マルチプルブレイドターンインフィニティ オブ トラジリィー 13
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「おお!アルフィエラス!!」 BGM:皇帝と玉座の部屋
たくさんの兵士が居並ぶ中、奥の方に高い階段の上にある白い玉座に座る男が一人、
オールバックの茶髪に豪快そうな顔立ち、纏うは顔のみ出した重厚なる黒の鎧に白の端ふさ付きの赤いローブ、
と、俺達が前進する中で、兵士たちが道を塞ごうと前に・・・ SE:驚き
「待て待て待て待て!」
出る前に男が後ろのしっかと立った白いひげの老人が心配する中で前傾姿勢で俺達の方まで駆けてきて、アルフィエラスさんをしっかりと見る
「とうとう妃になってくれるのか!?」
「そんなわけないだろ」
アルフィエラスさんの右足の裏が蹴りによって男の顔にめり込む・・・ SE:蹴り
そして、足裏より顔を離し
「ううう・・・じゃあなんなのだ・・・」
と、顔が痛みでか赤くなり、右手を覆うように当て涙目にすらなっている・・・
「これが・・・皇帝・・・様・・・?」
俺は、いや、アルフィエラスさんと皇帝陛下を除く周りの人々全員が呆気に取られていた・・・
イメージと違う・・・
当然だ、俺は隣国の長として、威厳を持って国を支配していると聞いていたし、
他の人達も多かれ少なかれ同じようなもんだろう・・・
「こいつは昔からこんな奴だぞ、情けなくて優柔不断で」
アルフィエラスさんの一言に、なおも唖然とする俺達・・・
「私の部下だった時代からな」
え・・・
「えぇええ~!?」
俺たち全員が驚きアルフィエラスさんに注目する
アルフィエラスさんの・・・部下ぁ!?
「元々、こいつは皇帝の継承権としては下から数えた方が早かったような奴だったんだ」
へ、へぇ~・・・
「後ろ盾の両親も早くに亡くしてな、どういうわけか特殊部隊に入って、私の部下になった」
そういえば、アルフィエラスさん、特殊部隊の隊長だったって・・・
「ところが、その後、毎代毎代の皇帝の継承権争いで上位の奴らが軒並み死んで、こいつが皇帝になったってわけだ」
ああ・・・その話は俺も聞いたことがある・・・
皇位の継承権争いは毎回毎回熾烈を極め、半分以上が死亡することもざらだとか・・・
だからこそ、威厳ある皇帝陛下を想像してたのだが・・・
と、その皇帝陛下が痛みでか顔を右手で押さえ涙目のまま片目をつぶりアルフィエラスさんを見て
「では、なんの用でここまで来たんだ・・・」
「言ったろ、最後の別れ際に、お前が間違ったことをした時は力ずくでも正してやるってな・・・」
「私が何をしたと・・・」
「王国との戦争を即刻停止しろ」 SE:驚き
皇帝陛下の目が見開かれる、が、姿勢を伸ばすとともにアルフィエラスさんの方を正面に見据え直し
「それは出来ん!最初に戦線を開いてきたのはあちらだ!帝国を守るため、ここで引くわけにはいかん!」
アルフィエラスさんは引かず変わらず真正面に見据え返している
「つまり、お前は本当の発端を知らないわけだな?今の特殊部隊の隊長は誰だ?」
「特殊部隊?それが何の関係が・・・」
「まったく・・・皆さん何をしているのです・・・」 SE:驚き
と、聞こえた声は見知ったものだった・・・
後ろの出入り口の方を振り返ると、そこにいたのは、目とその周辺を出すように白い布で覆った顔と頭、その肌は日に焼けたように黒く、髭を長く伸ばしている・・・
フォビドンで別れたディバーソンルさんだ、
思わず俺は大声を出していた
「ディバーソンルさん!?どうしてここに!?」
ディバーソンルさんは少しあきれたように目端を下げ俺を見る
「言ったでしょう、戦争を止めるって、皇帝陛下に和平を申し入れに来たのですよ・・・」
「和平だと!?」
途端に皇帝陛下が姿勢を伸ばし、威圧的な空気を纏いディバーソンルさんを見据える
「王国の者か!?それともフォビドンの」
言われてディバーソンルさんも皇帝を見返す
「フォビドンの者です、しかし、今は王国の使者でもある・・・」
ディバーソンルさんはゆっくりと皇帝陛下に頭を下げた・・・
「ディバーソンルと申します、今回は、王国より、和平の申し入れを頼まれ、ここに参りました・・・」
「兵士たちは何をしているか!」
「みんな伸びてましたよ、そこの方々にやられてね・・・」
ディバーソンルさんはそう言って俺達に目線を向けた
あははは・・・
思わず苦笑いしてしまう俺達・・・
「王国が和平などと、何を考えているのだ!?フォビドンの加勢で、
そちらが優勢ではないか!」 SE:驚き
「な、なんだって!?」
思わずディバーソンルさんを見る、戦争には加担しないってこの人の上司のフィローゲルさんも言ってたはず!!
