到着!魔道都市マジカラ!! ダブモン!!5話/18
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街中-6
「魔の道具とは一体何だ、一体何からできていて、どこから供給されてる?魔や魔族との具体的な関連は一体何なんだ・・・?」
「・・・」
カンテーラが問うたこと、それこそ、俺達が一番知りたかったことに他ならない、
「魔の道具っていうのはね・・・」
と先を歩くおねぇさんが振り返り、諭すように話し出す
「いい、魔の道具っていうのはね、魔族そのものなの」
「魔族・・・そのもの?」「どういうことだよ」「よくわかんない?」
「胡散臭いわね、正確に言ってないんじゃないの?」
「その通り、」どこか呆れたように左右手を左右肩前に上げジェスチャーするおねぇさん「もっとも、ある意味ではその通りなんだけど」
「どういうことだ?」
「そうですよ、ちゃんと教えてください」
「いい、魔の道具っていうのはね、魔族の遺体から出来ているの」
「魔族の!?」「遺体!?」「それってどういうこと!?」
「なるほど・・・ね・・だから魔族そのもの・・・か」
「そういうこと、死んだばかりの魔族の体には今だ、魔力を溜めたり、発生させる能力が残っている、それを特殊な術式で封じ込めたのが魔道具の正体・・・でも、人間の遺体も魔族にとっては貴重な魔法の材料になることもあるらしいわ、魔道具みたく根本からというわけじゃないみたいだけどね」最後の方で右手で呆れつつ教えるような仕草を交える女性魔道士・・・
「でも、そんなのがあるんなら、なんで人間との戦争で拮抗状態みたいなことになってんだ?」
「言われてみればそうだな」
「確かにそうだよね」
「この街と関係あるんじゃないの?魔族の遺体を加工したものなんて、そんな貴重なもの、魔族が売りに出すわけないもんね?」
「その先は軍部の歴史に由来する・・・」
ん?アクリス・・・?
唐突に話し始めたアクリスに、俺達全員の視線が集中する
「そこの魔道士さんも色々教えてくれたし、僕も、知ってることを出来る限り話すよ、といっても、魔道具の事なんて詳しく知らなかったし、ここから話すことも、旅の間に聞いた事なんだけどね・・・」
「軍部の?」「歴史?」「由来・・・?」
「話がややこしくて長そーな方向に進むわね・・・」
「元来、人間と魔族の間では、長い間にこの世界の覇権をかけて争いが行われてきたことは知ってるよね?それは、人間の神である女神か、魔族の王である魔王、いずれかを滅ぼすための戦いだ」
「女神か魔王・・・?ちょっとまった!!魔王なんているのかよ!!」
そんな話初耳だぞ!?話聞いてると人類の天敵みたいなもんだし、
そんな存在がいるってあの女神、なんでそんな大事なこと教えなかった?!
が、俺の驚きに対し、目を少し見開ききょとんと少し呆然とした表情で口を動かし返し始めるアクリス
「え・・・?魔族がいるんだから、その長たる魔王がいたって何の不思議もないだろ?」
「そ・・・そりゃそうなんだけどさ・・・」
「いいこと?」今度は魔道士の方が諭すように話し出した・・・「教会が魔の力を嫌うのは、女神の対立者である魔王がその力の根源だからなの」
いいや・・・
「だけど、なんか違和感無いか?兎白?鼓動?」
「ある」
「だね・・・」
「違和感て言うか、私達魔族のこと知らなすぎじゃない?そもそも生き物なの?」
「生き物だよ、魔族は・・・」
アクリス?
「・・・」「・・・」「・・・」
「・・・」
その少し真剣な雰囲気に、思わず言葉を失う俺達
「寿命があって、命という楔に縛られてる、物を食べ、時に眠り、子を成し、そして死ぬ」
だが、それだと魔王は?女神と対立してるっていう魔王は?
