氷漬け罪の雪女と氷精霊との出会い ダブモン!!6話/23
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「う・・・ぐっ・・・」
スノゥメアが倒れ、動かなくなる・・・
「さ、スノゥメア、」
フリィジアがスノゥメアの側に降り立ち、話しかけて行く、「とりあえず外に・・・」そして、手を伸ばす、っとそうだ、
「カンテーラ、ウィルピー」
「了解」
「鬼の居ぬ間、ってやつですね」
俺の言葉と共に、大きく回って良星達とカンテーラ、ウィルピーがあの男の氷の元に近づいていく
「何を、するつもり・・・?」
「心配しなくていいよ、俺達はあの男には興味ない、あの男が持ってる剣に興味があるんだ」
「・・・?」
目を見開ききょとんと呆けた顔をするスノゥメアをしり目に良星達が氷に近づき、カンテーラとウィルピーが上の方から剣を見る
「どうだ、カンテーラ?」
「ウィルピー、どうなの?」
「これは・・・」
「違いますね」
やっぱりそうか・・・
「強い氷の力を宿す魔剣、ってやつだな、魔力があふれてる」
「ですね」
「じゃあ、どうすんだよ、騎士団が探してたとか言ってたが、例え騎士団の所有だとしても、魔剣、魔道具なら、元は魔族の・・・」
「そうよね・・・」
「装備の簡素さから見て、容易に強力な魔道具が与えられる地位にいたとは思えない、おそらく、どこかから奪ったものだろう、しかし、どうするのかは、今の所有者に決めさせたほうがいいんじゃないか、なぁ、スノゥメア?」
「・・・」
カンテーラの声に、スノゥメアが顔をうつむかせ、考えている・・・
「・・・、あなた達が好きにすればいいわ、私はそんなものに興味は無い・・・」
と、フリィジアがこちらに顔を向け
「どうする、相棒?」
え・・・?
「俺が決めるの?」
「この場の主導権は相棒にあると、私は判断したわ」
「兎白!」鼓動の両手をメガホン状にしての応援「ちゃんと決めてよ!」
「兎白、」良星の少し気取った斜めの角度からの声掛け「決めてやれ」
「ま、私はどうでもいいわ」
「です」
・・・どうすればいいんだろ・・・
騎士団に渡す?でも、あれを求めて魔族がせめて来たら、でも、魔族に渡したらまたそれで人間に危害が及ぶかも・・・
俺の一存で決められる事じゃないかもしれない、それでも・・・!
「・・・」俺は目を見開き、決断を口にする
「壊そう!」
「決まりね!」
「壊せる?ウィルピー?」
「氷という属性を利用して干渉すれば不可能では無いと思いますですよ」
「なら、氷の属性を持つダブモンならどうにかできる、って解釈でいいわけ?」
ウィルピーがニコリとその目を笑顔ものに変え
「はい、それでOKです」
「・・・私がやる・・・」
「スノゥメア?」
スノゥメアが近づき、良星達が離れる中で氷に触れると、氷の剣の部分だけが浮き砕け、スノゥメアが冷気でそれを浮かせ、右手に力を込めた
剣が折れるような音を立てるが、一向に変化が無い・・・多分、力が足りてないんだ・・・
「私もやるわ」
「フリィジア!?」
フリィジアがスノゥメアに近づき真正面から
「友達、でしょ!」
そう言い放って横に立ち、その手を伸ばして冷気によって干渉していく・・・
そして、二者が剣を見つめ、しばらく、剣のきしむ音が大きくなっていって・・・そこでフリィジアとスノゥメアが力強く右手を握ると、
剣は中程から真っ二つに折れ、白く、力の抜けた色に変わって落ちる・・・
落ちたものをまじまじと近づき見降ろすカンテーラとウィルピー・・・
「完全に力が抜けてますね、魔力の再チャージとかも無いと思いますです」
「完全に無力化したな、ま、後は村長通して騎士団にでも渡して、お手並み拝見といった感じかな」
できれば、そこから元の魔族の方に行ってくれればありがたいけどね・・・
「さて、次はこいつね・・・」
すると、今度は、フリィジアが男の方に視線を移す、瞬時にスノゥメアが掴みながら言い募る!
