Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒 13
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地面より地の底より上るように出てきたのは白銀に染まったゴーレム、
大きな自然石がそのまま集まってアンバランスな体が形成されたような、
左側の手足が若干短く、胴体は大きな石一つ下に小さな石一つで形成され、左胸に瞳のマークが描かれている・・・
あのマークがもしかして、魔法陣の類か!?
そのマークを瞬きさせながら俺達を見下ろし
「貴様たち何者だ!?ここはあの方の神聖なる鉱石場、今すぐにお帰り願おう!!」
「なら、帰らせてもらう、って言ったって、素直に返してはくれないんだろ?」
「無論、ここまで来た実力を評価し、おもてなしもせずに帰すわけがない、死体となってお帰りいただこう!!」
「なら、お帰り願おうなんて台詞吐くんじゃない!!」
振り下ろされる右こぶしを跳躍して避け、着地しつつに剣を叩きつける!
金属同士が叩きあう甲高い音が響く、ただそれだけ
「どうした?その程度の剣で我が斬れると思うのか!?」
即座に振り下ろされる左拳!
それを後ろに一回転跳躍で避けつつ
「ならこれはどうだい!?」
跳躍して左腕に乗って走り伝い、目のマークに剣を叩きつける、しかし、傷一つつかない!
「無駄だ!」
体を大きく回転させるのを何とか後ろ宙返り跳びしつつすかさず剣をしまいながら銃を取って撃ち込む!
反動で後ろに下がりつつ放たれた弾だが、回転する上半身は弾かれ下半身に当たっても傷一つつかねぇ!
効かないと判断した俺は即座に杖を取り精神を集中、着地しつつもありったけの炎魔法を打ち込む!
豪火で燃え上がる白銀のゴ-レム
が、ゴーレムの右腕の一振りであっさり吹き消され、
「その程度の炎で我のミスリルが溶けると思うてかっ!!」
やはりあれは・・・ミスリル、聖銀とも魔銀とも呼ばれる鋼の硬度を超えた魔鍛冶師垂涎の超硬度マジックレアメタル、
だが、だからこそ、俺はこの手であれをどうにかしたい、
なんせ・・・最高の素材じゃないか!!ミスリル!!俺は初めて見たぜ!!
あれなら今までで一番の剣ができるかもしれねぇ!!
賢者の石なんて(今は)どうでもいい、今はあれで、最強の剣を・・・作る!!
そのために俺は・・・今のありったけの魔力を槌に・・・込める!!
だが、剣を作るためにはどうしてもつなぎとなる素材が必要だ、手元にそれにできそうなのは地鉱石、これ一つしかない・・・
俺は髪飾りの地鉱石を外して、葉っぱの飾りを右肩後ろのリッキーに放り投げた
「あ!ちょっと」
慌てて受け止めるリッキー
「んなもん俺はいらん、だが、綺麗でもったいないからな、爺さん所に戻ったときにどっかに飾ってもらうか、気に入ったなら勝手に持っとけ」
「まったく・・・」
髪飾りをそれとなく首にかけるリッキー、んじゃ、行きますか!!
「作戦会議は終わったか?ならば死ね!!」
走り込み大きく振り下ろされる右拳を、何とか剣で受け流す!
「立派な盾があるのに使わんのか?」
「生憎と、これが俺の戦い方でねぇ!!」
続く左拳も何とか剣で受け流し、向こうは両手を合わせ、叩きつけてきた!
「げ・・・」
これも剣で受け流しつつ何とか後ろに動いて避ける
叩きつけられた時の衝撃で起きた砂煙が晴れ、ゴーレムの目のマークがこちらを見下ろす
「どうした?そんな剣ではもう戦えまい?」
確かに、俺の剣はひしゃげる寸前、といった趣だ、だが、これがいいんだ!
「はっ!」
俺は盾持つ手で杖を掴み、豪火を起こす!
「血迷ったか!?」
ゴーレムの右腕が唸り、火をかき消したころには、俺は上へと跳躍し、左手で剣をゴーレムに突き立てる!
はずが、全く突き刺さらない!
「言っただろう!そんな剣では我にはかなわないと!!」
「まだだ!」
俺は即座に地鉱石をゴーレムに叩きつけ、杖持ち替えた槌を地鉱石ごとゴーレムに叩き込む!