そんな加勢ってことは戦線を大きく・・・
俺は思わず右こぶしを強く握る、が、俺の心境を見透かしたように頭を下げたままのディバーソンルさんの視線が俺に向き
「クルーダ君、気持ちはわかります、しかし、これもこの状況に持ってくるためのもの・・・フィローゲル様がおっしゃったでしょう、戦争は簡単には止められないと・・・」
ぐ・・・
「フィローゲル・・・フォビドンの長か」
俺が押し黙る中でも皇帝陛下は話を続ける、ディバーソンルさんも応じるように目線を放し頭を下げたまま
「それに、テンブレンの国王陛下の命でもあります、皇帝陛下、戦争の発端はご存じで?」
「王国が突如、戦線を開いてきた、我らはそれに応じたまでのこと!」
「それは違います、王国の国境付近の村の一つを、帝国の特殊部隊が突如占拠しました、それを取り返そうと王国が兵士を派遣したのが発端なのです」
「何だと!?そんな話聞いていないぞ!!」
「誰かが故意に捻じ曲げて伝えたのでしょう、皇帝陛下、王国側はこの特殊部隊の身柄の引き渡しに応じれば、今回の件より手を引き、これまで通り領境も元通りにすると、主張しています、こちらに」
そう言って、ディバーソンルが巻物式の手紙を取り出し差し出し、皇帝陛下に渡す
皇帝陛下は受け取り開き中を見て、仕舞い直す
その表情は威厳を保ちつつもどこか納得のいく表情だった・・・
「確かに、王国国王のサインとフィローゲルのサインである、書いてあることもその通り・・・」
「元の部下を引き渡すのは心苦しいが、全て帝国の落ち度だ、致し方あるまい、そうだろう?」
「う・・・うむ・・・」
アルフィエラスさんの言葉に、皇帝陛下はゆっくりとうなずいた・・・
「さて、再度訊こうか、特殊部隊の隊長は誰だ?」
「・・・コウという男だ、数素武具の扱いが優秀で・・・」
「それだけで隊長に任命しているわけではあるまい、指揮能力は?それとも後ろ盾がいたか?」
アルフィエラスさんの再度の質問に皇帝陛下はアルフィエラスさんの方を見る
「あの男は数年前に帝都を襲った異常動物を兵士たちが苦戦する中で見事に打ち倒した一団の一人だぞ?」
「では、そのリーダーは・・・?」
「私だよ」 BGM:我の名はダイガ
と、力強さと老獪さを併せ持つ声を発した皇帝の玉座の後ろにいた老人が、皆が注目する中で階段よりゆったりと降りてくる、
やせ型で後ろに回した髪はすでに白く、優しげな雰囲気を漂わせ、上下二段式の青緑縁のローブをその身にまとっている・・・
「ダイガ!どういうことだ!?」
「あいつは・・・?」
「異常動物の撃退後、新技術の研究により我が国を支えてきた男だ・・・」
「その通り・・・」
「ダイガ!功績に免じ、正直に話すというのなら死刑は免れさせてやるぞ?」
「笑止!」
ダイガが両腕両手を優美に大きく広げ
「私は貴様らなどに捕らえられる存在ではない!」
「ならば仕方あるまい・・・」
と皇帝が右手を大きく前に出す!
「捕らえろ!!」
「・・・少し待ち合わせをしていてね、致し方なし、相手をしてやろう!!」
兵士たちがダイガに向かって行く!
「はぁあ!」
名も知らぬ兵士の剣がダイガに振り下ろされる!
しかし、ダイガはその背に剣をかすらせるようにして避けると、その裏拳を兵士の顔に叩きつけ、吹き飛ばす!
「がはぁ!!」
続けて背より振り下ろされる剣も体を一気に回して真剣白刃取り!そのまま刃を上に開放すると、両掌を叩きつけ、その兵士を吹き飛ばし、
「ぐふぅ!!」
さらに、左手側より横ぶりに振り回された剣をその左拳で上に跳ね上げ、右手の平を兵士に叩きつけ吹っ飛ばした!