「じゃあ魔王は?魔王も死んで何代も交代してきたのかよ?」
「?」アクリスの疑問を浮かべたことの無い者特有の顔中の力が抜けた理解できないという顔「いや、魔王様はずっと魔王様だよ、それが?」
「え・・・それじゃまるで・・・」
「魔王が魔族じゃないみたいじゃないか!!」
兎白と鼓動が驚く
「ちょっと語弊があるね、魔王は魔族の根源たる存在、なんせ、魔王様が魔族を創造したと言われているからね」
「それじゃ、女神と魔王が対立者っていうのは・・・」
「人間を女神が創造したって言われているのと同様に・・・」
「そ、正しく二者は対等なんだよ、さて、話を戻そう、」
アクリスは仕切り直すかのようにもう一度俺達を見据え治す
「魔族と人間は対立してる、一見すると、魔法が使える魔族が有利なんだけどそうじゃなかったんだ、最初は魔法で遠距離攻撃の出来る魔族が有利だったんだけど、魔族には魔力があるけど、人間には筋力があったんだ、並みの魔族じゃ、強化魔法かけてようやく人間の筋力になるぐらいなんだよ」
「それが何の役に立つんだよ、遠くから魔法をかけられたら一発で終わりだろ?」
「その魔力と筋力について、こういう逸話が残ってるんだ、北北西にあるアリバ川で、魔族と人間が戦いの結果、川で向かい合って陣を張ることになった、そして、互いに待機することになるんだけど、突如として人間が弓矢を持ち出し、あわてて魔族もそれに対処したんだ、そこで魔族の将がこう言ったんだ、
『見るがいい、こちらの矢は川半ばで大半が沈んでいるというのに、向こうの矢はそのほとんどがこちらに届き、我らに雨が如くに降り注ぎ、射止めようとしているではないか』とね、
結果、魔族は引かざるを得なかったって話さ、
当時、人間はその戦いの前に最新式の弓矢を開発、量産し、兵に配ったと言われているんだ、
当然魔族はその弓矢を手に入れ、量産して兵たちに使わせようとした、しかし、魔族の並みの兵士じゃ、その弓矢を扱うことは出来なかった、」
「なんで?」
「弓矢を引いたことがあるかい?あれを引くにはそれ相応の筋力が要求されるんだ、魔族では強化魔法を使ってようやくとり回しが出来る程度、ところが、強化魔法なんて使ってると・・・」
「そっちに集中力が行って弓矢を扱い切れない・・・のかな?」
「そう、連射力や命中率に差が生まれてしまうんだ、
結果、魔族は、弓使いと魔法使いを一組にして、矢に属性を付与し、より近い場所から撃って、属性の力を爆発させ、一気に相手に攻撃する道を選んだ」
俺達三人が順繰りに返事を返していき、
「なんでだよ、飛距離上げりゃあいいじゃん、人間のそれよりさ」
続けて兎白が質問する
「飛距離を上げるって言っても、風の魔法の応用になり、結果、繊細なコントロールがいるほか、二人の息を合わせなきゃいけない、
筋力を上げる方式でも、あれには限界があって、上げ過ぎると暴発するから、使い込むわけにはいかない、
結果、殲滅力を増す方法を選んだってわけ、それでもようやく五分五分に抑えられた程度なんだけどね・・・」
「銃やらなんやらでも強力なものは撃つ時の反動を抑えるために筋力が必要だって聞くよね、現代装備だって鎧は着ないけどアーマー用の金属を仕込むことはあるし、それ相応に重い、」
鼓動のちらりといった言葉、
「おい!!」
「あ!!」
「銃?銃って、ワナリューの種族とかが使ってるっていうあの筒状の武器のこと?」
「あ、そっか、銃あるんだ」
「ワナリューのだね、助かったぁ・・・」
鼓動の失言からの兎白と鼓動の一連のやり取りに、アクリスと女魔術師は顔の力の抜けた不思議そうな顔してる
「何で驚いてるのか知らないけど、僕としては鎧を着ない装備の方が気になるな・・・」
「俺達の地方ではそういう装備が流行りなんだよ、防御力より機動力や道具の持つ質と量を優先するってな、ま、地域差なだけだ、気にすんな」
兎白が慌てて付け加えた
「布服を主とする森などの障害物の多いところでの野戦術の装備かな、それとも魔道具をたくさん持っていく戦術かな?そっちは魔族の方ですら費用が凄まじいことになるからできないって聞いたけど、まいいや、
銃の方の話に戻るけど、魔族の方で模倣しようとしたけど火のダブモン程火の力のコントロールが出来なくてあえなく失敗したって聞いたけどね、結局魔法撃った方が早いらしいし、何がいけなかったんだろう?」
何でも魔法で片を付けようとするからじゃないだろうか・・・
「さぁ・・・俺達もわかんね・・・」
俺はすっとぼけて見せた、が、アクリスは気にした様子は無いようだった
「不思議だよね、ダブモン達はわけのわからない道具を所持してることも多い、ダブモンの模倣で色々な物が出来たとも聞くし、出来なかったものも多い、
ダブモン達は属性の力と生物達と職業の三要素で構成されてるって聞くけど、こと所持してる道具に関しては、僕達の理解の及ばないものも多い、一体どこからああいう要素が入り込んだんだろう?職業も聞いたことの無い物あるし・・・やっぱりあの噂は本当なのかな?」
「あの噂?」
一体なんだ?
