カードゲームライトノベル Wカードフュージョン13話 急襲、キューブフィアーザー!守れ、牧場!!6
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「私達は、人族を確実に滅ぼすために、その他の命をたくさん巻き添えにした」
巻き添え?どういうことだ?
「巻き添え・・・というが、大規模な戦闘があれば、多かれ少なかれ、無関係な動物や虫や鳥類などは巻き込まれるんじゃないのか?」
が、カーディンの言葉に、アリスは静かに首を横に振り、「違うわ、違うのよ、」こちらの方に向き直る
「確かに戦闘時にたくさんの無関係な命を巻き沿いにしたとは思ってる、でも、それよりも問題なのは、人間を根絶やしにするために作って、各地に設置した装置だわ、この辺りにはないけど、あなた達、地面から露出する機械を見たこと、ある?」
「あ・・・」
「ああ・・・」アリスが真剣な目付きに替わる
「あるのね?」
たしかに、ここに来るまでに荒野に露出する機械類を見た、それこそ一定間隔で見るため、総計したら膨大な量になるだろう、見たことあるのかと言われても見たことないと言うほうが不可能なぐらい、
量が多いため、てっきりそういう地面なのかと思っていたが、そういえば、この草原の辺りにはどこにも見当たらない・・・
「それね、実は、微小な振動波を発生させて、辺りの微生物と植物を時間をかけて全て消滅させる装置なのよ」
「な・・・?」
「なんだって!?」
「そ、それじゃあ、そんなものをあたり一帯に敷き詰めたら、その微生物と植物を食べる動物も死滅して・・・」
「その動物を食べる動物も死滅するな・・・」
「そうよ、すべては人を滅ぼすために、ね」
っつ!
「なんで・・・そこまで・・・」
「機械は目的以外が目に映ることは無い」
「そんな・・・理由・・・?」
「そうよ、人間を滅ぼすと決めたらどんな手段もいとわないわ、感情の赴くままに、思いつく手段全てを尽くした、冷酷な人間よりも冷酷に、ね、それだけよ」
「でも、そんなことは・・・」
「手段を選んでいるとしたら、それはその目的以上の優先順位の目的があったからよ、お金を手に入れるために誰かを殺す事は出来ない、人はそうでしょう、普通の人は、でもそれは、お金を手に入れるより誰かを殺さないことの方が大事だから、だけど、もし、誰かを殺すことが大切で無くなったら、いえ、こう言った方がいいかしらね、何らかの理由で誰かを殺すよりお金を手に入れる事の方が大切になったら?私達はそうなった、感情の赴くままに誰かを殺さないより自分達を守ることの方が大切になったのよ」
ぐっ・・・
アリスが不意に憂鬱げに目線を斜め下に外す
「元より、人間以外の生き物の優先順位は低かったしね、一番大切な人を殺してもいいだなんてなったら、それよりも優先順位の低い相手なんて推して知るべし、よ」
アリスが一つ、微かに溜め息をついた
「機械が発明された後は、すぐに設置が施行されたわ、全世界、それこそ海底に至るまで、ね・・・」そして、目線をこちらに戻してきた
「じゃ・・・じゃあ・・・」
そうだ・・・それじゃあ・・・
「ここは一体何なの・・・?」
「ここは確か、ジョーカーが作ったんだよな」
「ジョーカーが!?」
いきなりリュッケンが放った意外な存在に思わず驚き声を上げた
「そうなのよねぇ・・・」
「ロボット達の間に人のマネして食いもんを食わせるようなことまで流行らせてな」
「牧場、畑、海洋牧場、漁場、機械の位置をずらして空白の部分を作ってね、よく許可が出たもんだわ」
「人間をおびき寄せるための罠にもなるとか、無茶苦茶なこと言ってるよなぁ・・・人間のにせもんを作るってのも大元はジョーカー発案だっけ」
なっ!?
「なんで、ジョーカーが、そんなこと・・・」
「知らね」
「知らないわよそんなこと」
今度はリュッケンとアリスが同時にため息をついた
「オレ様達にあいつの真意を聞くなよ・・・」
「何やってるのかいまいちわかんないのよねぇあいつ、戦いで武功を上げたわけでもなし、なんで取り立てられたんだっけ、あいつ」
「あれだろ、戦いの後で医療用のデータをもってきたんだ、それがあの方の気に入って、医療用のデータ、人間を滅ぼすために大部分削除して、その手のロボット、医療用に使えないように改造しちゃって、それでどうしてだかあいつが持ってたなけなしの医療データもみんな大喜びでさ」
「メインサーバからはいつ望んだデータとれるかわかんないしねぇ・・・」
メインサーバから望んだデータが取れない?
