ネトゲ恋愛記 ~サブタイトルは秘密~ 6
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「で、すぐに逃げ帰ってきたと・・・」
「ううん、まぁ・・・」
いつもの教室、いつもの席、そこで久利亜ちゃんと話す・・・
「ていうか、昨日、どうしていきなりあんなこと聞いたの?」
久利亜ちゃんが呆れたような目に力ない顔で窓を見ながら右手を解説するように手の平を上にして肩上で外側に向ける
「どうせ確認したくてもあんたじゃ訊きにくいでしょう、だから、訊けそうなタイミングで訊いておいただけよ」
「ふぅん、そっか、」
そっかそっか
「そうよ、それで、」
久利亜ちゃんが右手を下げながら私に向き直る
「すぐにログアウトしたの?」
「まぁ、手続きやってから、時間に気が付いたふりして、実際遅かったし・・・」
「ふむ・・・それじゃあ今日も時間ある?」
「うん、行ってみたいと思うんだけどさ、ちょっと立ち聞きして・・・」
「立ち聞き・・・?」
「うん・・・」
微小に首を縦に振りつつ話し出す・・・
・・・それは前にも話していた階段端での事・・・
弧己す君と耕氏君が前と同じ場所で、前と同じような立ち位置で話していたのだ・・・
「昨日来たさ、トークンアリスとガメオベィラって言ったっけ?うちのギルドに来た・・・」
「あぁ・・・」
少し軽めに耕氏君が弧己す君に話しかけている、すると、そのことを思い出したのか、弧己す君が目を伏せて右手を口に当て考え込み始めた・・・
「何だったんだろうなあれ、ガメオベィラは思わせぶりなこと言ってさっさと去って行っちゃったし、二人ともレベル1だったろ?」
「ただ連れて来ただけって言ってたな、普通そんな事するか?」
「ガメオベィラがおせっかいだっただけじゃね?」
「で、そのおせっかいで厄介ごと抱えてると」
「それも面白そうだな、ははは」
弧己す君の呆れが混じった警戒するような暗い声を耕氏君が笑い飛ばす、
・・・とまぁ・・・
「そんな感じの事を話してたわけよ・・・」
「それじゃ、ミスティーシャにあの二人がいるのは確定なわけだ・・・」
「そういう事・・・」
「じゃあ、今日もログインして、ミスティーシャに行ってみなさいよ、あ、その前に」
「その前に・・・?」
なんだ!?
「ネトゲのマナー学んで・・・って、一朝一夕に行くわけないか、とにかく学んで、それから・・・あ!ベガさんの簡易ナビゲーション機能をオンにして、ネットマナーに違反するような行為をしそうになったら注意してもらってちょうだい、いい?」
そうして、学校も終わり、家に帰って晩御飯も食べたころ、私はもう一度、クックルードの世界に入るのでした・・・
「ええっと、ここは・・・」
周りに広がるはレンガの街並み、家々に白いレンガの混じるここは・・・
「ウェストシティの中心部よ」
「うどわっ!?」
いきなり聞こえた声に思わず振り返る、
そこには、あのバーテンさんが立っていた・・・
「バ・・・バーテンさん・・・?」
「サラよ、サラ、他人の名前くらいメニューから確認できるでしょ?」
「メ・・・メニュー!!」
開いてみるが、えっと・・・
木目の入った茶色い半透明の板に同じ大きあの同色の角の丸い板に乗ったよな白い文字の熟語が整列しているが・・・?
「周辺情報」
周辺情報の白い文字を押すと、板にこの辺りの地図だろうか地形を真上から模写したもの・・・が出てきて、その中に確かにサラさんの場所にサラという名前とレベルが出ている・・・
「私の所、押して見なさい」
押してみると、細かいステータスと自己紹介文が出てきていた・・・
「えっと・・・自己紹介にミスティーシャ団長って書いてあるんですけど・・・」
「そうよ、団長よ」
げぇえっ!?
思わず少し引きながら団長の顔を見る、と言っても、表情一つ変わらない凄烈な美顔があるだけだが・・・
「それは・・・すみません、団長・・・」
「サラでいいわ」
「サラさん」
「というか、あなた、どこまでこのゲーム進んでるの?・・・経験値0じゃない!?」
「え、えぇまぁ・・・」
「初期装備のまんまだし・・・ビギナークエストすらやってなさそうねぇ、これは・・・」
「は・・・はい・・・」
「状況見ると、やり始めてすぐにうちのギルドに来たようだけど、どういうつもり・・・?」
ええっと・・・どういえばいいだろうか・・・?
と、右手向こうの家の影よりこちらを何度と隠れ見るガメオベィラちゃんが!?
助けて!と念を込め、向こうをしきりに見るが・・・一向にこちらに来る気配は無し・・・
どうやら、助ける気0のようである、ううぅぅぅぅ・・・
こうなれば一か八か私が話を合わせる必要があるな・・・
極力嘘はつかないように・・・サラさんの方を見据え直して・・・
「あのですね、ネット上でミスティーシャって単語を見つけて、クックルードに関連してるって以外分からなくて、そしたら、ガメオベィラちゃんがギルドの名前なんじゃないかって言ってくれてですね・・・」
「ふぅん・・・ネカマ関係で引っかかっちゃったのかしら・・・」
「た・・・多分そうです・・・」
良い具合に勘違いしてくれた、か・・・
「で、これからどうする?うちは団員のやりたいことには極力協力する方針だけど、話の肴に、」
ええっとどうしよう・・・この人が個々家くん、なのかもしれないんだよね・・・よし!
