到着!魔道都市マジカラ!! ダブモン!!5話/09
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街中-3
金の髪の少年がこちらに駆け寄り、カンテーラとウィルピーを輝いた蒼眼で凝視する
「本物・・・だよね!?」
「俺らのニセモノがいるかっつーの」
「ですね」
何なんだこいつ、カンテーラとウィルピーがそんなに珍しいのか?
「ねぇねぇ、僕と一緒に来ない?三食昼寝付きで」
「いや、俺はこいつらのおもりがあるから」
「私も、四葉さんが無茶しないように見張ってないと・・・」「どういう意味よ・・・」
「そっかぁ・・・残念・・・」
本当に残念そうにうなだれる、
「なぁ、カンテーラとウィルピーになんでそんなに興味があるんだよ?」
俺の素朴な質問に、そいつはこの二体のそばにいるのに知らないのかとでも言いたげな驚きの目を向けてくる
「知らないの!?カンテーラとウィルピーってかなり珍しいんだよ!?もう姿を現さなくなって何年にもなるって・・・」
そんなに珍しいのかよ・・・
「実際に、出生数が少ないダブモン達だし、特殊な能力や強い力のあるダブモンは、そこに力を使いすぎて、繁殖力が少ないって話もあるし・・・彼らには云われもあるし・・・」
「いわれ?」
なんなんだ・・・?
考えすぎで下に向けていた視線を再び俺に向けてくる少年
「そうそう、伝説みたいなもんだよ、例えば、カンテーラには望む場所に必ず連れて行ってくれるっていう伝説があるんだ」
「へー」「はー」「ほー」
「ふ~ん」
「何その気の抜けた顔・・・信じてないでしょ・・・」
思わず布と闇の塊のカンテーラを見る、こいつがねぇ・・・そんな感じには見えんのだけど・・・確かに、案内屋とは名乗ってたが、そこまで言われるもんかね・・・?
と、カンテーラがそいつを見据え、
「一応言っておくぞ、俺達にそんな特殊能力は無い」
否定するような言葉に、思わずカンテーラを凝視する少年
「えっ、でも・・・」
「多分だけどな・・・その伝説は、」少年を諭すように右手を振り出すカンテーラ「カンテーラ達のたゆまない努力によってそういう話ができただけだと俺は思う」
「そうなのかな・・・ああ、でも、ううん、ええい!もう別の話に移す!!」
悩んだ末に放棄しやがった・・・
少年は今度はウィルピーに視線を向け、
「それに、ウィルピー種は、その一体が裁定の剣を打ったって、伝説もあるんだ!」
「はぁ・・・そうですか・・・」
今度は視線を向けられた当人のウィルピーが気の抜けた呆れ顔になる
「でも、実際、私、鍛冶とかしたことないですよ、背中の道具だって生まれつき持ってるものですし・・・」
「その体の道具はダブモンみんな持ってる物だしな、俺もカンテラを気が付いたら持ってた」
「そうなのか?」
カンテーラがカンテラを少し降り回しながら話し出す・・・
「霊的な繋がりの側面のある体の一部なんだよ、人間の作るものの方が性能が良いから、そういうやつを持ってる時は手放そうって気になるけど、基本的にはずっと持ってる、手放してしばらくたてば消えちゃうし、一回に一個しか現出できない、その代り、劣化とかも基本しないし、壊れても時間が経てば治る、あと、基本的にダブモンの力がこもった物だから、人間が見ても気配とかそういうのがあるのかこれはダブモンの一部だとすぐにわかる、余程抜けてたりはしない限りはな、そういう悪だくみをたくらんだ奴がいたらしい、あまり遠くなければレンタルとかはできるかもしれんが・・・」
へぇ~、取り外しのできる髪の毛とか爪とかそんな感じかもしれん・・・
「そういや、カードにそういうこと書いてあったわねぇ・・・」
唐突に四葉が話し出した
「カードって・・・」こちらは驚き四葉を見る少年A「ウィルピー種のカードかい!?」
四葉が少し引きながら口を動かす「そうよ」
「そんな馬鹿な・・・」またも考えで視線を逸らしていく少年A「ウィルピー種のカードにそのような記述は無い・・・」そして視線を勢いよく四葉に戻し叫び出す少年A「見せてもらってもいい!?」
「いいけど・・・返してね・・・」
四葉がサッとスカートからデッキケースを取り出すと、ふたを開け、その中のカードの一枚を取り出す
「ほい」
それをそいつは受け取ってまじまじと見つめ・・・
「ウィルピー・シン!?バカな・・・これはウィルピー種のオーバー・・・それも、見たことないタイプのオーバーじゃないか!?」四葉に顔を振り直す「どこで手に入れたの!?」
「いや・・・デッキケースに勝手に入ってたけど・・・」
「ウィルピー種と一緒にいることで生成されたのか・・・!?」
「それよりも、早くカード返してほしいんだけど・・・」
「あ・・・はい・・・」
そいつはこともなげに四葉にカードを返し、四葉はデッキケースにカードを入れ、デッキケースも元に戻す
「そうだ!何かと交換!?極秘ルートで仕入れたカードと交換を」
「いや」
「う・・・」
あからさまに嫌そうな顔して放った四葉の言葉にたじろぐそいつ、
「うぅ・・・なら、少しでも様子を見せてよ、そうだ、この街には来たばかり?」
「そうだけど・・・」
「そうだよな」
「そうだ」
「そう」
「じゃあ、少し案内させてよ、昨日来たばかりだけど、少しは詳しいんだ、僕の名前はアクリス、見聞を広めるために旅をしているんだ」
「俺は双運 良星」
「俺は稲走 兎白」
「僕は海象 鼓動」
「私は蜜羽 四葉」
「俺はカンテーラでいい」
「ウィルピーといいますです」
と、アクリスは人懐っこい笑顔となり、
「よろしく、みなさん、それじゃ、街を歩いてみましょうか!」
そう言って、向こうを向いて歩き出したのだった・・・
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