バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

月夜と私の過去と光の城 ダブモン!!4話/12

 

月夜と私の過去と光の城 ダブモン!!4話12
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 「ごめんなさい、お見舞いに来てくれて・・・」
 殺風景な病室で、風鳥歌語理が元気なく微笑む、
 白い無機質な部屋に背を右壁に預けた白いベット、奥には鉄のI字点滴掛けがあり、
 掛けられた透明のパックからは、伸びた透明管が水色の病院着を着た歌語理さんの右腕に繋がっていた、
 他にも点滴掛けそばに木でできた引き出し付き台やその上に灰色のテレビなどがある
 ・・・歌語理さんが似合うのは華やかなステージの上だと思うのに、こんな・・・思わず歌語理さんの顔を心配と悲しさが入り混じる気持ちで見てしまう・・・
 「そんな、倒れたって聞きました、働きすぎですか?少し休んだ方が・・・」
 力なく歌語理さんが首を横に振る
 「ううん、そうじゃないの・・・」
 「そうじゃ・・・無い・・・?」
 「もうそろそろ報道あると思うけど・・・」
 「報道・・・ですか?」
 私は急いでベットを横断しテレビの電源スイッチを押し、チャンネルを回す、
 その中のニュース番組の一つに、うちの社長が、大量のフラッシュ焚かれる中で立っている図が写しだされる、
 そのスーツ姿の年の行った心痛な面持ちで口を開く
 「風鳥歌語理はがんだと判明しました、つきましては、今後の仕事を全てキャンセルし・・・」
 「嘘・・・がん・・・?」
 思わず歌語理さんの方を見つめてしまう
 「嘘ですよね・・・だって、まだ20そこそこですよ!?」
 歌語理さんが今度はかすかに横に首を振る
 「お医者さんが言うにはね、このままじゃ、長くは生きられないって・・・」
 「そんな・・・」
 「なんて顔をしてるの、ちゃんと治療すれば治るわよ」
 「ほっ・・・よかった・・・」
 少し安心した気持ちで、テレビから離れる私、歌語理さんは優しげなまなざしで私を追い、
 「でも、しばらくは仕事にもレッスンにも行けないわね、そうだ、新しい歌は聞いてくれた?」
 「はい!もちろん!!」
 月と恋のお話を歌った曲だ・・・落ち着いた雰囲気の・・・
 「それじゃあ、そうね・・・私以外に・・・お気に入りの曲はあった?」
 「え・・・それは・・・」
 正直、意外だった、こんなことを聞いてくるなんて・・・
 「ええっと・・・そうだ、これ!!」
 ポケットから画面携帯機スマホを取り出し、画面を指で五度ほど押し、ダウンロードしていた音楽を再生させる
 「ほら、これ!」
 流れ出す熱い曲調は、ポップとシリアスが交互に展開され、後にハッピーエンドを叩き出す
 曲を聞いた歌語理さんは少し楽しそうに笑みを浮かべ
 「ふふふ・・・いい曲だわ・・・」
 「うん、なんていうか、ものすごく楽しんで曲を作っている感じ」
 「そうね、歌や言葉が無いのに情景が映し出されるようだわ・・・」
 「あ、曲終わる、次はね、さっきの曲の人が最初にネットにアップしたっぽい曲なんだけど・・・」
 そうして、ほんの少しの時間が過ぎて行く
 「歌語理さ~ん、そろそろ検診の時間で~す」
 そんな中で、後ろからかけられたであろう、看護婦の声に思わず気が付く
 「ふふ、ありがとうね」
 後ろから扉の開くガラガラ音を聞きながら、歌語理さんが微笑んだ
 「私は、あなたに未来を歩いてほしいの、これからも音楽をたくさん聞いて、好きな音楽家を増やしなさい、私はしばらく退場するけど、すぐに戻ってくるから、ね」
 「あ・・・はい!!」
 ・・・そうして、その日は過ぎ去った・・・
 その後、私は事務所に呼び出されることになる、仕事の方針についての話だった・・・
 そこで、最上階にある社長室に行くため、一階奥で、エレベーターの上に行くためのボタンを押し、待っている最中、