「ちょっと!私から・・・私からこの人を奪う気!?」
「奪うって言っても、この人には家族もいるんでしょう!?」
「そ・・・それは・・・」
事ここにいたり、スノゥメアは目を伏せフリィジアから離れ考え直す、
恐らく、ずっと感情に振り回され、その事は頭の中に入っていなかったに違いない、
それが、フリィジアの言葉によってようやく気付くことができたのだ・・・
「奪いはしないわ、この遺体を家族に引き渡して、葬式でもしてもらって、お墓を立てて、お墓参りなら、その後、すればいいじゃない・・・」
「・・・わかった・・・」
つぶやくようなスノゥメアの言葉、
「そうね・・・」
スノゥメアが涙を流しながら、目線を男の方に向ける・・・
「この人には・・・親も、兄弟もいるものね、私だけじゃないのよ・・・」
スノゥメアの頭には、今言った人たちの顔が浮かんでいるのだろうか・・・
「じゃ、余計な疑いがこないように余計な氷は取っ払って、衆目に晒さないように布か何かでくるんだ方がいいわね・・・」
「お手伝いしますよ」
唐突な声は出入り口の方から、そこにいたのは、氷の尾と合わせ九本の尾を持つ白狐?
「フブギツネ!?」
「よかれと思ってやったことなのに、色々事態をややこしくしてしまったようですね」
「そんな事は・・・」
「いえ、いいんです、色々証言できるのがいた方がいいでしょう?布も適当なものを用意して差し上げます、それに、娘も世話になったようですし」
「娘?ああ、ユキギツネちゃん」
げっ!?あのユキギツネ、フブギツネの娘だったのか!?
「まったく、あの子と来たら、何かを食べ始めるとすぐに夢中になって、母親として困りものです・・・」
あ、ああ、確かに・・・
「まぁ、侵入者に会ったのに命があっただけ良しとしましょう、傷でもついていたら容赦しませんでしたが・・・」
ははは・・・
・・・そうして・・・
氷を砕き、布に男と元魔剣を包み、いつの間にか元に戻ったフリィジアと、スノゥメア、フブギツネ、ウルフィスと共に俺達は村の出入り口まで戻ってきたのだった・・・
「スノゥメアちゃん!」
そこに駆けてきたのは、厚手の布のコートをまとった中年の女性
「おばさん!」その女性がスノゥメアの前で立ち止まり見つめる、
「よかった、封鎖された洞窟にいたって聞いてたから、大丈夫だった!?」
「あの・・・おばさん・・・」
戸惑うスノゥメア
「あなたがうちの息子を凍らせたって噂を聞いたけど、あなたはそんなことする娘じゃないよねぇ、あら、ウルフィス・・・」
「わぉう!」
ウルフィスがその女性に向かって駆けより、女性が優しくその頭をなでる
「よしよしよしよし、でも、軍に行ったはずのウルフィスがなんで」スノゥメアに顔を上げながら「あなたと一緒に・・・」疑問を呈した
あの男の母親かな、それなら・・・
「あの・・・ここでは難なので、一緒についてきてもらえませんか?」
「あら・・・あなたは・・・」
「俺達は向こうに通るために洞窟の調査をしていたものです、ちょうどいいですから、証人として、一緒に村長の家まで来てもらいませんか、そこで全てをお話します、で、良いよね、スノゥメア、フブギツネ」
「・・・そうね、そうしてもらった方がいいわ・・・」
「え・・・ええ・・・いいですけど・・・」
・・・そうして村長の家まで行き、村長を含めた皆で、布を囲む・・・
「それでは、これから起こることを覚悟して見ておくように、特にあなたは・・・」
「・・・わかりました・・・」
フブギツネより視線を送られたおばさんが表情を硬くする、
ここまで来る短い間に何を言いたいのか大体察しがついてしまったのだろう・・・
「それでは開きます・・・」
フユギツネが布を開くと、そこにあったのは息子の死体、おばさんは泣きながら抱きついていく・・・
「そんな・・・そんな・・・」
「私が見つけた時には、すでに息は無かった・・・」
語り始めるスノゥメア・・・
「私は、取り乱して、彼を自分のテリトリーに連れて行ってしまったの・・・」
「あなたが・・・やったわけではないのね・・・?」
