機械が感情を持ってるんだろう、
いや、今までロボット達が感情を持ってるってことは結構当たり前だから忘れてたけど、けど、カーディンだって機械なんだよね、
カーディン達とそれ以外の機械を分けるもの、それは、さっき言ってたNaeのあるなしなんじゃないだろうか・・・?
「話を続けていいかの?」「あっ、」
長老の声にあわてて顔を戻す「はいどうぞ!」
「では・・・」長老は改めて僕達の方を見据え「機械達は感情達を得たが、反対に人間たちは、機械を今まで通りに道具として扱い続けた」
「そんな・・・感情を得たのに道具のままだなんて・・・」
「そう、おかげで機械達は鬱屈がたまり、それがある日、爆発した」
「きっかけは、一体何だったのですか?私のデータベースには載っていません・・・」
「あるものが機械よ立ち上がれと叫び、旗印を上げたのじゃよ、新たなるメインサーバの守護者と言ってな」
「な、それって・・・」「それはまさか・・・」
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