この争い起きた戦場で ダブモン!!8話/03
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金髪の少年は、私達が声を掛けても今だに先の方を見たままだ、
背の高い草の裏でその奥を見ている
何を考えてるんだろう・・・
少年の視線の先を追うと、
「なんだよ、あれ・・・」
「これが・・・」
「戦・・・場・・・?」
三人の言う通り、そこには、いくつもの死体が転がっていた、
草原の中に突如として現れた地の大地、血を吸ったかのように赤黒いその大地は、端が見渡せないほどの壁のかなりの部分が崩れた壁をはさみ、二つの勢力が存在していた・・・
死体の向こうで、兵士たちが盾を壁のように並べ、その後ろより弓矢を絶え間なく撃つ人間の勢力、
対して、盾持ちを前線に、矢を当たった時にのみ見える半透明の壁で守りながら、散発的に火炎や雷などを吹き飛ばす角や羽持つ時に肌の色が緑や青と異色な魔族と思わしき勢力、
雷は敵方の盾を貫通し確実に兵士たちの命を奪い、爆炎はここまで聞こえるほどの轟音を劈かせ、広範囲の兵士たちを噴き飛ばし、その何割かが動かなくなる、
弓矢が時折半透明の壁を壊し、相手の勢力を撃ち抜き絶命させる、壁はすぐに再生し再び弓矢を防ぎだすが長くは持たない、破壊され、再び中の者たちに矢が当たって血を噴き、倒れ、絶命していく・・・
血にまみれた死体は前線の兵士たちによって邪魔にならないようにことごとくが横に回され、積み上がって行く・・・
ここまで血の匂いが漂ってきそうだ
「うっ・・・」
遠目ながら吐き気がして、思わず私は目をそむけてこぼす・・・
「・・・なるほど、逃げろと言った理由がこれか・・・」
「まずいですねこれは、早くここから離れた方がいいです」
「そうよ、相棒を巻き込ませるわけにはいかないわ」
「・・・なるほど、俺達が村を出た時に聞いた轟音の正体はこいつか・・・」
あ!
「そうか、あの音、壁の・・・」「あの規模の壁が一気に壊されたのなら、あの村まで響いてもおかしくない・・・」「あの音、壁が壊れた音だったの!?」
後ろの三人の言う通り、あの音は壁の崩れた音かはたまた魔法か何かで吹き飛ばした時の音か、アクリスはそれを察知してここまで・・・?
いや、そんな事、今はどうでもいい!!
「早く離れましょう、四葉さん!」
「そうねそれがいい・・・」
私は、もう一度、金髪の少年の方を見据え、言い放つ!
「アクリス!!」
「アクリス!!」「アクリス!!」「アクリス!!」
が、私達の声も聞こえていないのか、アクリスは引き寄せられるように街道に向かって走り始め、そのまま街道を突っ走っていく
「アクリス!?」
「あいつ、何考えてんだ!」「とにかく連れ戻そう」「力づくにでも、だね!」
「ウィルピー、カンテーラ、誰でもいい、空飛んで出来る限り先回りを」
「俺が行こう」
私の提案に、名乗り出たのはカンテーラ
「森の上を飛んで止めればいいんだろ?俺の体は黒い、日中なら目立つから、見ただけで足を止めるはずだ」
「お願い、カンテーラ!」
「流れ矢や流れ魔法に当たるなよ?」
「この距離だし、そんなへまはしないさ、じゃあな」
良星の軽さを装った忠告にこちらも軽さを装いながら返事をし、カンテーラが森の上へ飛ぶ、そんな中で私達もアクリスを追い走り出す、
が、それは唐突に始まった、
いきなり両軍が盾を除けて立ち上がり、一気に近づいて行ったのだ、
青のインナーに簡素な鉄兜や鉄鎧と槍や剣で武装した人間の軍、
対し、魔力が込められているのか、それぞれ淡く怪しい光の厚い革のローブや革鎧等をまとい、幾分か細い剣や杖を持つ魔族の軍、
突如として爆発が起き、人間の側の幾分かが吹き飛ぶ、
しかし、その間にも先の方では人間たちが剣で敵の首を切りとばし、槍で心の臓を突いているのが見えた、
凄惨、遠巻きから見てもその二文字しか思い浮かばない、
魔族の側が雷を帯びた剣から一直線に伸ばした雷で一気に三人ほど貫通させ血液を沸騰させたのか一人の一部分を爆発させ吹き飛ばしたかと思えば、その間に剣と槍が同じ人数を斬り裂き突き取り命を奪う、
このような場所に一秒でもいるべきではない、一歩でも遠くに逃げねばならない、
それなのに、私達が追うアクリスは何を考えているんだ・・・?
