バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

月夜と私の過去と光の城 ダブモン!!4話/23

 

月夜と私の過去と光の城 ダブモン!!4話23
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 「おっしゃあああ!!」
 雄たけびを上げるようなウィルピーの声、嬉しいのはわかるけど、今は・・・
 私はシロドウケの方をしっかりと見据え、
 「さぁ、これで約束は守ってくれるわよね!おばさん、行きましょ」
 「え、ええ・・・」
 が、私達が歩き始めると、今まで出てきたダブモン達が扉の前に集まって行く、
 ワタボッコリ、ララメイドクス、カメゼニイ・オーバー・・・
 まったく・・・
 「もう勝負は決したのよ、ここから人間たちを出すわ」
 しかし、よろよろとふらつきながらシロドウケも歩き出してくる、
 「これ以上は俺も参加するぞ、いいな?」
 「おう!」
 「しかたない・・・」
 「この状況、僕達も抜けださないとね」
 上空を飛んで加勢してきたのはカンテーラ、ついでに三バカ、
 人間たちも各々、拳を握ったり、得物を握ったりしている、
 正しく、一触即発の空気・・・
 これで、意外なところに動揺が走る、それは向こうのダブモン達だ、顔を左右に動かして互いに何度も顔を見あわせ、オロオロと動揺している、
 まるで、自分達が正しいのかわからなくなったがごとく・・・
 「おい、どうすんだ?こいつらをふっとばすのか!?」
 ここで声をかけて前に出てきたのは、ウィルピーって・・・ちょっと待てぃ!
 「私が決めるの!?」
 「お前以外の誰がいんだよ、この状況作ったのはお前だぞ?」
 「う・・・」
 確かに、ウィルピーの言う事にも一理ある、
 でも、私なんかがどうすれば・・・
 「いるだろ、この状況を収められそうなやつがひとりだけ」
 「そうそう、」
 「いるいる」
 ああ・・・あの三バカ・・・確かにいるけど・・・
 ちょっと頼るのが癪だが、この状況、致し方ない・・・
 「女神様!いる!?めーーがーーみーーさーーまーーー!!」
 「はいはい、いますよ」
 上方に全てを優しく包むような微笑みで現れたのは、大きな白い翼持つ女神、
 波打つ金の髪、青の瞳に白磁の肌、白い袖なしのワンピースを見に纏っている、
 「めっ・・・女神様だっ!!」
 「女神様!!」
 「めっ、女神様ぁ!!」
 この突然の登場に、私達以外の辺りの人間やダブモンはひれ伏し床にまで頭を下げ、あのシロドウケですら腰を前に曲げて敬意と服従の意を示している、
 そんな中で、女神様は、私達に微笑みを向け
 「何か御用かしら?」
 問いかけてきた、この状況で願うことは一つ
 「この状況、収めてくれない?」
 「わかりました」
 「お・・・おい、あの子・・・」
 ん?
 人間側のおっさんの一人が私の方を不思議そうに見てくる・・・
 「女神様を呼びつけてあの態度は・・・」
 げっ!?私を疑ってる!?
 どうしよ、今更女神に選ばれた勇者だとかは言えないしなぁ・・・ええい!
 「わ、私は、ほら、し、信心深いのよ、きょ、教会に知り合いとかいっぱいいるし、こ、この間なんて、いざって時に女神様と交信できるって噂の、え~、い、石とかもらっちゃったし・・・」
 今度は人間側の方がざわつき、互いに顔を見あわせたりしている、
 「お前それは・・・」
 何か言いだそうとする良星をにらみつけて制する
 「おぉこわ・・・」
 女神が吹き出しそうに苦笑しているが・・・
 「今回だけですよ?」
 「は・・・はい・・・」
 静かにさとすように言われた一言、どうやら、この嘘に乗ってくれるようだ・・・
 人間側のざわつきも鎮まる、
 「さて、まずは責任者に話を付けましょうか、シロドウケ、こちらへ」
 責任者って・・・やっぱりあいつだったんじゃん・・・
 シロドウケがゆっくりと、普通に歩いて女神の前まで行き、再度、頭を下げる
 「さて、今回、あなたは人間達を監禁していました、どうしてそのような事をしましたか?」
 シロドウケが両手を広げ、何かを説明している・・・
