バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

氷漬け罪の雪女と氷精霊との出会い ダブモン!!6話/21

 
氷漬け罪の雪女と氷精霊との出会い ダブモン!!6話/21
 

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 「ねぇ、村から離れたところまで来て素振りしてて楽しいの?」
 私が彼と出会ったのは気まぐれに洞窟から出た時の事である
 「誰にも邪魔されずに出来るのが良いんだ」
  彼が普遍的な顔で普遍的な楽しそうな顔で普遍的な素振りをしながら答えた
 「楽しいの?」
 「先生に言われてやってる、もう日課になっちゃった」
 彼は幼いころからそうだった、
 雪積る林のそばで何かやっているのを、見つけたのが最初である、もちろん木刀での素振りだ
 その後、よく行く村の子だと知った、村で見かけなかったのは彼が室内か屋外で素振りしてるか、動物相手の自警団についてよく見回りに行ってるからとも
 「ねぇ!」
 その子が唐突に素振りを止め、こちらを見る、まっすぐで精悍な瞳・・
 「ん?なあに?」
 「ダブモンなんだろ?適当に攻撃魔法っぽい技使ってよ?」
 「攻撃魔法?」
 「この辺り、壁に近いだろ?だからさ、魔族の手から村を守る騎士になりたいんだ!、だから、そういう実践の練習がしたいんだよ!」
 騎士ねぇ・・・
 「いいけど、氷の術しか使えないわよ?」
 「それでもかまわない、その術を使って、僕が氷の術に当たるか、君に木刀を当てたらそれで終わり」
 「思い切り振るったりしないでね?」
 「わかってる、少し触る様に当てるだけにするからさ」
 互いに離れた所に移動して、そこから彼が駆けてくる、
 私が適当に腕を振ってつららを三本ほど生成、発射すると、一本を木刀で弾くものの、もう一本が彼の肩に当たって吹き飛ばし、その背を雪に沈めた
 「も、もう一回!」
 立ち上がり駆けだす彼に同じようにすると、今度はつらら三本を大きく回って避け
 「じゃあこれ!」
 今度は手の平より吹雪を吹きかける・・・彼は両腕で覆うようにそれを防ぎ
 「う、うわっ!腕が!」
 腕の表面吹雪を防いだ面全てにものの見事に氷が張り付いた
 「あははは!大丈夫よ、腕についた雪が氷になっただけだわ」
 凍りついた腕を、近づいてさわり、砕いてあげる、だが、彼は残念そうに少し目が潤みながら顔を少し伏せた
 「ううっ・・・まだまだだね・・・」
 「魔法に対抗したいんでしょう?だったらまた付き合ってあげるわ・・・」
 ・・・
 またも、今日は今日とていつもの林の側での素振り、私はそれを見守っている・・・
 あれから、彼と街でちょくちょくあうようになったし、彼の家族とも、なんだかんだで仲良くなった、特におばさんなど、親しくしてもらっている・・・
 今日は・・・魔術対策の練習、しないのかな・・・?
 彼から言いださないとやる気になれない・・・それとも、私から何か言いだそうかしら・・・?
 座っていた岩から立ち上がり、何かを口に出そうとした瞬間、足に衝撃が走り、吹っ飛ぶ!
 「きゃあっ!」
 尻餅をつきながら衝撃が通った先を見ると、猪だ!なぜか興奮状態、近隣の肉食獣にでも追いかけられたか・・・!?
 猪の足に力がこもり、二度ほど前左足を地面に叩き付けた後、駆け出してきた
 「危ないっ!」
 そこにとっさに彼が入り込み、その木刀を振り降ろす!
 ドガッ!
 木刀は猪の額に決まったものの、猪は少し下がったのみでもう一度突進してきた!
 「効かないならこっちで・・・」
 猪の突進してくるも、彼は、避けることも防ぐことも木刀を振り降ろすこともしなかった、何を!?
 「ここだ!」
 そこで、木刀の柄を思い切り猪の額に叩きつけた!
 めり込む木刀の柄、これにはさすがに猪も想い切りひるみ、方向転換して去って行く・・・
 「もう人やダブモンを襲うんじゃないぞ~」
 彼はそう猪に叫ぶと、後ろに振り返り、私の手を取り、立ち上がらせる
 「大丈夫?」
 「ご・・・ごめん、何か援護でもできればよかったんだけど・・・」
 「ははは・・・いいよ、猪には慣れてないでしょ、僕は何度か遭遇してるし、狩りで獲ったこともある」
 「そ、そうなんだ・・・」
 「足の方は?」
 「ん?」
 猪がぶつかった足を上げて振るも、痛みなどは徐々に収まって行っている・・・
 「大丈夫、これでも、人間よりも丈夫なつもりよ」
 「ははは、よかった!、ん?血の匂い・・・?」
 林の方からする匂いに遅ればせながら、私も気付く・・・!
 「すこし、様子を見てみよう、術なんかはいつでも使えるように・・・」
 「わかってるわ、もうへまはしない・・・」
 林の中、血の匂いを追って行く・・・
 すると、唐突に、一匹の狼が血を流して倒れているのが見つかった・・・
 「これって・・・?」
 「まさか、さっきの猪にやられたのか?餌を取ろうとして反撃にあったんだ、他の狼は・・・」
 「うぅぅぅ・・・」
 倒れた狼の奥の木の根元の穴から、小さなうめき声がする・・・まさか・・・
 彼が穴を覗き込むと、
 「まさか、こいつだけなのか・・・?」
 彼が穴から顔をどけるとそこには、一匹の子供の狼がいた・・・
