水晶の島のデモの末路 ダブモン!!9話/09
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「なぁ、なんであんなこと言ったんだ?四葉のやつ行きたそうにしてたのに」
「さぁな、俺は心底勘だが、ウィルピーのやつがあんなこと言った理由はわかるぜ」
「なんでだよ?」
「四葉のやつを危険なところに近づけたくないのさ、今回の大規模デモ、恐らく、中央が一番規模がデカい、だから、何かあった時のヤバさも一番中央がデカいんだろうさ」
あ、なるほど・・・
俺は、走行での振動と音が響く中、首都に向かう顔が前に長い茶色い毛皮纏う短足短腕の二足歩行が引く大き目の人力車にカンテーラと並んで乗っていた、
人力車と言っても、そう見えるだけで引っ張るのは2体のダブモンだし、何十人も乗っている、木製の屋根なし馬車のようなものである、
カンテーラの横に一緒に神父さんも乗っており、こちらはいつもと違って暗く、深刻な顔だ・・・
「待て」
ん?カンテーラ?
カンテーラが視線を変えずに
「ここで降りた方がいい、降りて別ルートを探すぞ、俺が案内する」
思わずカンテーラの方を見る俺
「なんでだよ?」
「この先に多数の気配がある、一直線で壁の様にならんでて、明らかにデモ隊のそれとは違う・・・」
3バカたちと別れ、私はウィルピーと一緒に船に乗っていた、
スーオケリという、三角耳に短いモグラのような顔、全身を草茶色の毛皮が覆い黒く丸い目で長い尾を持つダブモンが短い手足で二足歩行で立ち、二体がかりで両側でオールを使い漕いでいる、布を屋根とした何十人も乗れそうな、草履の裏の様に椅子が並ぶ幅広の木の船
「いや~こんな状況で三人もお客さんが来るとはな、なぁ、あんちゃん」
「まったくだな弟よ、定期船と言っても今日は客がこなさそうで漕ぎ損になるところだった」
周りに島々見える広い海だが、漕ぎ手のパワーのおかげか、遅いという印象はない、恐らく、兎白達と鼓動達も似たような状況に違いない、
ついでに、私から見て左が兄で右が弟である
「で、なんであんたまでこっちに来てるわけ?」
「たまたまあの島に用があっただけですよ」
と、私の斜め後ろに乗るのはレファンだ、
「いや~広々とつかえていいですね、寝転ぶことも出来そうだ」
「いつもはかなりぎゅうぎゅうなんだが、今日は皆首都の方に行っちまってるみてぇだな」
「俺達も一区切りしたら北か首都かにいくべぇ、両親の言葉で人同士の争いに手を貸すつもりはないけど、見に行くだけなら・・・」
「あら、ごめんなさい」
そんなつもりだったとは・・・邪魔しちゃったかしら?
「なぁに、いいって事よ、どうせ何回かは運行するつもりだったし、な、あんちゃん」
「ああ、弟よ!」
「四葉さん、先の方に船が見えますよ?」
え?
右隣りのウィルピーの言う通り先の方を見ると、あれは・・・
この船より大きく立体的なガレー船、前後先に丸い飾りがあり、上には弓矢や槍を携えた兵士たちが乗っている!?
それがいくつも・・・
「げぇ~検閲か!?」
「落ち着け!弟よ!ただの検閲を船上で行うわけがないだろ!」
「そこの船!」
と、その内の一つの船が近づいてきて、
上より立派な青銅色の金属の兜をかぶり、色とりどりの革の鎧を着た隊長らしき人物が見下ろしてきた!?
「人を乗せているな、ここから先へは立ち入り禁止だ、今すぐに捕縛する」
すると弟の側がかなり大げさに目を見開き口を開け
「えええ~捕縛だなんて殺生な!?引き返しますんで、お許しを!」
「すみません兵隊殿、立ち入り禁止になったとは知らず、今すぐに引き返します」
漕ぎ手二人があわてて頭を下げるが、隊長らしき人物は表情一つ変えやしない・・・
「ならん、ここは何人足りとて通過させるなと言われているのだ」
「妙ですね」
「本当ね」
「確かにそうですね」
ウィルピーの放った言葉に私とレファンは思わず同意する
見た所、妙な航路を通ってきたわけじゃない、海のど真ん中なわけだし、立ち入り禁止区域という感じでもない、
そもそも、この船は定期船、漕ぎ手たちの会話から、いつも通っているルートという感じがするのだが・・・
「まるで、一人でも多く捕縛したいとでも言いたげな言い草ですね・・・」
レファンの言い分はどうかわからないが・・・
「では乗っている人間を改めさせてもらう」
「ええと・・・乗っているのは外国人の子供二人とダブモンです」
「そうだな、それ以外の客は乗せていない」
「外国人の子供?」
男がこちらを覗き込んでくるが、いるのは私とウィルピー、それにレファンのみだ
「それならいいか・・・」
え?
私が疑問を勘案する間もなく、隊長っぽい人は姿勢を上げ漕ぎ手のダブモンたちを一瞥し
「よし、通れ」
「へへっ、どうも」
「すみません」
なぜか船が避ける中で、定期船が先へと進んで行く・・・
「どうなってんのよ、普通逆でしょ?」
「子供やダブモンだからですかね?」
「恐らく、外国人はデモに参加しないと考えているかもしくは・・・」
「もしくは?」
「もしくは?」
私とウィルピーはいつの間にかレファンの顔を見ていた、そこにはいつもの笑顔とは違う顔に力の入った少し緊張した表情があった
「外国人がデモに参加することでデモを排除する正当性を得ようとしているのかもしれません、外国からの手先だ、と言い張ってね」
ええ・・・
「とにかく、今は運良く進めたことに感謝しましょう・・・」
「ここがスッドヴェストか」
「いやーついてよかったわ・・・」
俺とフリィジアは、港の向こうに道の左右に森が広がる中で先の方にあるき出す・・・
「にしても、何だったのかしらね、あの軍船・・・」
「さぁ、子供だからか見逃してもらえたし、とにかく、この大通りを先に進めば法案院にたどり着くって話だし、とにかく進もう!」
僕とイグリートが辿り着いたのは、先の方に山が見えるジャングルと道の広がる島・・・
なんか、軍船が来たけど、通してもらえた・・・
「ともかく、この道を行けばいいんだな?」
「そうみたい、国の重要施設だからわかりやすいようにしてるのかも」
「そうかもな、ま、どの道わかりやすい建もんだろうしな」
・・・俺達は人力車を降ろしてもらい、散り散りに別れ、行って行た、俺達についてきた数人の他、人力車に残ったもの、別ルートを探して行ったものなど・・・
ここにいるのは、カンテーラが見つかりたくないなら別れた方がいいと言ったのに付いてきた強情な奴らである、
「人数は少ない方が見つかりづらいんだがな・・・」
「やむをえん、今回の事に皆、警戒心を抱いているんだ」
牧師が状況を説明してくれた
カンテーラの案内により、つた等生える南国風味の森の中を行く俺達、しかし・・・
様々な色のレンガで立った人がいなさそうな家々があり、道がきちんと舗装され、その先にある綺麗な街並みに入るその真ん前、やはり、兵士たち何人かが見張りに立っていた・・・
「ここが一番警備が手薄なはずなんだが・・・」
カンテーラの声に、他の場所はこれ以上に厳重な警戒網が敷かれているのだということを、俺は自覚したのだった・・・
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