カードゲームライトノベル Wカードフュージョン15話 戦獅との決着02
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「つつ・・・」
上着を脱いだ後、水で傷口を一通り洗い、清潔なガーゼを当て、包帯を巻いていく、
巻く箇所は背中含めた胴と裏側含めた右手首、
それと、一応、両足首前後に捻挫用の湿布を張り、足の下を支えるように足首から踵にかけて包帯を巻く、
「これでいいの?」
「ああ、とりあえずはこれでいいだろう」
ふむ、どうやら、痛みも引いてきたようだ、包帯巻くのにそこそこ時間かかったせいもあるだろうが・・・
「まったく、ああ、それと、チェンジ!」
パトカー状態のカーディンの前部が開き、両肩になりながら頭が出、額に付けたパトライトと羽を模したエンブレムがきらりと光りつつ
後ろの外装が両足を後ろに伸ばすように伸びて地に付けつつ上に跳び、腰部が180度回転、
そこで両肩から脇を閉めるように両腕が出現、タイヤの部分を外側に回すように両腕が周り、
胸の部分のX字のパトライトの下二つが振り子が上に上がるように内側に収納され、パーポーパーポーと音を出して光りながら着地、
いきなり変形してどうしたんだ・・・?
「これを渡すのを忘れていた」
と、カーディンが右手で何かを持って差し出してくる、それは白と黒の立方体で、中央のパトライトと羽のエンブレムが付いている、
これは、僕のデッキケース!
「ありがとう、カーディン」
言って、カーディンから受け取る、重さから察するに、カードもすべて回収し終わっているのだろう、まわりにカードが落ちている感じもしないし、
そのまま、ジャケットの左内ポケットに入れる、
よくよく考えれば、これは僕のじゃなくて借り物なんだっけ、便宜上、僕のにしているけど・・・
っと、そうだ!
周りを見渡すと、右手の方に転がっていた、四角い黒猫の顔のような長方体の物体、
上左右に中ピンクで外側は黒い猫耳が付いていて、後ろ下の方に黒猫の尻尾が付き、
中央少し上左右に黄色い目、その下に猫っ口が描かれ、まるで四角い黒猫の顔である、
急いで立ち上がってそれが落ちている場所まで走り、右手で拾い上げる、
これ、何かに使えないかな・・・他に回収すべきものは・・・
あ!僕の後ろの方に鉄片ぶつけて叩き落としたジョーカーの右手が!
それから・・・周りを見回しつつ考え・・・、っと、そうだ、さっき真っ二つになったジョーカーの本体は・・・
見ると、真っ二つになったジョーカーの向かって右手側にあり、なんと、そのジョーカーの左半身の中に、
さっきの猫が丸まって入り込み、呑気に眠っていた、緊張感のないやつである、
もっとも、どこかに行かれるよりはずっとましか・・・
そう思い直しつつ落ちているジョーカーの右手の方に走り僕の右の手でそれを回収、
真っ二つになったジョーカーの所に戻ってそいつの左手の方も同じ手で持って拾い上げ、
猫の入っていない右半身側にデッキケースと左手共々突っ込み、その上に猫が入った左半身側を猫が起きないようにゆっくりと慎重に乗せ、
両方一緒に抱え上げる
「カーディン!」
「わかっている!」
カーディンが車形態に変形する、
それじゃ・・・
助手席の後ろ側までゆっくりと歩いて行き、抱えた両手の右手指で車のドアノブを開け、中にあった食材と水を真っ二つのジョーカーで奥に押し込みながらジョーカー一式と猫を座席の上少し後部に置き、
猫が乗っている方を少し両の手で持ってあげつつ下の方を前部の方にずらして猫が入った方を同じ場所に置き、
ずらした方は・・・改めてこちら側にずらして置く、
そして、ドアを右手で、閉まりきるよう猫を起こさぬように慎重と勢いを持って閉め、
そのまま助手席の扉に左手をかけて開けつつ助手席に座り、右手でドアを閉めながら窓左肩奥そばにあるカギを押し込み、
その上のシートベルトを右の手で引き出して右腰の方の金具に入れて留める、
「カーディン、行こう!」
「うむ!」
「でも、この猫を起こさないように、走り出しは慎重にね!」
「ああ、わかってるさ!」
「それでは、レッツゴー!」
カーディンが螺旋に向かって走り出す、そして、そこにさし掛かったころ、螺旋端の板の段差のせいだろう、
少し固めの振動が来た後、左前輪の方に曲がり、螺旋内部を走り出す、
そして、暗いトンネルの様に床の中に入って行き、一周するころには螺旋外の床も下に抜け、下方の階の天井付近、ずいぶんと高い場所に出る、
その階下にあったのは、上の階とほとんど同じ構造の部屋で全体が黒く、前後左右に黒い金属の大きめの扉が付いている、
扉は左右対象につるが張り付いたようなデザインで、要は今までと一緒である、
そういえば、下にもぐって行ったあのガラス板、この部屋にはないな、もしかして地下まで潜って行ったんだろうか?
この螺旋も大きさからいって地下に潜ってたんだろうし、その可能性は高い気がする、
そうだ、ガラス板で思い出したけど・・・
チラリと後部座席の方を見る、
「ねぇ、カーディン、このジョーカーの残骸、変な信号とか出してないよね?」
「いや、出してないな、少なくとも私のセンサーには反応していない、そもそも、そんなものが出ていたら入れる前に注意している」
「そう、ならいいんだけど・・・」
カーディンはああ言ってくれてるし、取り越し苦労だと思うんだけど・・・
そのまま、カーディンは螺旋を下り、いつの間にか、道路に外に出るかまっすぐ進むかの分岐矢印の所まできていったん止まる
「双歩、どうする?」
ふむ・・・よし、
「このまま行くと地下に出そうだし、一旦降りて外に出よう」
「わかった」
カーディンが左手側に曲がり螺旋の外に出る、部屋の様子は、やはり、上と変わりがない、
違いといえば爆発跡が無い位か、もっとも、あれは一番ひどいのはジャルーソが投げた奴だが・・・と、外に出た所でカーディンが止まり
「では、この後は?」
試すように僕に訊いてくる、自己意志が無いのではなく、あくまで、僕の意見を尊重してくれているのだろう、なら・・・
「この螺旋、僕の方向感覚がぐるぐる回る間に狂ってなければ上の階と降りる場所と入る場所が一緒だったと思うんだけど?」
「私の方向感覚もぐるんぐるん回る間に狂ってなければ双歩と同意見だな」
それなら・・・
「ここまで、かなりの距離を外周から移動してきたはずだ、このまままっすぐ進んで、一旦、入口と中心部をつなぐ軸の方に行ってみる、っていうのはどう?」
「それならば、戦いの気配を感じたらどうすべきか様子を見る、というのでいいな?」
「うん、僕はそれでいいと思う」
「それでは、行こう!」
言って、カーディンは正面の扉まで走って停止、自身の両前ドアの下からそれぞれ補助アームを出し、
つるの模様の裏の扉の取っ手に手をかけ、扉を奥に開ける、
そこに広がっていたのは、縦横に走る通路!
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