 「他の狼は・・・?群れの仲間や番いはいないのかな・・・?」
 「ちょっと待って・・・」
 神経を集中させると、少しずつだが、この辺りのたくさんの狼の残留思念、それと・・・
 足元の雪を掘り起こすと、そこから、狼の頭蓋骨が出てきた・・・
 「他の狼はみんな・・・死んだと思うわ・・・」
 「そういえば、狩人の人が行ってた、狼の中で病が流行ってるみたいだって、それで、この辺りの狼の数が少なくなってるって・・・」
 そして、彼は子供の狼の方を見る・・・
 「ねぇ、こいつ、村で飼えないかな・・・」
 「私に言われても・・・」
 「ちょうど、狩猟犬が欲しいって話を聞いたんだ、こいつなら替わりができるかも・・・」
 子供の狼を見つつ話していく彼・・・
 「でも、流行り病で生き残った狼でしょう?」
 「村の狩人さん達に訊いて、それでもダメだったらあきらめるよ、流行り病ももう二、三ヶ月も前の話だし、過ぎ去ってると思う、他に仲間もいないみたいだし、とりあえず、村の人と相談してみるよ」
 ・・・そうして数年・・・
 「ウルフィス!お前はそこで見ててくれ!」
 「わぉお~」
 「さて、どこまで腕を上げたかしら?」
 つららを三本飛ばすと、今度は正面から向かってきて高速の木刀三振で弾き切る
 「はっ、たっ、てやっ」
 「それならこれは?」
 続けての吹雪の吹きかけに、今度は足の速度を上げ、姿勢を低くして強引に突っ込んできた、
 顔の凹凸の先の方に雪が張り付いているものの、凍っているわけじゃない、
 そのまま木刀を振るって、私の腕に当て
 「見事・・・」
 「う、うわわわわっ!」
 止まれなかったのか、バランスを崩して私に突っ込み、私を押し倒す形となる
 彼の体温と匂いが一時、私を高潮させる・・・
 「あ・・・ご、ごめん!」
 が、それも少しの間だけ、彼はすぐに私からどいた、
 「ううん、いいの・・・」
 そうやって、雪の上で、私と彼は雪が降り積もった林の外側に目をそらし、となり同士に座る格好となる
 そこに、私達に向かって、ウルフィスが駆けてくる
 「あら!」
 思わず、ウルフィスの毛皮をなでる、ふかふかとした暖かな手触りが伝わる
 「大きくなったわねぇ・・・」
 「もう、猪も一匹で獲れるようになったんだ」
 「へぇ・・・そう・・・」
 感心し、人懐っこく私を見るウルフィスを思わず見る
 「あの・・・さ」
 なぜか、いつの間にか林の外に向かって目をそらしていた彼、そして、その横顔・・・
 「ん?」
 「今度、軍に入るための試験を受けに行くんだ、城の方に、ウルフィスも、軍用犬として、一緒に・・・」
 「それは・・・」
 少しさみしくなるなウルフィスも、彼も・・・か・・・
 「それでさ・・・」
 「それで?」
 「その、立派な騎士になったら・・・その・・・迎えに来るから!!」
 「え・・・!?」
 彼が気持ちが高ぶったのか立ち上がり、私を見据える・・・
 「だから!待っていて!必ず!迎えに来るから!!」
 ・・・そして、彼は城に行った・・・
 噂を聞いたのはまた数年後の話である、
 近くの戦いに参加するため、ついでに村に立ち寄ったと、村の人達から聞いたのだ、
 凡庸の装備や彼自身の話からどうやら、一兵卒だったらしい、ウルフィスもいたとか、
 軍の試験に合格できたらしいことはうれしいものの、立派な騎士になるのはまだまだ遠いようだ、
 時間が無かったからか、ああも見栄を切ってしまったせいか、私に会いに来ることも無かった、
 ・・・こうなったら、折りを見て、手紙でも出して彼のいる街に乗り込んでしまおうかしら・・・
 だが、近くでの戦い・・・とすれば、最近壁を崩し陣を張った魔族との戦い、その援軍だろうか・・・
 それであるのならば下手をすれば生き残ることすら怪しい、彼の事だ、武功を上げようと前線に出ることも考えられる、
 ん?これは・・・魔の気配かしら・・・?洞窟内での冷えた空気の中、壁の向こうと同じ気配が、洞窟の入り口に・・・?
 魔族がここまで攻めてきた!?彼はどうなったのだろう、いずれにしても、様子を見に行かないと・・・
 他の警戒するダブモン達と一緒に警戒を強めながら進み、たどり着いた時、洞窟の入り口には、
 すぐ入ったところ少し脇に強い魔力を放つ剣が落ちていた、恐らく、感知した魔力はその剣から、
 そして、剣を持っていたと思われる倒れた一人の兵士と・・・その兵士を心配そうに目端を下げ見下ろすウルフィスがそこにいた、
 え、なんで、ウルフィスがここに・・・ま、まさか・・・!?
 急いで兵士の体と顔を抱き起し上げると、そこには彼の顔があった・・・まさか、そんな!?
 生命力を感じない、命を奪ったのは残っている雷の魔力の気配からか、ここまでの雷を喰らえば・・・、いや、でも・・・
 思わず彼の状態を五感その他で確かめる・・・
 すでに心臓は動いていない、そして、体の硬直と温度からすでに動かなくなってかなり時間が立っているようだ・・・、そして、洞窟の寒さからか、冷えて凍ってしまっている・・・さらには、もうすでに、彼の全身の細胞も崩壊状態、感知できる気配も嫌な予感ものそのもの、つまり・・・
 いや、いや、こんなの・・・いやぁああああ!!
 
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