バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

この争い起きた戦場で ダブモン!!8話/23

この争い起きた戦場で ダブモン!!8話23
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「初めまして、人間側の将軍、私はグラディバー、同じく壁際の国で将軍職を務めさせてもらっている、魔王様より侵攻の命を受け、この部隊を指揮させてもらっている」
 「初めまして、私はバリアス、不肖ながら壁面連合軍より、この部隊の指揮をとらせてもらっている」
 向こうに現れたのは、魔族、
 一見すると長いひげや体毛が体の前面を覆い隠す、
 恰好の判断はしづらいが、初老の趣より穏やかな知性を感じることができる、魔族の将として厳格な雰囲気を持ち、指揮者としては申し分ない威厳を持っている、
 それが将軍と対峙する・・・
 が、明らかに場にそぐわないであろう、将軍の斜め後ろにいる私の方を見て眉を顰め・・・
 「それで?そちらのお嬢さんは?あなたの孫娘かな?このような厳粛な場に子供を連れてくるとはどういうおつもりか?」
 「ははは、このような綺麗な娘が私の孫娘なら大歓迎なのだがね、」
 将軍が世間話をするかのように穏やかに話し出す
 「あいにく、私の孫娘は皆綺麗というよりかは精悍と言った方が正しい顔つきでね、一番上の孫娘など、女性騎士団に見習いとして入り、日々研鑽を重ねているよ」
 が、向こうの将軍はこちらの将軍に視線を移しつつ目を細めた厳しい目つきとなる
 「私が訊きたかったことはあなたの孫自慢などではない」
 「わかっているとも、何、彼女の役割はすぐにわかる、それより、手紙に書いてあったことは真かな?」
 「真なり、ここにデッキケースも用意しておる」
 と、向こうより、角と髭の生えた茶色い立方体が差し出されてきた
 「貴殿の方は?デッキやデッキケースが無いというのならこちらから貸し出そうか?」
 「準備は整っている、だが、その前に、おい!」
 将軍の言葉に、兵士五人が後方に向かって駆け出していく・・・
 そして、そのすぐ後に透明なドームのような結界の中で縄でぐるぐる巻きにされさるぐつわまでされたものが兵士たちに担がれて連れてこられてきた、
 あの青い髪と焼けたような肌・・・間違いない、この陣を強襲してきたあの魔族だ!
 「どういうおつもりかな?」
 向こうの将軍の目つきが急に先ほどよりも強く厳しいものになるが、将軍は涼しい顔で
 「なに、こちらも迷惑していてね、貴重な結界魔道具とその使い手を浪費させてまで捕らえておかねばならん、上に知れたら魔道具の材料にしろと口酸っぱくして言って来るんだろうことは想像に難くない、なので、交渉の材料にとっとと使ってしまおうと思ってね、ほれ、お返ししろ」
 あの魔族がごろりと向こうに向かって転がされる・・・
 「誰か、さるぐつわを解いてやれ、ああ、縄はそのままでいい」
 と、魔族の兵士が駆けよる合間に
 「にしても、手紙には彼のことなど一言も書いていないつもりだがなぜ連れてきた」
 「先ほども言ったように迷惑だっただけだ、魔族の死体を利用するのですら気が引けるのに、捕虜を殺してまで扱う気にはなれんよ」
 「反応を感知できなくなったので、てっきり死んだと思っていたのだがな、そちらの結界の中に隠されていたとは」
 「不可抗力だ、」
 と、少し脱力したかのような言い草
 「結界の中で無いと暴れられる恐れがあったのでね、ああ、食事はきちんと与えてある、このなりだからな、さるぐつわは外したが、パンと干し肉は千切って、スープは匙で掬って、いずれも兵士の手により喰わせてやった」
 「あのような屈辱は忘れんっ!!」
 と、あの魔族がさるぐつわを外された瞬間に大声を上げた、
 皆の視線が一斉にその魔族に集まる
 「屈辱?何かうちの兵士が粗相でも?それとも、食事が口に合わなかったのか?」
 向こうの魔族が怒りに目じりを吊り上げる
 「あの様に・・・我は赤ん坊ではない!!きちんと食べれる!!」
 「致し方無いと何度も言っておろう、」
 今度は少しあきれたような話し言葉
 「お前さんの縄を外せば、暴れるのは目に見えているからな」
 「貴様!私はこの軍の副将を魔王様直々に命ぜられたのだぞ!!」
 「その程度のことにも耐えられないにもかかわらず軍の副将とはほとほとあきれ返る、ここは戦場だ、捕虜となったのだから、次の瞬間には殺されていてもおかしくない上、戦場では食えない時も珍しくも無いのに文句ばっかり言いおって、私が若い時に進軍した時など、補給線を敵軍に立たれて周りが餓死していく中で何とか逃げ帰ったこともあるというに」
 「まったくだな、こいつには忍耐力が足りていない」
 え?向こうも同意した!?こちらの将軍と同じように少々呆れているような声だ
 「その爆炎の魔法を見込まれて副将に任ぜられたのに、先走って予定の時刻より先に壁を破壊しおってからに、おかげで侵攻の予定が狂ってしまった・・・」
 狂ったって・・・
 「ともかく、裏に回ってもらおう、おい、誰か」
 「何を言うか!この縄を外せ!!そうすれば、今すぐこやつらを消し炭にして見せよう!!」
 向こうの将軍の目つきが急に鋭くなる
 「貴様、この私が作り上げた交渉の場を破壊するというのか?上官たる私がこうやって作り上げた場を?」
 おお・・・すごい威圧感、思わず一歩下がってしまった、魔法でも使っているのか?はたまた素か
 「ウィルピー、あの迫力は」
 「素ですよあれ、魔法とかじゃないです、正直怖いです」
 「ぐっ!」
 さすがにこれにはあの爆炎魔族もひるみ、押し黙る
 「もういい、連れて行け」
 その一言により、豪炎魔族は魔族の兵士たちに引っ張られていく・・・
 そうして、兵士たちの中に豪炎魔族が消え、互いの将軍は再び顔を見合わせる
 「さて、本題の件だがな・・・」
 口を開いたのはこちらの将軍から
 「ふむ、何か物言いが・・・?」
 「大したことではないよ、私の代わりに」
 その手が広がったまま私の方を指し示す
 「彼女がカードバトルを行う、それだけだ」
 「なんだと・・・?」
 先程、あの魔族を威圧した瞳が、
 今度は、私達に向けられることとなったのだった・・・
 
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