「げはあっ!」
つ・・・強い・・・!数素武具も無いのに・・・
「何をしている!囲んで一気に同時に叩け!!」
ダイガの周りを兵士が囲み、剣が、槍が、一気に突き込まれる!
ダイガは動かず仁王立ちのまま、刃が、穂先が、ダイガを斬り裂き、貫・・・かない!?
なんと、そのすべてがダイガの体に弾かれ、滑り、剣と槍がダイガの体を取り囲むような形に・・・
身にまとったローブは切れているのだが、中身の身体は一切傷がついておらず、白い肌をさらすばかり・・・
「な・・・」
皆が目を見開き驚愕する中、
「その程度か・・・」
ダイガが呆れたような声を出し・・・
「ぬぅおおおおお!!」
一気にダイガの体の筋肉が大増量し、気合の一閃は上半身のローブと共に周りの兵士もすべて吹き飛ばした!
「数素武具が手に持つ物のみと誰が決めた・・・」
そして、その筋骨たくましい背を見せてくる・・・
その背一杯には、白と黒の二匹の魚が円を描くように絡む紋章に、
そこに赤縁と黒縁が八角形を描くように囲んでいく何かが・・・
まさか・・・あれが
「これぞ我が数素武具、進化を続ける紋章、八角の陣なり!!」
「数素武具使いだっただと・・・!?」
「どけ、私達がやる」
「行きます!」
俺は剣を抜き放ち、兵士たちが引く中で一気に前に出る!
「来い!若造!!」
タイガが叩きつけてくる右こぶしを盾で防ぎつつ剣で斬り込むとそれを右手人差し指と中指で掴んで上に開放し、
俺がそれに取られている間に左拳を腹に叩きつけてきた!
吹っ飛ばされる俺と入れ替わるようにジンガさんが走り込み、大剣を叩きつけるも、今度は前胴を刃にかすらせるように躱し、裏拳を叩き込んでくる
「おっと!」 螺旋よ、其が回るは熱のため!
咄嗟に後ろにかわし避けるジンガさん、しかし、続けて一歩踏み込みながら打ち込んできた両手掌底は躱せず
「がはっ!」 空気も大地もあだなすものも
そこに入り込んでくるリリサ!
「爆発権藩音!」 ズィイイイイイイ!!
爆音に一瞬動きが止まるも、容赦なく左手掌底をリリサに打ち込む!
「くっ!」 すべて巻き込み焼き焦がせ!!
「フレイムスパイラル!!」 ボォオォオオオオ・・・!!
地よりの炎のらせんがダイガを巻き込み、
終わり際にアルフィエラスさんは六本もの矢を連続で解き放っていくがその身体を焦がしたり傷つけることはかなわない!
「くそ!化け物かこいつ!?」
「き・・・効かないなんて!」
「ま、まだだ!」
アルフィエラスさんとマユーカが戸惑い引く中で俺は再度斬り込んでいく!
「ダイガさま!ついに見つけました!」
今のは・・・コウの声・・・!?
声が聞こえた入口の方を見ると、
そこには、黒き鎧のコウ、スロットマシン背負うロサミ、半人形のエーラーン、それに・・・
「あれは・・・王国のアイレス騎士団長!?」
そう、銀の鎧に黒い楕円の盾と騎士剣を持つ騎士団長!?
「手が足りなかったのでね、手伝ってもらったのだよ、」
タイガの声に思わずそちらを見る
「まさか・・・お前達全員仲間・・・!?」
「その通り!!これぞ五芒星!!」
ダイガが大仰しく声を上げる
そうだったのか・・・!
「陣の力により、認められた数素武具の数字と能力
をも進化させることの出来た存在よ!!」 SE:豪笑い
「ダイガさま!これを」
コウがダイガに金色の輝きを放つ何かを放り投げ、ダイガが右手を上げ受け取る・・・
そして、悠然と眼前にそれを持ってきて納得したように口を縦に開く
「おお、まさしくこれは・・・12の鍵!」
「12の鍵だと!?」
確かに、ダイガの手の平の中には12の形をした金色の物体が・・・
「12の鍵だって・・・!?」
「12の鍵っていうのはな・・・」
アルフィエラスさん!?
「この帝国が古代より続いている正統ある国家であるという証明のような秘宝だ、太古の国家より引き継いだそれは、時に皇帝の命より優先される、上層部しかその存在を知らず、厳重に保管されているものだ、だが、それを何故奴らが・・・」
突如、タイガが引き笑う!