事ここにいたって、何か重大な情報を聞いた気がする・・・
そうだ、メインサーバってこの世をありとあらゆるデータが入ってるんだよね、だとするなら、
なんでそんななけなしの医療データで小躍りしてるんだこいつらは・・・?
言い方からすると、望んだデータが出るかどうかわからない感じの言い方だが・・・?
「あ?その目、お前ら、メインサーバのこと知らねぇのか、急に目つきが変わったぜ、でもな・・・」
「あんまり言う気はないわね、私達は・・・」
ぐ・・・そんなに顔に出てたか・・・失敗だったな・・・
「じゃあ、もののついでに訊くけど、ジョーカーが誘拐してった人、今どこにいるか知らない?」
「それも知らねぇな」
「私も知らない、仮に知ってても教えるわけないじゃない」
だよね・・・
「ジョーカーと聞いて思い出したが・・・」
ん、今度はカーディン?
「なぜ私達に援軍を頼む?それこそ、ジョーカーかレオリングに頼めばいいだろう」
「ジョーカーはやだ!」
「同感」
嫌われてんなぁ、ジョーカー・・・
「あいつ、何考えてるかわかんねぇし、それに戦闘向きじゃないっぽいしな・・・」
「援軍頼んでもどうにかできるかわかんないわよね、頼んで後々それをネタにされてもイラつくし、レオンは・・・」
なぜか、アリスが不意に目線を上にそらす、しかし、どこか暗い感じである
「あいつ、最近なんか変なのよ、どうともいえないけど、フラっと姿消したと思ったら、急に戻ってきて・・・」
「レオリングの奴と訓練してるとこも見たな、あいつ、あんなことするやつだったっけか?」
「私、最近、誰かとよく話してる声を・・・あんまり気分は・・・あ、いえ、」何かを振り払う様に少し顔を左右に振るアリス「何でもないわ、何話してんのかしら・・・」
何が何でもないんだろう?
「まぁ、オレ様としちゃ、レオンの奴に頼るのもしゃくだ、お前らに頼るのもしゃくだが、そこはこいつが言いだしっぺなんで・・・」
「ま、今から呼びに行って間に合うとも限んないし、私としても、レオンに頼るのはいい気はしないわ、利用できるなら、利用させてもらう」
「利用って終わったらいきなり襲って来るとか援軍呼ぶとか無しだからね」
「わかってるわよ、卑怯者呼ばわりしないでちょうだい、見逃すくらいはしてあげる」
「となると、残りはあの方とか、他の奴らとか・・・他の奴らでどうにかなるとは思えんし、あの方に頼むのも違うだろ・・・」
「あの方から暇そうにしてるからって言って押し付けられた仕事なのにあの方に頼むってことは敗北宣言も同然でしょうが・・・」
「ま、それもそうか・・・」
あの方・・・?
「ねぇ?」
「ん?」
「何よ?」
改めてこちらの方に顔を向けるアリスとリュッケン
「あの方って、ガイキシンの事だよね?」
「そうよ」
「それがどうかしたのか?」
「いや・・・まぁ、強いんだよね?」
「強い」
「私じゃ勝てないわね、絶対に」
リュッケンが即断で強いと返してきた、アリスは、まぁ、戦闘向きじゃないっぽいからあれだが、
どう強いんだろうか?空を飛んで攪乱しつつ攻撃するとか?前見た時からいまいち強さが想像できないんだよなぁ・・・
「そういやぁさぁ、あの方が今、ブルー鷹ってのを必死に探してるって話聞いた?」
ぶっ、ブルー鷹ぁ!?
「ああ、そういやそんな噂もあったわね・・・」
なんであれを探してんだ?