 「そういえばさ、事務所の屋上のウワサ、知ってる?」
 「最近、お城が見えたってあれ?でも気になって翌日行ってみたら何も無かったんでしょ?」
 後ろの方から声が聞こえた
 「あれ、蜜羽四葉じゃない?」
 「やだぁ、本当に・・・」
 横からほんの少し後ろを見ると、入り口左、向こうから上に上がる階段の影に少し年上のアイドルがいた、
 ポニーテールの茶髪の女の子と、前髪を左に留め具でまとめたおかっぱ頭の女の子、
 こちらを傍目で見ながらそれぞれ外側の手で、声を隠すようにひそひそと話している
 「ちょっとかわいいからってアイドルになって・・・」
 聞こえていないつもりなのだろうか?
 「歌も踊りもダメダメなのにね・・・」
 歌も踊りもダメダメ・・・か・・・
 「実力なんてないのに、アイドルやってさ、」
 実力・・・アイドルの実力って何だろう・・・?
 「売れてないのにね~」
 売れてないのはあなた達だって同じじゃない、私は、あなた達の名前なんて知らないわ・・・
 ポーン
 エレベーターが来た合図の音とともに、目の前の扉が左右に開き、私はそこに乗り込んだ・・・
 ・・・そして、社長室の社長の前で、私はこう言い放つ・・・
 「嫌です」
 「で・・・でもだね・・・!」
 重厚な艶のある木製の机、奥にある黒い革の椅子、さらにその奥は一面ガラス張りの窓壁、部屋の後ろ端には応接用のガラスと四隅鉄柱のテーブルに手前に単ソファが二つ、奥には長ソファが向かい合って置かれている、
 が、この部屋の辺鄙なところはそんなものではない、
 壁、床、天井が真っ赤、ついでに椅子に座る社長のスーツも真っ赤、ネクタイも真っ赤、靴も真っ赤、Yシャツはさすがに白い、
 机を挟み私と対峙するはげかけたその頭には白くなりかけた黒い頭髪が覗く、幸いにしてそれに張り付いた顔は岩のようなやせ形だ、
 「だからだね、アイドルとしては水着のグラビアなどにも」
 「だから嫌です」
 平然と言い放ってやる、路線変更とか言い出してこれか・・・
 「話が終わりなら帰ります、私は・・・自分のやりたくないことやってまでアイドルを続けるつもりはありません、そんなに実力が無いとおっしゃりたいんでしたら私は降ります」
 思わず後方の扉に振り返って・・・
 「ま、待ってくれ、」
 そんな中でその社長が焦った様子で腰を上げ、私を見据える
 「実力が無いとは言ってない・・・」
 ・・・私は体制を戻す・・・
 社長が落ち着いたように腰を下ろし、岩のような顔をさらに硬くしたような深刻な顔で肘を机に預け両手を組む
 「知っての通り、うちは今、風鳥歌語理の入院で、収入が減っている状況にある」
 確かにそうなのだろうが・・・
 「なので、今一度、この事務所全体を見直して再編し、この危機を乗り切ろうというわけだ」
 「話が終わったのなら帰らせていただきます」
 「待ちなさい待ちなさい、」再び振り返る中で社長が右手を引き留めるように伸ばし、私を触れずに静止させる「無論、次の手は考えてある、ほら、入ってきなさい!!」
 社長の言葉の次の瞬間、扉から入ってくる二人の少女、
 ポニーテールの茶髪におかっぱ頭・・・
 それは・・・私の陰口を言っていた少女達だ・・・
 「ほらほら、並んで並んで」
 社長と社長の右手人差し指に促され、正面社長の前、私の左右に並ぶ二人、
 両端に並ぶその顔は、明らかに目線が安定して無く、戸惑った様子なのがうかがえる、
 「うんうん、いい感じだ、これから三人でユニットを組んで行こう、ユニット名は」
 「お断りします」
 はっきりきっぱりどっちり言い放ち、私は後ろへと振り返り、扉へと進んで扉を引き開け、部屋から出て行く
 「おうい!もう少し考え直してくれよ~待ってるからなぁ~」
 そんな、社長の断末魔を聞きながら・・・
 
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