「くくく・・・このために戦争を引き起こしたのだ・・・」
「なに!?」
思わず俺は声を上げていた
「戦争が起これば、それにより人員を割かざるを得なくなり、帝都の警備は手薄になる・・・」
なんだと・・・俺は慟哭して再び口を開いていた
「そんなことのために、戦争を引き起こしてたくさんの人の命を散らさせたのか!?」
が、タイガは屈せずに俺を見て
「そんなこと?この鍵を手に入れることこそ、この世を変えるために必要なことなのだ!!」
タイガが大きく両端に開いた両腕の、右手の12の鍵が光る・・・
「だけど、その12の鍵だけあって一体何ができるっていうんだ!?」
「これだけではないさ・・・メイダ!!」
輝きの星よ・・・今こそ我が意思に従い・・・瞬け!
「スターシャイン・・・」 キラキラキラ・・・ドゴーン!ドゴーン!ドゴーン!
メイダの呼び出した星が・・・俺達を襲う!
俺達は思わぬ不意打ちに、全員が天を仰ぎ地に伏せる・・・
「メイダ・・・なんで・・・」
「そいつらの鍵を奪ってこい!」
「はい・・・」
メイダが天仰ぐ俺のポーチの中を探り、
1~10の鍵を持っていく・・・ メイダに鍵を奪われました
メイダがカギを持っていき、ダイガに渡す
メイダの顔はうつむいたまま・・・
「だけど、まだ11・・・」
タイガがメイダを見下ろしている
「11の鍵のことか?それならここにあるぞ・・・!」
ジンガがポケットより11の形をした鍵を取り出しメイダに見せる・・・!
「時計のあった村に厳重に保管されていたのを奪ってきたのだ!」
そんな・・・俺の村に・・・あったのか・・・
「これで12の鍵が揃った!!」
「・・・ヒール・・・スコール!!」 ドン!
この声は・・・アルフィエラスさん!?
アルフィエラスさんが真上に上げたボウガンから緑色の光が上に飛び出し、それが広がる雲となって雨となって周りに広がる
体に活力が戻ってくる!
「だが、もう遅い!!」
タイガ達が出入り口に向かって走り、
立ち上がった一気にジンガさんが行く手を阻むように駆け、タイガ達の方に行く!
しかし、俺がなんとか立ち上がったころにはすでにタイガ達は扉の外に・・・
「くそ!待て!!」
俺達も追って走り出す!!
「待ってくれ、アルフィエラス!」
「先に行け!」
俺達は走っていく・・・
「・・・最後に一つ聞いていいか?・・・アリファは元気か?」
「知っているくせに・・・お前が送ってくれた見張り、元気に働いているぞ?」
「お前の口から聞きたい・・・」
「・・・元気だよ・・・」
「そうか・・・」
「だが、お前もお前だな、もう妃の心配などしなくていいだろう?甥っ子がいるのだろう?」
「それは・・・そうなのだがな・・・私は、いつまでも・・・」
「・・・考えるのはこの騒動が終わった後だ、それに言っただろう、私は自由の無い皇妃などご免だとな・・・それに、この皇室は血なまぐさすぎる・・・」
「・・・わかった、だが、待っているぞ・・・」
「期待には応えられないかもしれないけどな・・・じゃあな!!」
そう言ってアルフィエラスさんが追い付いてくる・・・
「あいつは・・・弟がいるんだ・・・」
走る中で話しかけてきた、俺は思わずそちらを見て答える
「弟?」
「後ろ盾を失った後、あいつは他の候補者から弟の命を守るため、他の候補者の命令を受け、弟の命と引き換えに、命を賭けて国のために仕事をすると誓った・・・」
へぇ・・・
「それでその後、私と知り合って、色々あって、あいつは・・・皇帝になった・・・皇帝になったのも、弟を守るためだ、ここの皇室は帝国になった後も色々降りかかるからな・・・」
「・・・」
「その後、その弟に息子が生まれて、今もあいつは、愛するものを守るために戦っている・・・」
アルフィエラスさんは表情を変えなくても、どこか心配しているように見える・・・
「ああ見えて、責任感が強くて、愛する者から降りかかる危機を全力で守っているんだ・・・」
「あ・・・」
「ふっ、」アルフィエラスさん一瞬だけ眼を閉じが自嘲気味に笑い「何を語っているんだ私は・・・忘れてくれ、じゃ、行くぞ!」
・・・俺たちは、五芒星とメイダを追い、駆けていく・・・
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