バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒/2

Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒 2
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 「ねぇねぇ!お兄さん強いね!!」
 「あ・・・?」
 後ろから唐突にかけられた声にそちらを見れば、そこには、大きな口と目をいやらしく曲げる小さな蝙蝠がいた、
 毛皮生えた体に大きな耳、その膜持つ羽を羽ばたかせ俺の周りを俺を見ながら飛び回り
 「ねぇねぇ、なんでこんなとこに来たのさ?」
 「お前にはかんけぇねぇだろう」
 無視して歩を進めだす
 「でもさ、教えてくれたら話が通じる人のとこに案内してやるぜ?」
 「ほう、面白いな、お前じゃダメなのか?」
 「おいらさ、昔の記憶がないんだよ、いつの間にかこの辺りにいて、辺りを飛び回ってるだけで、この城のことあんまり知らねぇんだ」
 「なるほどねぇ・・・」
 俺は立ち止まりそいつのことを値踏みするように上下に視線を這わせ見るが、
 ・・・ま、いいか・・・
 「しゃーねーな、だが、その話の通じる奴の前でだ、お前に教えたところで一銭の得にもなりそうにねぇからな」
 「ええーいいじゃん!」
 「本当に話の通じる奴か見極める必要もあるからな、ほら、連れてけ」
 言いつつ顎で指示してやる
 「ちぇーっ!こっちだよ!!」
 そう言って、蝙蝠は左手の通路に入っていく・・・それを俺はゆっくりと追いながら歩き・・・
 「そういえば、お前の名は?」
 「名前?無いよ」
 「無い?」
 そういや、記憶が無いって言ってたか・・・?
 「しょーがねぇな、俺がつけてやろうか?蝙蝠だから・・・リッキーでどうだ?」
 「別にどう呼ぼうがどうでもいいよ、というか、あんたの名前は?」
 「俺か?俺の名はヴァルカ=ンだ」
 「ヴァルカだね」
 「そうだ、で、前に見えてきたあそこにお前の言っていた奴がいるのか?」
 「そうそう」
 朽ちてすでに扉もなくなった穴をくぐると、そこには昏い光が差し込む部屋があった、
 左手側壁の中央上方の一部が崩れ光を送っており、そこかしこにある骸骨を照らす、
 が何より目を引いたのは中央の黒い台だ、
 一見すると黒い金属の塊にすら見えるそれは・・・
 「おや、お客さんかい?」
 「おお、爺さん!!」
 リッキーの声に左前を見れば、そこにいたのは、こちらを斜め目で見る後頭部まで全身をくすんだ灰色のローブで包んだ爺さんだ、
 やせ衰え少し前に出た鷲鼻がその年齢を象徴している・・・
 そのしわ顔でよく見えない眼をおそらく俺に向け
 「ずいぶんと珍しいな、その台に目を付けるとは・・・」
 「ああ・・・これは魔鍛冶台だろ?」
 「ふぉっふぉっふぉっ、その通りじゃ」
 朗らかに笑って答えることじゃないだろうに・・・
 「で、これを作るために一体どれだけの人が犠牲になった?」
 「さぁ、正確な数はわしにもわからんて・・・」
 まったく・・・
 ・・・魔鍛冶台・・・
 魔力を込めた鍛冶用の台で、ここに込めた膨大な魔力を利用して俺たちは魔法の力を込めて打つ、
 魔法の力を込める方法は様々だ、普通に剣を打った後、魔法をかける形で魔力を外部より込める、
 装飾に魔法を込めて装着したりする、火で鉄を打ち付きながら魔法をかけていく、
 その中で一般的に最も魔力を入れやすいとされているのがこれだ、
 魔法で火やその他の属性の力、鉄を極限まで分解するなどして剣として構成する際に魔力を練り込む、
 前述の方式だと、後から入れたり関係上魔力が弱くなったり、火が関係するために扱いづらい属性があったりするのに対し、
 これなら素材そのものに根本から魔力を織り込む関係上魔力が強くなりやすいし、魔鍛冶台の素材によってさまざまな属性が扱える、
 もっとも、この黒い魔鍛冶台は・・・死の匂いが強く出ている、
 おそらく、たくさんの命を奪う禁呪によって生成された代物に違いない、
 喉から手が出るほど欲しい代物だが、俺は一度も手に入れる機会に恵まれたことが無い、
 ・・・そう簡単に持ち出せるような大きさじゃないな・・・金属の塊だから重さも相当だろう、どうにかして回収手段を見つけるまで、ここで利用させてもらうか・・・
 ま、俺のやり方の方が良い武具ができるのは当たり前だがなぁ!!