「なぁ、カーディンさんよ、お前はどう思う?同じ車型のロボットだろ?」
「さぁ、私にはどうにも、会ったことすらないからなぁ・・・」
「そういや、変形パターンも一緒・・・あれ?」
「私を模してロボットを作ったのだろう?旅先で一台あったぞ、その時の一台じゃないか?もしくは試作品とか・・・」
「ああ、その可能性もあるなぁ!!」
どうなんだろうか、これは・・・
と、今度はリュッケンは素早くアリスの方を向き
「どうだよ、見つけたらオレ様達の仲間にさ、仲間に鳥類いないじゃんオレら!!」
「それ言ったらなんで猫科二体いるのよ・・・」
「そういえばそうだよな!猫が二体いるんなら犬だって二体いてもいいよな!!」
「犬も猫も近い仲間でしょうが!それ言ったら兎はどうなるのよ!!」
「話脱線してない?」
「う・・・」
「あ・・・」
何か情報が得られるかと思ったが、さすがに関係ないこと話し始めてきた気がしたので、
とにかく、一度止めておく、
「ん・・・?」
なんだろ、アリスが柵の方を・・・って、あ、羊の一匹がこっちの方に・・・
するとアリスが目つきを厳しくして羊に向かい
「危ないから奥の方行ってなさい」と、左手で振り払うジェスチャーを取る、
羊もそれを察してか、奥の方に方向を変え、トコトコと歩いて行った
「実はね、今は向こうの方行ってるけど、この辺りにも見張りがそこそこいたりするのよ、今は戦闘してるか戦闘で負けて撤退したか避難したかだけどね、家ん中で震えてるかもしれないけど・・・」
なるほど、それで動物以外ここには誰もいないわけね・・・
そういえば・・・
「最初の話に戻るけどさ、なんでアリスはここにきてたの?何がわからなくなったの?」
「ん・・・」
アリスがおっくうそうに向いていた牧場の方に改めて向きを変えながら憧憬を込めた目線でその牧場を見つめ
「動物園に行った時に思ったのよ・・・なんで私は容赦無く命を奪ってたんだろうって・・・」
「別にいいじゃねぇかそんなこと、どうせ何十年かすればみんな」
「じゃあさ、命にとっての不幸って、何?」
「へ・・・?ええっと~」
「ついでに、ここにいる喋れる生命体はあんただけだから、とりあえず、何か答えてね、そこの」アリスが僕の方にチラリと目線を向ける
う・・・言われてみれば喋れる生命体は僕だけなんだからそうなんだろうけど・・・
不幸・・・不幸ねぇ~
「幸せとか不幸とか、人によって変わると思うんだけど・・・」
「それは、意志としての幸せ不幸せでしょう?私は生命としての幸せ不幸せを聞いてんのよ」
生命としての幸せとか不幸とか、う~ん?
???????????????????
うが~わからん!!
「その様子だと分からないようね」
「わかるわけないだろそんなもん!!」
「私はね、こう思うのよ、もしかしたら、生命としての幸せって、命をつなげるかどうかなんじゃないかって」
「へ・・・?」言ってる意味がよくわかんないんだけど・・・
僕があっけにとられている間にも、アリスが再び牧場の方を向く
「ここにいる畜産動物たちだってそうでしょう、危険な外界から守られ、命を繋ぎ、そして自身は死す・・・」
「それは、別に犯罪行為やペットのポイ捨てを推奨してるわけじゃないんだな?」突然、カーディンが質問する、
「当たり前じゃない、そんなの、幸せ云々以前の問題よ!!犯罪はいけないことだし、飼ったペットには責任を持ちなさい!!」
「なら、いい」
アリスの啖呵に、カーディンが安心したように口をつぐむ、カーディンは警察官なので、こういったことにきちんとしておきたいのだろう
「まったく・・・そういえば、種としての幸せも子供を守ること、そうなのかもしれない、自分達の子孫が残せればそれでいい、自身じゃなくても、種としての子孫が、」
「でもね、それは、意志としての幸せがわからないからだわ、ここの動物たちも、動物園の動物たちも、自身の解放を主張したなら、人もロボットも、これを開放しなければならない、それは、生命としての幸せよりも意志としての幸せの実現や不幸の阻止が優先されるべきで、ここの動物たちにその自由があるから、意志を確認できない現状だからこそ、畜産も動物園もなりたつ・・・」
「しかし、ここの動物たちが自分達の子孫を残すことを条件に家畜として承知しているのなら、それは支配?寄生?共生?」
言ってる意味が分からない・・・
「私は」
ドガン!
突如として轟音が僕達を襲う!!
これは、牧場とは反対側の方!!
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