「お、お願いできればうれしいな~」
「よしきた、すぐにセントラルシティに行こう!」
そして、一目散に東の方に歩き出した
え?なんでこんなに協力的なの?
「ついでにみんなも呼んでみよう」
え・・・?
そうして、私はメニューを閉じてギルド本部まで行き、ギルド本部より、ビギナークエスト、と呼ばれるものを受けた、
まずは、操作確認クエスト、報酬100ダルピン(ダルピン?)
そして、続けて、私たちは、セントラルシティ南の、街道から外れた草原の方に足を運んできたのだった・・・
「ずいぶんと懐かしいな」
「ええ、最近じゃすっかりこの辺りにも来なくなりましたし・・・」
団長、サラさんと女神のような人、オセリアさんが私の後ろで話しだす、チャット欄で分かる
「というより・・・なんでみなさん、私の後ろについてきてるんです?」
「めずらしいからだろう?」
「そうどすなぁ」
「めず・・・らしい?」
今度は女騎士、フレナさんと芸者、じゃなくてニンジャ、名前は畑家 らんこ、らんこさん
「普通はギルドに入る前にビギナークエストぐらいこなしてるもんだから、ギルドに入った状態でビギナークエストは死ぬほど珍しい、私達としては」
「そうどすえ」
そ・・・そういうもんなのか・・・っていた!?前方遠く!!
緑色の小型の醜悪な鷲鼻耳長小太腹革腰巻棍棒亜人、ゴブリン、あれを完全に一人で三匹討伐すること、それが今回のクエスト
スタン!
が、右手背後から飛んできた一本の矢が、いともたやすくゴブリンの頭に刺さりとどめを刺し、消滅させた、
思わず矢の飛んできた方向を見る私、
そこには弓を弾き絞り放った後のエルフの少女がいた
「こら、エーグル」
エーグルとサラさんに呼ばれたのは弓を放ったエルフの少女である
「えーつまんない」
口をとがらせた本当につまらなさそうな表情だ・・・
「つまんないなら余所で別のクエストでもしてなさい」
「ブーブー」
そう言って、エーグルはそっぽを向いてしまった、別のゴブリンでも探すつもりなのだろうか、
出来ればこちらに回してくれるとありがたいのだが・・・
「おい!出てきた!!」
サラさんの言葉に向こうを向くと、今度は二体同時に見つけた、
「二対一だが、木の棒と皮の服の初期装備でも行けるはず・・・」
なんで木の棒なんだろうか・・・?
「ダメージ受けたら回復するから言ってね?」
オセリアさんがそう言ってくれ・・・
「エクスプロージョン!!(炎系上位魔法の一つ、広範囲に炎属性の大ダメージを与える、元は最上位魔法だったのだがアップデートでもっと強力な魔法が多数生まれてしまい、その地位から降ろされた)」
ズドーン!!
大きな爆発と炎に巻かれ、ゴブリン二体がまたも消滅する・・・
「アニタァアアアア!!」
「テヘペロ☆」
言われたのはあのゴスロリの黒ツインテ!
私が思わず振り返ると舌を出してウィンクなどしている・・・
「だってぇ、つまらないんですもん!」
「だったら、別のクエストでもしてればいいだろう!」
「団長」
「なんだ、マッキー!」
一気に団長が振り返る
発言したのはアニタと団長を挟み反対側にいるあの機械少女、何でも、古代機士という職業らしい・・・
それが無表情に団長を見上げ・・・
「次にゴブリンが現れた時は私も倒したほうがよろしいでしょうか?」
「するな、そんなことは、ほら!、あそこにもいた、横取りされないうちに行け!」
「わ、わかりました!」
私は、振り返って見つけたゴブリンに急いで近づき、木の棒を思い切り振るう・・・
一度反撃を受けたものの、五度ほど木の棒を叩きつけたところでそれは倒れ、消滅した・・・
「やった!」
「ようし、初めてのゴブリン退治だな、この調子で残り二体もだ!」
こうして、私はビギナークエストを消化していった、残りは薬草探しと配達だ、徐々に人は少なくなっていったが・・・
そうして・・・
「それじゃ、ログアウトします」
「お疲れ様」「お疲れ様」「おつかれどす」「お疲れ」「お疲れ様」
サラさんにフレナさん、らんこさんに、エーグルちゃん、オセリアさんも残って見守ってくれていたが、それも今日はお別れだ、
皆がログアウトして去って行く、それじゃ私も
「ログアウ「ちょっと待った!」
と横から声がかかった、ガメオベィラちゃんだ!?
夕日でがかる町が背景にうつる草原で、ガメオベィラちゃんが歩いてきた
「どうしたの、っていうか、ずっと見守ってたよね!?」
「まぁまぁ、それについてはログアウトした後に話そうよ」
「まったく、それじゃ、改めて、ログアウト!」
目の前の景色が、私の部屋へと戻ってくる、と同時に、机の上に置いたスマホに着信が・・・
私はそれを取り、画面に出てきた名前を確認しつつ画面を押して回線を開き耳に当てる
「はいもしもし、あ、久利亜ちゃん!」
「ああ、ごめんごめん、でもさ、私よりもギルドのみんなと親交深めた方がいいでしょ?」
「それは、まぁ、そうなんだけどさ・・・」
何か釈然としない・・・
「で、これは提案なんだけど・・・」
ん・・・?
「これを話の種に二人に話しかけてみたら?」
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