「どういうわけか雷の魔力が残っていました、死因があるとすれば、それでしょう・・・」
「魔族との戦いで相手に雷の魔法をかけられた、と見るのが妥当だろう、周辺のダブモンからも証言は得ている、疑うなら、思う存分調べるといい・・・」
スノゥメアの言葉に補足するフブギツネ
「・・・いいえ・・・言ったでしょう、あなたがそんなことする娘だとは思っていないって・・・」
「おばさん!」
涙を流し合い、抱き合うスノゥメアとおばさん・・・
「して、騎士団の言っていた剣というのは・・・」
「そいつの上に乗っかってるだろ?」
村長がそう言って、剣の方に目を向ける、
「こんなものを騎士団が探していたのか?すでに折れてるじゃないか・・・」
「私が壊したんです、魔力で彼を害しているものだと思って・・・」
「ぬぬぬ・・・そうか・・・」
村長が唸った後、一瞬ため息をついた
「致し方ない、後で騎士団に事情を説明し渡すとしよう・・・」
・・・そして、翌朝、宿屋を出て、俺達は洞窟の向こうまで移動する・・・
台地の下、先には森に埋もれかかった道が見える
「結局ただ働きか・・・」
「ですねぇ~」
四葉さんのつぶやきに、ウィルピーが同意した
「仕方ねぇだろ、あの後、教会で何か仕事受ける雰囲気でもなかったし・・・」
「仕方無いよ・・・金欠だけど・・・」
「ちょっときついよねぇ・・・」
「ま、無駄遣いしなけりゃもうしばらく持つだろ」
そして、俺達は、出迎えに出てくれたスノゥメアとフユギツネの方を振り返り
先んじて俺が話し出す
「こっちでいいのか?」
「ええ、壁の反対側、海側です」
おだやかなスノゥメアの言葉
「あの剣、結局あんたが壊したってことになっちゃったけど・・・」
「構いません、私が壊したのに手を貸したのは事実、迷惑をかけたのも、これぐらいは請け負う所存です」
「そう・・・じゃあ、頼んだよ!」
「はい!」
ふっきれたような笑顔だ
「まったく、急に来て事態を解決したかと思えばとっとといくのか」
「旅人とはそういうものだと思うわ、フブギツネ」
「ま、確かにそうかもしれんがね、しかし、あの魔剣を見に来たらしいが、何を探してたんだい?」
「剣、裁定の剣を・・・」
「ああ、あれか・・・」フブギツネは少し思い出すように顔を上げつつもすぐにこちらに視線を戻した「君たちの旅の目標はそれか?」
「ちょっと違うけど、今は・・・」
「人間達は、いつもそれを探しているわね・・・」呆れるようなスノゥメアの言葉・・・
「でも、聞いたことがあるわ、海から剣が引き上げられたって、だけど、聞いたのはこれくらいよ」
「私も、聞いたことがあるな、ただし、単なるうわさだ、信憑性があるかどうかも疑わしい・・・」
「信憑性が無い物でも、情報が無いよりかはましだ」
カンテーラの言葉、
っとそういえば・・・
「そういえば、フリィジアは?宿に泊まる前に家に帰るって、急いでどっか行っちゃったけど・・・」
「相棒~」
聞こえたのは真上の方、見上げると、いきなりフリィジアが降ってきて、俺の顔に抱き着いた!?
「うわっ!フ、フリィジア!?」
数瞬、俺にほおずりした後、顔を離し、向かい合う格好となる
「ど、どうしたの・・・?」
「私、両親から、旅立つ許可をもらってきたの!」
「へ、きょ、許可!?」
「そう、私達、ずっと一緒にいられるの!」
ずっとは無理だと思うけど・・・
「でも、どうしてあんなところから・・・」
「家から上の台地をかっ飛ばしてここまで来たのよ!」
「また無茶を・・・」
呆れるフユギツネ・・・
「だが、ずっと一緒は無理だと思うぞ」
「だね」
良星と鼓動の言葉
「うっさい、外野は黙ってなさい!」に大きく顔向け反論して再度俺の方を向くフリィジア「ね、相棒?」
いや、俺も無理だと思うなぁ・・・
・・・こうして、にぎやかな同行者を得て、俺達の旅は続いていくのだった・・・
ダブモン!!6話 氷漬け罪の雪女と氷精霊との出会い 終わり
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