マシーナリーオブアイドル 11
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「私の初めてのラジオ番組だーっ!!週1のレギュラー番組だぞーっ!!ゲストはこの人!!」
「どうも!!」
凛とした声がフローリングのような木造りのスタジオに響く
「なんとなんと、私の事務所の大先輩なんです!!」
「大はやめて」
切れ長の目に切りっぱなしのボブカットを持つ、可愛げのある大人の顔に作り笑いが浮かべられる
「そうなんですか大先輩!!」
「大はやめて」
先輩が先程の言葉を繰り返す・・・
私と向かい合い同じタイプのパイプ椅子に座る青のセーターに合わせたような長い青のプリーツスカートに黒タイツを纏った大先輩・・・
「そうですね大はやめて先輩」
「そうそう、それでいいのよ~」
机の上の先輩側の机上スタンドマイクに少し怖い声が通る・・・
「で、先輩、事前の質問応募でもっと私のことを紹介してください!っていう意見が多かったみたいなんですけど・・・本当にそんなんでいいんですかね?」
「いいんじゃない?あなたが今一番勢いのある子だもの」
先輩が優し気な笑みを浮かべる
「いえいえそんな~」
「デレデレしたこの顔、いや~ラジオじゃ見せられないのは惜しいな~」
「そんなそんな~」
「そろそろ仕事に戻ろっか」
「あ、はい」
思わず真顔に戻る
「にしても、あなたが入ってからもう2年近く?よくもまぁここまで来たわよね~」
「そうですか?」
「うちの事務所じゃ滅多にね、仕事もぎっちりは言ってるでしょ?歌番組にバラエティにライブに、もちろん、こういったラジオも・・・」
「いやぁ、あはは・・・」
思わず苦笑する
「最初に入った時はただ元気が有り余ってる子って印象しかなかったのに・・・」
「そうなんですか?って、私って先輩とそんな時期に会ってましたかね?」
「いんや、何だったらこの番組の打ち合わせが初対面じゃなかったかしら?」
「おい、私が初めましてって言ったその通りだったじゃねぇか!!」
先輩が大きく笑う
「あはは、でも話には聞いてたのよ~元気の良い子だって、後、ば」
「今、馬鹿って言おうとしたろ馬鹿って」
先輩は眉を少しひそめた困ったそうな笑顔を浮かべ
「馬鹿力とかじゃダメかしら?」
「ごまかせないに決まってるでしょ、まったく、それじゃ、そろそろ曲に行きま~す!曲は・・・」
そうして、曲がかかる、その間はラジオに音声は入んないのでその間に訊きたいことを訊いておこう
「あの、先輩」
「ん?なあに?」
私を疑問系か少し首を斜めにし正面から見る先輩
「あの、恋條知華、って会ったことありますか?」
「あるけど、どしたの?」
目をきょとんと少し見開いた少々の戸惑い顔
「恋條知華さんって、人に嫌がらせとかしますか?」
先輩はすこし口を縦に開き
「ええ~そんな話聞いたことないけどなぁ?あんな表裏の無い人いないいない」
「そ・・・そうなんですか?」
「そうよ~優しくて、カリスマ性あって、歌や踊りもうまくて・・・いや、むしろ・・・」
「なんです?」
先輩私から目をそらしつつ横目で私をなぜか訝しげに見る
「なんでもない」
「そうですか・・・」
そんな話の中、曲が終わる、
一体、何を思ったのだろうか・・・?
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