「いた!立ち止まってる!!」
「あんなとこで何やってんだよ!」
「危ないよ!!」
そこで、アクリスは立ち止まっていた、そこにあったのは・・・戦陣だ、
いくつもの布とひもと木の柱で簡易的に家状に組まれた白いテントが数えきれないぐらいに並んでいる、
もちろん、木の柵で囲われており、そこには前線に出た兵士と同じ装備の人達が所々で巡回している・・・
私達が追いつくと共に、カンテーラも降りてくる
「おい!アクリス!」「アクリス!」「アクリス!」
「アクリス!」
「あ・・・何?」
振り返り少し呆けた顔で声を出したアクリス、しかし、声を聴く限り身体に異常はなさそうだ、まったく、心配かけさせんじゃないわよ・・・
「お前、こんなとこで何してんだよ!?」「そうだぜ!」「こんなところに危ないよ」
「早くここから離れましょ!」
「それは・・・」
「お前達、こんなとこにいたら危ないぞ」
森の方から聞こえた声、茂みの上からのぞく顔は
そこにいたのは、黒い顔持つ黄色と黒の縦じま模様がある・・・蜘蛛?
「お前こそこんなとこにいたら危ないんじゃないのか?」「だな」「うん」
「俺か?俺はいいんだよ、この戦いを見守んだから、戦火が広がってこの森が燃やされたらどうする?」
「確かに、森にすむダブモンにとっては問題かもしれないけどさ・・・」
「だったら、人間側に加勢すればいいんじゃないの?」
「んな事するかよ、それするぐらいだったらこの森からとっととにげらぁ、親に人間と魔族の戦いに関わんなって言われてんだ」
私の提案を即刻に蹴る蜘蛛
「そういや、私も言われたわね、そんなこと・・・」
「俺も言われたな・・・」
え?フリィジアとイグリードも?
「でもでも、私、」
兎白の方にいきなり顔を向けうれしそうに話すフリィジア
「相棒のためだったら、そんな言いつけ破ってでも守ってあげる!!」
「俺も、」
今度は鼓動の方に力強く腕組みながら振り返るイグリード
「相棒のことは信頼してるからな、魔族との戦いに巻き込まれても守ってやろう」
そして、自身の相棒にその視線を向ける二人
「ありがとう、フリィジア」
「ありがと、イグリード」
「おいおい、俺だって相棒のことは・・・」
視線が宙に浮くカンテーラ
「とりあえず守ってやる」
「とりあえずってなんだよ、とりあえずって!!」
こちらはひょうきんにすら見えるに驚きを示す良星
「私も、」
そして、私の方をゆっくりと見るウィルピー
「四葉さんのことは、命懸けでお守りしますね」
「ええ・・・ありがとう、ウィルピー」
この信頼の視線に、できる限り応えなくちゃね
「にしてもだ、親の言いつけね、俺は言われたことないが・・・」
「私もですよ」
カンテーラのあきれ交じりの一言に反応するウィルピー
「そりゃあ、お前らは」「出自が出自だからな」「だね」
「へ~、」
イグリードがどこか感心したようにカンテーラとウィルピーを見て、気になったのかカンテーラとウィルピーもイグリードに視線を移す
「世界樹の眷属から生まれた奴らか?」
「まぁ、そんなとこだ」
「です」
イグリードの問い言葉にすぐに返すカンテーラとウィルピー
本当は眷属じゃなくて世界樹そのものなんだろうけどな・・・でも、何か違和感あるわね・・・
良星も何か考えこんでる・・・?
「おい!お前達!!そんなところで何をしている!!」
「まずっ!」
大きな怒鳴り声が聞こえたと思ったら、蜘蛛が森の中に引っ込み、
その声の主であろう男が、戦陣の方より近づいてきた・・・・
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