地鉱石で出てくるのは・・・
「ノーム!足場の確保とこいつの足を封じてくれ!!」
「なに!?ノームだと!?」
俺の下から岩のくびれ柱が出現して俺の足元まで動き俺は足を乗せて足場とし、
同時にゴーレムの体が下半身まで岩に覆われていた・・・
見ると、右手足元に、薄茶の髭を生やした鼻でかい小人が思い切り両手を広げて地に叩きつけていた、
その小人は先に綿の付いた茶色い三角帽子と子供っぽいゆったりとした全身服に身を包んでいる
「ありがとなノーム、さぁ、こっからだ!!」
俺は思い切り魔力と腕力を込めて槌を叩きつけ、剣と、地鉱石と、ミスリルゴーレムの体を融合させていく
「グォオオオオオ!!」
ミスリルゴーレムのうめき声が響く中でも俺は槌を叩き続け・・・
「よし!」
そして、足場とミスリルゴーレムを封じる岩が崩れ始めたころ俺は離脱し、再びミスリルゴーレムと対峙する、
長い三角刃は大剣のごとしだが、全てが白銀に輝いている両刃剣、素材が素材なせいか明らかに軽い、剣士としてはあまり実力の無い俺でも気軽に振り回せそうだ、そうだな、名前は・・・
「そうだな・・・名前は・・・ミスリルキラーでどうだ!?」
「その名は・・・それで我を倒すという宣言か・・・?」
ゴーレムの声にそちらを見ると、目のマーク右側、体中央に近い部分がえぐれ、深い穴が開いていた・・・
俺はそれをしかと見据え、宣言してやる!
「ああそうだ、こいつでお前をぶった斬ってやる!!」
「ふざけるなあぁああああ!!」
俺はできうる限り速く駆ける、頭の上をひり降ろされた右拳がかすりながらも、俺は通りすがりながら跳躍しつつミスリルゴーレムの目のマークを横に一刀両断!!
「そ・・・そんな・・・馬鹿な・・・」
そして、ミスリルゴーレムは砂となって崩れ去ったのだった・・・
って、ちょっと待て砂っ!?
「ああ!?俺のミスリル!?」
振り返ると、そこにあったのは砂の山・・・ちくしょう!ミスリルの山で装備を強化したり作ったりしようと思ってたのに!!
「ヴァルカ、どうしたの?顔が固まってるよ?」
「・・・いや、何でもない・・・」
と、俺の目に砂の中に埋もれかかった球体の石が写った、
手に取って見ると左上一部が崩れており横一直線にたたっ切られている・・・
どうやら、こいつが核の部分だったようだ、鍛冶をしたときに一部が削られ、さらにとどめの一撃でたたっ斬られたと・・・
っち、どうやら見せかけだったか、あるいは倒れた時にただの砂になるように細工を施されていたか・・・
ま、いいや、奥に行けば何か見つかるだろ、幸いここは採掘場らしいし・・・
そんなこんなで、俺たちは奥に空いた穴の方に行く、
そこにあったのはトロッコなどは無いがさっきミスリルゴーレムと戦った場所と同様の広い空間で、中央には柱が四つ立った祭壇がある、そこにある人影などどうでもよく、俺は壁に埋まったそれに目が行った
「頼む、どうか王子を・・・」
「ああっ!風透石に地透石に水透石!!」
と、祭壇の向こうの壁に埋まった石の方に祭壇を迂回しつつ向かう俺
そこにあったのは、少し離れた位置に中に風が封じられたような緑の水晶と、中に地のエネルギー放つ石が封じ込められたような茶色い水晶、と水が封じ込められたような青い水晶・・・
「頼む、王子を救い、この城を開放してくれまいか・・・?」
三つも異なる属性石が!?
そこまで珍しい鉱脈となると相当のエレメントや魔力が集まっていた可能性が高い、あのミスリルゴーレムのミスリルもここ産か!?
だが、掘りつくされてしまったのかもう何の気配もないのが残念だ・・・
水晶を回収し、振り返ると、そこにいたのは、
向こうを向いた各部を丸いパーツを多段式に組み合わせて作られたような黒く重厚な全身鎧に身を包む(見た目は)上位の将校、
黒いマントなどなびかせているのがいかにもそれっぽい、
兜は被っておらず、癖の強い短めの茶髪と茶の髭を口元と顎に生やし、
顔つきは少し貧相だがその青い目と茶色の眉は強い意思に溢れている
わざわざ正面まで歩いてやり、俺は問いかける
「で、あんたは誰だよ?人にものを頼むってことは自分の名前ぐらいは名乗ってくれるんだよな?」
「頼む、どうか王子を救ってくれ・・・」
・・・あ、ダメだこれは・・・
俺はあきらめ、帰路へ振り返り
「行くぞリッキー、もうここには用はない」
歩き出した
「あ!待ってよ~」
リッキーの声と羽音が近づき、後に付いてくるのを感じながら・・・
連れてこられたのは大きな山の洞窟の奥、
不安に思いながら父に連れられ奥まで行くと、そこには綺麗に光る石がそこかしこに埋まっていた・・・
父の後ろに付く将軍が口を開く
「よろしいのですか王よ?王子をこのような場所に連れてきて・・・」
「かまわんさ、こいつはいずれ我の後を継ぐ身、そう、いずれ、世界の王となった日の後にな、ふははは・・・あははは・・・!!」
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