カードゲームライトノベル Wカードフュージョン17話 メインサーバーの元、現れしエンジニア4
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「あ・・・」
降りてきたおっとりとした雰囲気の少女、左半身側が黒で右半身側が白の、瞳とロングストレートヘアーを持ち、今は緑のスリッパに薄青い病院着を着て、左胸に金縁黒で関の字が作られたバッチを付けている
そう、芽工 映命(めく みつと)さん!
映命さんがゆっくりとこちらを向き
「双歩さん!」
「映命さん!?」
映命さんが僕に駆け寄り、いきなり両腕を首に回して抱きついてきた!
「映命さん、どうして、こんなところに・・・」
「それは、こちらのセリフですわ・・・私に、何も言わないでこんなところまで・・・」
「う・・・それは・・・」
言っても言わなくても、僕はここまできた・・・それなら、心配かけない方がいいと思ったんだけど・・・
「背中から、血まで流して・・・」
「血・・・?ああ、開いちゃったのか・・・傷口・・・」
ジョーカーとの戦いの時に受けた傷だろう、開いたのは、レオン君と戦った時に背中を打ったからあの時か?それとも他の時か?大方その辺りだろうが・・・心当たりが多すぎるな・・・
「もう・・・こんなことしないでください・・・傷つかないで・・・」
映命さんの両腕に、より強い力がこもる、思わず、僕も抱き返してしまった・・・
「さて・・・我の前に現れたということは、我の望む答えを持ってきてくれたという事かな?ミエーリ・ミターレスタカーン」
「何度も言うが、私はあの二人の意見など知らない」
今度は、僕達のそばでガイキシンとエルドガンが向かい合い、何事かを話し始める
「まだしらを切るというのか?我の製造理由が無い、などと・・・」
「そうだ」
製造理由が・・・無い!?どういう事だろう・・・
「あの二人が理由なく作ったというのなら、それ以上、あの二人が私に話すことは無いだろう」
「製造理由が無いということは、生きる理由が無いということ・・・」
カーディンがかすかに口ずさむ
「我があの男を追い詰め、問い詰め、殺した時、あろうことか、あの男は、自身が死んだとき、自身の研究データの入ったサーバーをすべて破壊するように仕込んでいた」
サーバー・・・?まさか、あの見張りが入ってなかった部屋か!?じゃあ、あの部屋のボロボロだったのはガイキシンが・・・
「メインサーバにアクセスしても情報は出てこなかった・・・」
「ま、メインサーバは気まぐれだからな、欲しい情報が手に入るとは限らない・・・ましてや、死んだ人間の情報なら・・・」
そういや、そんな話も聞いたなぁ・・・よく考えると、あれに頼るのは元々危なかったのでは・・・それに、死んだ人間の情報が手に入りづらいっぽいこと言ってんだけど、どういうことだ・・・
「ようやく、貴様らしい人物がいるとジョーカーから報告を受け、捕らえてみても、我の欲しい情報一つ持っていないとは・・・」
「そのかわり、技術情報を提供したじゃないか、360度銃で囲まれ脅されてな、そちらの奴らは平気だろうけど・・・」
なぜかチラリと僕の方を見る、僕だってそんな状況でどうにかできるわけじゃない、僕がどうにか生き残れてきたのはカーディンいてこそである
それに、技術情報って、僕達の使ってる新システムのことだろうか、レオン君やジョーカーも使ってたし、間違いないと思うんだけど・・・
「だが・・・もうすでに、貴様を生かす価値などない・・・」
「お前の製造理由を知ってどうする気だ?人間に翻意するとでもいうのか?」
「まさか・・・いかなる理由であれ、我が仲間達を放って置くわけが無かろう・・・」
理由・・・!
「製造理由なんて・・・」
「双歩さん・・・?」
おもわず、映命さんから離れ、ガイキシンの方を見据える
「製造理由なんてそんなもの、人間だって理由があって作られたばかりじゃ無い!」
「だが、人間は、本能が生きる意味を教えてくれるだろう」
「本能に教えられることが、個人の人生の目的になるわけ無いじゃない!!そんなものは種の保存のためにあるに過ぎない!!それが目的であっても、きっかけでしかない!!本当の人生の目的は、自分で見つけるしかないんだ!!そして、きっかけは、本能でなくても構わない!!」
「双歩の言う通りだ!作られた理由は数あるきっかけの一つに過ぎない!」
「そうだな・・・生きる理由は結局、自分で見つけるしかない、ならば、我もその域に到達して見せよう、生まれた理由無き域に、我が新たなる思考と共に、到達して見せよう・・・っ!!ぞ!!」
一瞬の戸惑いの後、新たに決意の輝きが増す
「双歩さん、そこまで・・・また、離されてしまいましたね、でも、すぐに追いつきます!」
「・・・」
ガイキシンがこちらを黙って見据える
僕は、決意を込め、もう一度、問いかける・・・!
「ガイキシン!どうするの!?僕たちの願いは一つだ!」
「我の願いも変わらん!貴様の言う通り、仲間たちの安寧を願うことが我の願いだ!!」
「でも、それは!?」
「我の考えは変わらん!その未来が欲しいなら、我と戦って、勝ち取って見よ!!」
「どうやら、議論は平行線、だな・・・」
エルドガンが僕達の方に振り返り、走ってくる
「私達は退避する、出来れば、元の場所まで・・・」
元の場所までって・・・まさか、門!?思わずエルドガンの方を見据え
「退避って・・・大丈夫!?戻れる!?」
「ここは私の家みたいなもんだ、あいつらに見つからない方法ならいくらでもある、この時のためにいくつか発明品も作ってきたしな・・・」
「時間は?」
「大体、三時間ってとこか、それだけあれば門の所まで戻れるだろ、映命、借りてくぞ」
「お願いします」
「あ・・・」
戸惑うような声が後ろの方から聞こえた、振り返ると、映命さんが眉を下に曲げた不安そうな表情をして僕を見ている、おそらく、心配しているのだろう、多分、僕を・・・
思わず、映命さんの方に近づき、両手を握り、互いに合わせる
「ごめんね、あともう少しだから、これが終わったら、すぐに帰るよ・・・」
「双歩さん・・・」
映命さんが僕をまっすぐに見据えている、その両目に、涙まで溜めながら・・・
「大丈夫、すぐに戻るよ!」
笑顔ではなく、自信に満ちた表情を、見せるっ!!
「双歩さん・・・」
「さ、とっとと行くぞ」
僕が両手を離すと、映命さんの左手をエルドガンが取り、向こうに駆け出していく
「で、ですが・・・」
「馬鹿っ!足手まといになりたいのか!!」
エルドガンの一喝とにらみに、映命さんの動きが止まる
「お前がここから離れれば、勝てる確率が上がる、離れなければ下がる、ただそれだけの事だ」
「・・・わ、わかりました・・・双歩さんに迷惑はかけられません・・・」
映命さんがエルドガンに連れられ走って行く、と、僕の方に不意に顔を向け
「絶対、生きて帰ってきてくださいね!」
「わかってる!!」
そして、僕達の視界の外まで、走り去って行った・・・
さて・・・
「三時間・・・か・・・、一段落したら、一旦確認に門まで走り込んでもいいしね・・・」
さっきの見切りには、アリスの受け売りも、レオン君やナユタさんを見て受けた部分も大分に入ってるけど・・・
にしても・・・
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