月夜と私の過去と光の城 ダブモン!!4話05
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「運んで来たぞ」
が、焚火を見て昔を懐かしむ時間はすぐに終わりを告げた、
「じゃあ、それを火にかけてくれ、あ、これがいるか・・・」
良星が包丁を置いて袋から取りだしたのは輪っかに折り畳みの足が付いた脚付き大きめ五徳、
それをささっと足を広げ、焚き火に置く
「了解」
その上にカンテーラは水が入っているであろう鍋を置く
「後で飲み水なんかの補給にも行ってくれ」
「へいへい」
そう言って、カンテーラが鍋の見張りに戻る、
呆然とする中で、鍋の中の水が泡立って行く、とカンテーラが少し鍋に顔を寄せ
「もうそろそろ具材入れたらどうだ?」
「そうだな、兎白?」
「わかってる、そろそろ入れようか」
「そうだね!!」
三人が肉、魚、野菜の具材を入れ、兎白がお玉で鍋の中をかき混ぜながら一煮立ち、お玉を上げて中の液体を金属の皿に移し、少し飲む、
「これならこのくらいか・・・」
取った小瓶の塩を振りいれ、かき混ぜ・・・再度同じように液体を移して味見し、
「おし、出来た!!各自に皿とスプーンを渡すから、」
「何を作ったのよ」
「スープさ」
「スープぅ?」
「しゃーねーだろ、」良星が口を挟み「こっちでのレシピ、手に入れるの忘れてたんだから・・・」兎白を擁護する
「見たことない食材がいくつかあって、」今度は鼓動だ「一応、見たことある食材を優先的に買ったけど・・・」
「・・・まぁ、今回はそれでいいわよ、ありがとう、三人とも・・・」
さすがに、私も折らざるを得なかった
袋から良星と鼓動が六対の皿とスプーンを配り・・・
「箸とか、いるか?焚き木から削るけど?」
「いい、それよか、パン、買ってなかった?」
「あ、そうそう、そうだった」
良星が、袋からパンの四角い塊を取り出す、
「どの位の厚さ?」
「普通」「同じく」
「私も」
「俺もだ」
「私しも」
「みんな同じかよ、じゃ、節約気味に・・・」
パチパチと焚き木がはぜる中で、良星が包丁でまな板代わりの板の上に置いたパン斤を切る、まず、正方形に近いものを、二分の一にしてそこから一方を六等分、
そして、別の皿を六つ出し、そこに切ったパンを乗せつつ一つずつそれぞれに配り切った
その中で、兎白が素手でパンを持ち、軽く焚き火でパンをあぶる
「何してんのよ?」
「こうしたほうがおいしいだろ?」
「僕もやる~」「俺も~」
「俺も・・・」
「僭越ながら私しも・・・」
「はぁ・・・しょうがない・・・」
私も焚き火でパンをあぶり、
「いただきます」
私と共に皆が一言言って、パンにかじりつく、
焼き目の軽快な音、硬めで甘味塩味が皆無だ、
スープは・・・空虚な気持ちのせいか、あんまりおいしいとは思えなかった
そうして、私達は食事を取り、買っておいた寝袋、といっても布を二枚合わせた程度のものだが、
を各々引いて中に入り眠りにつく、焚き火とまわりの見張りを買って出たのはカンテーラとウィルピーだ、
が、良星が寝際にカンテーラに
「眠くなったら起こせよ」
「夜は俺の領域だぜ?心配いらねーよ
「それでも万が一ってこともあるだろ、お前だって寝ないわけじゃないんだから・・・」
「へぃへぃ・・・」
そんなことを言って話していたが、あの様子だと、ウィルピー以外に頼みそうにはないなこりゃ・・・
・・・そうやって、私達はそれぞれ眠りについた・・・はずだった・・・
しかし、思い出した昔の記憶は、私を易々とは眠らせてはくれなかった・・・
仕方無しに体を起こす
「どうかしましたか?」
「・・・夜風に当たるわ・・・」
確か、あっちの方に水場があったはずよね・・・
眠れない時、少しベランダに出る、そんな感覚で、私はさっきカンテーラが水を汲みに行った方向に向かって歩き出した、
「カンテーラさん、少し出かけます」
「あまり遠くに行くなよ」
あの様子だと、ウィルピー、ついてくるみたいだ、
まったく、心配性なんだから・・・
とはいえ、見知らぬ土地で夜中に外で一人になろうとしていた私もうかつではあるのだが・・・
茂みをいくつか抜けると、そこには満月を写す静寂の湖が存在した、
広くてきれい・・・
水源もあると言っていたが、右手の方に小さな川が見える、あの先に水源があるのだろう・・・
夜風が気持ち良い、適度に水分を含み、涼しい風となっている、
自然と口が歌を紡ぎだす、家にいたころは、ベランダで、音量を抑えるマスクをして歌っていたっけ・・・
「いざ~よいの~」
お気に入りのローテンションの曲、ハイテンションの曲もあるがこの状況なら、この曲が合う、
「つきの~みもと~まんげつが~わたしを~むかえ~に~まって~います~あなたが~」
「その歌、風鳥 歌語理の・・・」
振り返ると良星がいた、申し訳なさそうに後ろ頭をかく
「すまん、のぞくつもりは・・・」
そう、この歌は、風鳥 歌語理の曲、彼女がのこした・・・
「う・・・あ・・・」
だめ、だめ、だめ、ここに来る前の記憶が、あふれてくる
零れ落ちてくる涙を必死にこらえ、思わず頭を抱えうずくまる
「あ・・・ああ・・・ああああああああ~!!」
思い出すな、思い出すな、思い出すな、
彼女の姿が目に写る、あの人は、あんな姿になって・・・でも、私は何も・・・なんであなたが・・・
歌語理さん!!
「私は・・・私は・・・私は・・・」
「おい!?どうした・・・!?」
「四葉さん!?」
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