 「なるほど、人間達が病気や怪我だと思ったから保護したと」
 「俺達は病気じゃねー」
 「私の怪我は治ったわ」
 人間達の文句の声を女神が眼光鋭く横目で見据えただけで、観衆が黙り、女神様は視線を戻す、っていうか、シロドウケの意志分かるのね、女神様、ひとッことも喋ってない気がするけど・・・
 「しかし、無理矢理の監禁はいただけませんね?医者の資格を持つ人間やダブモン、もしくは医療能力を持つダブモンの指導は?」
 が、シロドウケはすねたように目をそらす
 「やはり・・・」
 しかし、それでもなお、シロドウケは必至に両手を広げ、事情を説明する
 「わかってますよ、あなたは、この城の王からデトウッズの民の事を託されたのですね、それで、このような事を」
 「え・・・?」
 託された・・・?
 「じゃあ、あの紋章の入ったデッキケースは・・・?」
 「元々、この国の王の物でしょう、戦争の折りに跡継ぎが全て亡くなった最後の王は、友人である彼にデッキケースを託したのでしょう」
 「そういえば、デトウッズの王には道化師のダブモンの友人がいたという話を・・・」
 後ろのおばさんの言葉・・・
 「なるほど、それで、ダブモンの力を集め、カードバトルしているように見せかけたと・・・」
 女神様が返す
 ダブモンの力を集めって・・・じゃああのフードのやつは単なる人形みたいなものだったのか・・・?それにしては色々表情とか凝ってた気が・・・?あ!
 「あの幻影は・・・もしかして、王様を模して?」
 「でしょうね・・・」
 そして、生き残りやなけなしのダブモンを集め、城を再興しようとした・・・
 ・・・
 「さて、事情も聴きましたし、私の意見を言いましょう、」
 女神様のシロドウケを見据えた言葉、
 ゴクリ・・・
 誰かの緊張で息をのむ音が聞こえた・・・
 「あなた達はあくまで人間を助けようとしていた、怪我や病気をしていた人を治療し、お腹を空かした人々に食べ物を与える、それそのものは尊ぶべき行為です、しかし・・・」
 しかし・・・
 「専門家の意見も聞かず、あげく、自分達の善意を暴走させ、たくさんの人に迷惑をかけた、よって、ここにいる人々は、希望者から順次開放し、今後、教会、もしくは、ちゃんとした医療関係者の意見を聞くこと、ここから出たいと言う希望者は教会や医療関係者の意見が無い限り、留めてはならないとすること」
 おぉおお・・・
 観客たちのざわめきが聞こえる
 「女神様!ありがとうございます!!」
 先ほどのおばさんが大きく頭を下げる
 「こちらは・・・」
 「一応、私達の依頼主、ここから出してくれ~、ってね」
 「そうでしたか・・・」
 ふわりと、女神がおばさんに近づき
 「それで?これからどうしますか?」
 「今すぐにここを出て朝を待ち、朝一で移動を始めようかと・・・」
 「夜道は危険ですよ・・・」
 「城の光の届く場所で待機させてもらいます、そこでなら野生動物も不意には寄ってこないでしょう」
 「なるほど・・・では、あなたにお願いがあります」
 「はっ、」女神の頼みに驚き顔を上げるおばさん「お願いとは・・・?」
 「そんなにかしこまらなくてもいいですよ、簡単な話です、教会があったら、ここの事を伝えてほしい」
 「は・・・?」
 「ダブモンの巣の把握も教会の仕事ですから、ここまでの大型の巣なら教会としても調査のために動かざるを得ないでしょう・・・」
 そして、女神は宙に浮き、まわりの人々に聞こえるように
 「皆さんも、教会を見たらここの事を伝えてください、一度でいいですから、たくさんの言葉があれば、教会の側も動かざるを得ないでしょうからね・・・」
 「ははぁーーー!!」
 皆が頭を下げて、
 「それでは、太陽が昇るまで私は見守ってますからね、変な動きはしないように・・・それでは・・・」
 「あっ・・・」
 これが善行なのか聞こうと思ったらその前に消えてしまった、あぁ・・・
 ・・・
 ・・・女神が姿を消し、私達は、翌朝にはここを出ることとなったのだった・・・
 ・・・結局女神様はその後、呼んでも現れず・・・
 

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