森で相対せし地上げ屋炎獣一家 ダブモン!!3話/15
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「初めまして、私は薬草売りの村のプランバニツ、二体しかいないし、ぷらんばにつでいいわ」
「よろしく、ぷらんばにつ」
「よろしくね、ええっと・・・何話せばいいの?」
桃色の兎の戸惑うような言葉、だが、それは僕も一緒だ、何を話せばいいのかは僕もまるで見当もつかない、
思考がフリーズする、
こういう時、人間内ではご趣味は・・・などと訊くのだろうが、
そもそも、この人と一緒になっていいのかすら判断が付かない、色々考えるのを後回しにしてきたツケである、
・・・
・・・
・・・あ!
「・・・話すことも無いので、とりあえず歩きません?薬草畑へご案内しますよ、薬草はお育てになってるんでしょう?アドバイスの一つでもいただけたら・・・」
「あ・・・あら、そうさせてもらうわ」
互いに戸惑い、とりあえず、街の外の方、後ろを向いて歩き出す
「それじゃ、若い二人に任せましょうかね」
「うわっ!」
突如、背後の教会の方から聞こえた声に驚いてしまった、
見ると、教会の婆さんが教会の入り口に立って、俺達の方を見ていた、
驚いたのが俺だけの状況を見るに、あちらさんのぷらんばにつは知っていたようである、
「婆さん、いたのか・・・」
「それじゃ、お二人とも行ってらっしゃい」
俺の話が通じているのかいないのか、婆さんが右手を開き振って返してくる、
不安になりながらも、俺はぷらんばにつを先導し、森の方に向かう
「大丈夫でしょうか・・・?」
「何、なるようになるさね」
この声はテイサバーンか・・・チラリと後ろを見ると、テイサバーンが婆さんの後ろ真上から、俺達を見ている所だった・・・
・・・
森の奥、会話も無く進んで行く、
そもそも、どう会話したらいいかなんぞ欠片もわからない、
が、森を進むにつれて上の木々から、妙な視線は感じる、
この視線の気配は・・・おそらく、ウワサツキだ、なんとなくそう感じる、
と、目の前の茂みが近づいてきた、家の木の少し向こう側、街の方からは、あの辺りの茂みを越えなければ薬草畑にたどり着けないのだ、
「ここ、抜ければもうすぐ」
そう言って、見本のように茂みを中央から抜け、少し歩いて後ろを見る、
しかし、ぷらんばにつは出てこない、
・・・茂みを抜けるのに戸惑っているのか・・・?
ここに居れば野生の動物や別の凶暴なダブモンに餌として追い回されることもあり、
対して、あちらは村育ちである、茂みを抜けたことが無いのかもしれない、
なら、もう少し広げてやるか・・・
茂みに再度近づき、両手と、変幻自在の尾で茂みの中央を大きく開けてみる、
が、向こうにぷらんばにつはいなかった、一体どこに・・・?
と、集中してみると、上から小さな小さな声が聞こえる、この声・・・ウワサツキ!?
「あなた、さっきの奴とどういう関係なの?、それと、後で話がしたいって言ったのに、今話しましょうなんてどういう了見?」
「あら、私、てっきりあなたが彼の恋人なのかと思ったわ?」
ぷらんばにつもいる・・・秘密裏に話しているような声量小さめのひそひそ声・・・上の木々の木の葉の中だ!
見上げてみるがその姿は見えない、木の葉かあるいは、大き目の枝の陰に隠れているのだろうか・・・?
「え・・・?」
ウワサツキの戸惑ったような声・・・
「冗談よ、あなたが恋人なら、彼が私を呼ぶわけないじゃない」
「う・・・」
今度は軽く衝撃を受けたような声だ
「でも、あいつは・・・跡継ぎが欲しいから私とは一緒になれないってそう・・・」
誰もんな事は言っていないのだが・・・
「ああ、跡継ぎの問題か、うちの村では・・・西寄りの方にウワサツキと一緒になったプランバニツがいたわねぇ・・・」
「え・・・!」
嘘・・・!
「そ・・・その話、本当!?」
「本当よ、何なら、村まで見に来る?その羽があれば大してかからないでしょ」
「で・・・でも、子供は・・・?」
「プランバニツとウワサツキが一体ずつ、ちゃんといるわ」
「そ・・・それ、本当・・・?」
「本当って・・・実際いるんだからしょうがないじゃない、それ以上なんて確認のしようがないし、」
「じゃあ今度あいつと一緒に確認しに・・・」
「いいわよ、ま、どうしてもできないっていうんなら、その時はどうにかしてあげるわよ、っていうか・・・」
「っていうか・・・?」
「この話、下のあいつに丸聞こえよ、あなた、プランバニツの聴力、知らないでしょ?」
「なっ!?」
そう、この大きな耳は伊達でもなんでもないのだ、集中すればかなり小さな音も聞き取れる、いつもはめんどくさくてそこまでしないが・・・
「聞こえてるぞ~」
「げぇっ!?」
ウワサツキの声が響き渡り、上の方からぷらんばにつを背に乗せて俺の前の地面まで降りてくる
「き・・・聞こえてた?」
「聞こえてた」
「どの辺りから?」
「俺との関係を訊いてたあたりから」
「ほとんど全部じゃないか・・・」
「そうそう、やっぱり聞こえてた」
ぷらんばにつが背から降りてきて俺の前まで来て、右手をこちらにパタパタと振り
「いやいや、よかったよかった、実のところを言うとこの見合いも薬草畑のアドバイスも乗り気じゃなかったの」
「はぁっ!?」
「はぁっ!?」
思わずウワサツキと同時に驚きで声を上げてしまう
「だってさ、私達、本能のままに草花育ててるから、そりゃ、本とか読まされて勉強したけど、こっちの土地に合うかどうかはわかんないし、結局、こっちのやり方なら、今までやってこれたならそれでいいというかなんというか・・・」
ぷらんばにつは自分に呆れてやる気なくその目を自身右上に少し逸らす
「じゃあ、見合いの方は・・・?」
「あああれ、いやぁ~私、家でず~っとぐ~たらしてて、親父の入れてくる見合いの話はみんな乗り気じゃなくってさ、それならこの村を古くに出た兎の息子さんの嫁入り話にって、半分追い出された格好なんだよね~」
俺の質問にあっけらかんと答えるぷらんばにつ、
「こいつら、というかこの種族は薬草育てるかぐ~たらしてるかしかないんかい・・・」
ウワサツキの呆れた声が聞こえ、目を細めたジト目になってるのが垣間見えるが無視、
「でもさ、」
ん・・・?
「あんたら見て決心ついた、嫌々家にいて、同じ種の婿さん待つよりも、村を出て、良いやつ探すわ、この広い世界、親父が探してくるのより良いのいるでしょ、」
「危険だと思うけど・・・?」
「ま、誰かに喰われたらその時はその時よ、兄弟姉妹いっぱいいるし、私一匹いなくなってもどうにかなるでしょ、ま、どうにかなる前に教会でも頼るわ、教会はダブモンの悩みも聞いてくれるらしいしね、・・・せっかくの兎生、自分のやりたい様にやらなきゃね、あ、そうそう、子供産むときは注意してね、胎生か卵生かどっちになるか分かんないから、」
「えっ・・・!?」
「じゃ、私は教会で話しつけてくるから!!」
そう言って、ぷらんばにつは振り返り、街の方へと戻って駆け行った
「・・・俺達も後で教会行くか・・・」
「えっ!?もう挙式「ちがわぁ、事の顛末を報告すんだよ!!」
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