「ああうん、何でもない、怪しい情報だから伝える気はしないんだ、ごめんね」
「そうか・・・」
なんだろ?気になるが・・・
「そして、そんな歴史の中で、戦乱の時代には、人間の側にも魔族の遺体から魔道具を作りだせるものもあらわれた・・・」
俺の考えいざ知らず、女の魔道士が間髪入れずにぽつりとつぶやいた
「な、なるほど・・・」
「魔族と人間の違いは他にもあって、」そして、アクリスが続けざまに話しだす「魔族は種族ごとに大きな違いがあって、魔力が強い者や筋力が強い者、寿命が極端に長い者なんかがいるけど、総じて、それらは他の種族との交配が出来なかったり、それらの能力の代わりに繁殖能力が低かったりして、一地方にとどまっていることも多い、まぁそんなこんなあって」
「へ、へぇ・・・」
「結果、戦いは五分五分のまま突き進み、あの壁ができたというわけさ」「だけど、今度はこの国が窮地に陥った・・・」
さらに割り込むような女魔道士の言葉・・・
間の無い言葉の応酬に、俺も忙しく疑問を返す
「こ・・・この国が?」
「そう、この国は、首都、魔道都市マジカラと砂漠、それに南に面した海以外何もないような国なの、元は緑豊かだったらしいんだけど、おりしも戦争で・・・ね」
ああ、だから砂漠のわりに熱い感じがしなかったわけだ・・・
「元々この国は砂漠になって以降、人間側の魔法の関係、つまり、魔術の研究習得や、魔道具の製造などで栄えて来たの」
あ・・・!
「だから・・・魔道都市・・・!」
「ところが、戦いが起きなくなって、魔道具の製造が立ち行かなくなっていったの、戦いで魔族の遺体が手に入る機会が極端に少なくなったから、魔道具と言っても強い衝撃や破魔の法などで道具の中にある術式が影響を受けた場合、魔道具としての意味をなさなくなり、砂に帰る、質の悪いものは時間経過で砂に変えることも多いしね」
「へぇ・・・」
「そして、困窮したこの国は・・・何処かから魔族の死体を調達してくるようになった・・・」
「どこかからって、どこから?」
「風のうわさだけど・・・ひそかに魔族側との貿易を行うようになったらしいのよ・・・」
「そんなことしたら・・・」
「もちろん、教会側はいい顔をしていない、しかし、魔族に対抗するにはどうしても魔道具がいる、そうじゃなきゃ、差は覆せないからね・・・」
「・・・」「・・・」「・・・」
「・・・」
そう・・・なのか・・・
「だから、他の国はこのことについて黙ってる、今だに人間側の壁の方に魔道具が供給されてるのはその為かもしれないから、魔族がどうしてそういうことに応じているのかはよく知らないけど、大方金に目がくらんだとか、魔道具を貴重なものだと思わないような奴が販売してるとか、いずれにしても、あまりいい気はしないわね、魔族にしても人間にしても裏切り者、ま、単なるうわさだけど」
「・・・」「・・・」「・・・」
「・・・」
噂・・・か・・・
「あ、もう日が傾いて来たかな・・・」
アクリスに言われて気が付き遠くを見ると、空がすでに青と赤のコントラストを描き始めていた・・・
「僕の止まってる宿屋はちょっと遠いところにあるからこれで!」
振り返り走り出すアクリス!!
「あ!アクリス!!」
「それじゃあ、」そう言って、アクリスは一瞬だけ右手を上げ顔をこちらに向け「またね!!」その言葉と共にどこともなく駆けて行った・・・
「私もこの辺でお暇しましょうかしら・・・」
今度は女魔道士の方、
「あんたもか・・・」
思わず俺は声を掛ける
「宿は決まってる?」
「いいや」「まったく」「ぜんぜん」
「来たばっかりだしねぇ・・・」
俺達はそれぞれ否定の言葉を返す、
四葉の言う通り、来たばっかで宿の手配など全くしていない、駆けまわっていつの間にかこんな時間になってたし・・・
「なら・・・あのあたりに宿街があるわ」
そこで、女性の魔術師が右人差し指で差した右側の通路、その先には、確かに、たくさんの家の出入り口が道路の左右に並び、それら前に、いくつもの、ベットの描かれた扉斜め上の看板だの、ベットの中に入った人間が簡易に描かれた看板だのが設置されたりたてられたりしていた
「どれにするかはあなた達に任せるわ、それじゃあね」
そう言って、魔術師の人も街のどこかへと歩き去って行く
「それじゃあ!!」
「さよなら~!!」
「またね~!!」
「ありがとう!!」
「じゃあな~」
「お元気で~」
それを俺達は見送って行き、
「さて、それじゃ、どの宿にするか決めないとな・・・」
と、カンテーラの声が響いたのだった・・・
・・・そういえば、裁定の剣の事、詳しく聞けなかったな、後、怪しい噂の事も・・・
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