 何といっても死の凝縮方法が違う!なぜなら・・・
 「兄ちゃん、何考えてんの?」
 右肩の方を見るとリッキーがその不気味な顔をのぞかせていた
 「あ、ああ、何でもない、そういえば爺さん?」
 言いながら横目で爺さんの方を見る
 「何だね?」
 「ここにいる間、こいつを使ってもいいか?」
 「おお、好きにしてよいぞ、どうせわしには使えん」
 「おお!やったぜ!ついでにこいつの所有権も譲ってくれると助かるんだがなぁ!」
 「それはダメじゃ」
 っち・・・
 「こいつはこの城と共に墓標なのでな、人に譲るわけにはいかんのじゃよ・・・」
 「あんたが死んだらどうだい?」
 「ふぉっふぉっふぉっ、さて、どうしようかのう?」
 ふざけた態度の奥底に眠る確固たる拒絶の意思・・・
 ううむ・・・どうやらダメそうだな・・・
 ま、使用許可が出ただけで良しとするか・・・
 そこで視界の左端に、立てかけた鉄の板を見つけた
 厚さ大きさ共に盾に最適な鉄の板だ
 思わず正面から見る
 ・・・城の補強に使うものか?
 「ついでにここにある素材ももらっていいか?」
 「どういうものじゃ?」
 「例えば・・・」
 と俺は鉄の板に近づき手に取り
 「こいつと・・・」
 辺りを見回し、床に転がるに鉄の取っ手を見つけた、
 鍋に使うものだろうか?楕円柱のゴムに通された薄い取っ手だ・・・
 それを手に取り
 「こいつだ」
 「別に構わんが、そんなものどうするつもりじゃ?」
 「こうするのさ」
 と、適当に鉄の板の中央少し上あたりに取っ手の付け根の部分を付け、腰の槌で念入りに叩き
 「出来たぜ、即席の盾の完成だ」
 鉄の板に取っ手の付け根が見事にくっついていた
 「おぉ~!」
 リッキーの感心の声が響き、今しがたくっつけた鉄の方に視線が行き、飛んできた
 「すげ~!どうやったんだよ!!」
 「槌で叩いただけでひとりでに溶接されるとは・・・」
 「は!俺にとってはこの程度朝飯前だ!!」
 「すげぇよなぁ!ここらあたりで威張り散らしてた腐ってたやつも鉄の棒突き刺して鉄の巨人と一緒に槌で叩き倒しちゃうしさ、そういや、そん時もいつの間にか鉄の棒が鉄の剣になってたな!!」
 「ああ、こいつだな!!」
 俺は槌をしまいつつ得意げに腰に差していた剣を取る
 「さしずめ、デッドアイアンソードといったところか」
 リッキーの目が今度は剣に釘付けとなる
 「おお、かっけ~!!」
 どうせどっかに売るときには業物の鉄の剣で済まされるんだろうけどな
 すると、老人の目が細く鋭いものに変わる・・・
 「おぬし・・・魔鍛冶師じゃな・・・」
 「それがどうしたよ?」
 何か嫌なことでもあったか?ま、こんな魔鍛冶台なんてもんありゃそりゃ嫌か・・・
 「いいや、何でもないわい」
 そう言って、爺さんは両口端を怪しげに上げ笑う
 ・・・本当に何なんだよ一体・・・
 「そういえばさ、兄ちゃん!」
 「何だよリッキー」
 「こんな城に何しに来たのさ?話の分かる人の前なら話すって約束だろ?」
 「ああ、そうだったな、しょーがない話してやろう」
 「おおっ、やった!」
 嬉しそうな声に思わず見ていなかったリッキーの方を見れば、その眼が輝いて見えた、
 本当にうれしそうだなこいつ・・・
 「いいか、耳かっぽじってよく聞けよ、俺がここに来た理由はな、世界最強最悪の武器を作ることだ!!」
 「おおっ!」
 喜ぶリッキーとは対照的に目を丸くして驚く爺さん
 「なぜそんなものを望むのじゃ?」
 「男の夢だろうが!世界を壊すような最強の武器!これこそ鍛冶師の夢だ!!」
 俺が両腕を組んで大笑いし、リッキーが同調して楽しくする中で・・・なぜか爺さんも大笑いし始める
 「ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっ、なるほどのう」
 何がなるほどなんだよ・・・
 「そうだ爺さん、他にも素材っぽいの、そこらに転がってるやつ持って行っていいか?」
 「おおいいぞ、何でもとはいかんが、わしに話を通してくれればな」
 「本当か!?それなら・・・」
 部屋を見渡すと、端っこの方にくすんだ赤い鉱石を見つけた、すかさずそれを拾い
 「こいつとか!」
 「いいぞ、持っていけ!」
 「やったぜ!!」
 そうして、俺は再び出入り口に立つ
 そして、顔を横にして後ろの爺さんを見る
 「じゃあな爺さん、何かあったらまた来るわ」
 「おお、行っといで」
 「ああ、待ってくれよ!」
 廊下を歩き始めた矢先、リッキーが俺の右肩上まで飛んできた
 「何だよ、お前も来んのかよ・・・」
 「いいじゃんか!城のこと、詳しくはなくとも大まかな構造ぐらいは把握してるぜ!道案内ぐらいはできると思う・・・」
 「そうだな・・・じゃ、適当に面白くて近くの場所を頼むわ」
 「オッケー!面白そうな場所だな!こっちだ!!」
 こうして、なんだかんだ言いつつ、俺の探索にリッキーも加わることとなったのだった・・・
 
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