森で相対せし地上げ屋炎獣一家 ダブモン!!3話/02
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「ここがクロスロードシティだ」
俺は、カンテーラの案内により、女神の神殿のある山、そのふもとにある大十字路の通る大きい町にたどり着く、
俺の名前は双運 良星(そううん りょうせい)、
頭に黒いバンダナを巻き、身体にまとうは左肩後ろに炎翼のブローチが付いた赤銅色の袖なしシャツ、
足にはジーパンをはいて、左右に大量にポケットを垂れ下げたベルトを付けている、
と、前にいる黒いローブのカンテーラが飛んで俺らを先導していく、にしても・・・
「遠くで見た時は中心に城でも立ってんのかと思ったけど・・・」
「正面から見ると違うよな、中央に大きな十字路が通ってて、その真上には何もない・・・」
「代わりに四隅にでっかい家がある・・・」
「私も最初来た時そう思ったわ~」
俺、兎白、鼓動、四葉が順々に感想を漏らしていく、
そう、この街は、中央の十字路で、斜め四つに街が分かれており、
全体に渡って、鱗のようなオレンジの三角屋根にクリーム色の壁と木のドアに口枠や逆U字枠に十字を組み合わせた窓枠の家々が立ち並んでいる、
無論、さっきの会話に出たように中央四隅には大きな家がある、城程ではないが、城をイメージさせる壁と塔のようなものがあり、そこそこデカい、
そこに向かい、俺達は歩いて行く、
「ここはクロスロードシティ・・・十字の道が中央を通る都市で元は女神のおひざ元の街として発展してきた、」
と、先を行くカンテーラが語り出す、
「北東、南東、北西、南西、四つの貴族に統治されており、昔には領土をめぐって大きな争いがあったものの、中央の道を誰の所有ともせず、その先の所有権も互いに主張しないという不可侵条約が結ばれ、争いは収まった、領主はその四貴族の子孫が四年ごとに回している」
へ~そんなことがあったんだ・・・
確かに、中央の家はちょっとずつ趣が違う・・・かもしんない、俺にはよくわからんが、兎白になら・・・
「確かにそんな感じだな」
と、当の兎白が話し出す
「南東の家は窓が少し大きい、太陽の光を取り入れるためかな、北東の方は高い木の手入れが行き届いてる感じがする、下もちゃんとしてるんだろう、北西の方か他よりも掃除が行き届いてる感じがする、南西は壁の色味がなぜか白いな、ロザリオも垣間見える」
「それに、そんなことがあったってことは、それにまつわる事件もあったんだろうね?」
今度は鼓動だ
「ま、それはさておいて、先を聞いてくれ、南の方が女神の神殿に続いてることはもう知っているだろうが、十字の道はそれぞれ、西ははるか教皇庁に続き、別名、救いの道と呼ばれる、その間に名のある寺院も多数存在しており、その道周辺は実質教皇庁の管轄になってる、この街は救いの道の最後、あるいは最初に位置する大きな都市なんだ」
「私、その手の話は興味ないんだけど・・・」
「まぁまぁ、四葉さん、ちゃんと聞いておきましょうよ、何かの役に立つかもしれないですよ」
と、四葉の右肩そばに着くウィルピー
「ま、俺もそんな話に興味はないが・・・」
「めずらしく気が合ったわね・・・」
そりゃこっちの台詞だ
と、右肩の方からチラリと少し、カンテーラがこちらを向き、
「話し進めていいか?」
「いいぜ」いいぞ」いいよ」いい」
「なら続きを、」そう言って、正面に向き直り「北に続くは大陸西中央に存在する森林国家ウッドリア、さらにその北は海設国家シーゴルンの領土となっている、」
ウッドリア、それに、シーゴルンか、
「ウッドリアは他の土地よりも森林の育成が早いらしく、主な林業製品から製紙、およびガラスなどを輸出している、木材はここを当てにしている、もしくは頼っているような国も多い、シーゴルンはこの大陸では数少ない外大陸と貿易を行っている国だ、故に珍しいものも多く経済的にも発展している」
「外大陸?「外大陸?「外大陸?「外大陸?」
「しかしながら、外大陸はこの大陸よりも発展していない、この世界で一番発展しているのはこの大陸だろう、」
そうなのか・・・?ま、女神様もいるしな・・・
「で、東の方は魔道都市マジカラに続いている、」
魔道・・・そういえば・・・
「あのリビエーラってのも魔の力を使ったとか言ってたな、何か関係あるのか?」
「魔道と魔の力は同一のものだ」
「そうなのか?!」
「悪いが、あまり詳しくは教えてもらってないんだ、」言いつつ右手を肩前でヒラヒラさせ「気になるんならマジカラに赴いた方がいい」降ろす
「ううむ・・・」
「先に行くぞ、また、この街を正式名称で呼ぶ人間やダブモンはほとんどいない、なぜなら、領主が変わるたびに街の名前を変えてしまうため、誰も覚えようとしないのだ、ここはクロスロードシティ、それでいいじゃないか」
なるほど・・・誰の受け売りか知らないが・・・ん?
街の中央にまばらに人が立ち止まってる・・・?
「おいおい、危ないな、中央部分は立って占拠することも禁止されてるって聞いたぞ」
「なんか、面白そうな匂いがする・・・」
「良星がそう言うならそうなんだろうな」
「行ってみようよ」
「あ、待ちなさい!」
「です」
そうして、俺達は街の中央に来る、するとその理由がすぐに分かった
右前、北東からヴァイオリンの音だろうか、それに似た弦楽器の重厚な音が聞こえる、
左前、北西からはトランペットか、管楽器の勇壮な音が聞こえる、
右後、南東からはピアノの、軽妙軽快な打弦楽器の音、
左後、南西からは木琴だろう、流麗流化な盤音、
おそらく、俺達の世界の楽器と同じ感じがしつつも音が高かったり低かったり重かったり軽かったりで違うから、おそらくは違う楽器で、聞いたことも無い曲でそれぞれ曲も違うのだろうが、それらが不思議な一つの曲となっている・・・
「ここは文化の交差点でもあるからな・・・」
カンテーラ・・・?
追ってきたであろう、右手後ろのカンテーラの方を向く、カンテーラも曲に聞き入っていたのか、少し右上の宙を見上げていたが俺に気付いたのか俺の方を見据え、
「いろんなものが入ってくるんだ、絵も、文も、音も、ただ、一つの街の物だから、不思議と似かよる部分もあるし、時にはこういうことも起こる・・・」
ふむ・・・
「さ、いつまでも突っ立てるわけにはいかないぞ、役人が来る前に離れなきゃな、とりあえず、北の方でいいか?」
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