ウルフォス 16
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「外来種撲滅用ロボットが完成したぞ!!」
え・・・?
突然隊長がミーティングルーム入りに発した言葉に、俺は大きく混乱していた・・・
と、そこで隊長の目線が俺の方に向き
「学狼、君たちの大学で、ぜひテストしてみてほしいとのことだ」
え・・・?
そんなわけで、久しぶりに僕は先生とあたりに民家の無く左手が森となっている角度のない山道を歩いていた、
後ろに数十体の蜘蛛型ロボットを連れて!!
もっとも、このクモの生物的な特徴は足が八本というぐらいしかなく、簡易的に八角形の厚みのある鉄板に同じく一角の長い直角三角形を二つ組み合わせたような足、顔も長いひし形の中程を丸みを残す程度に折り曲げたような縦長だ
「久しぶりだな、君とこうして、池の外来種駆除に向かうのは」
「はい、そうですね先生」
「ここ最近はずっと訓練の日々だったじゃないか、どうだ、向こうの職場は?」
「はい!良い人たちばかりで楽しいです、訓練は厳しいですけど!」
「ははは、そうかそうか」
「先生もここに来るのは久しぶりでは?」
「そうだな、向こうに基地にずっと詰め勤めだ、久しぶりに息抜きができる、さ、着いたぞ!」
そこには巨大な池が広がっていた、
濁り水で底の見えない典型的なこの辺りの池で、とてもじゃないが僕と先生では駆除に相当の時間がかかるだろう・・・
「ようこそ、お二人とも、目的地までの歩行テストは問題なかったですか?」
そこで白衣に眼鏡をかけた人のチームの一人が出迎えてくれた
「ええ、問題ないですよ」
「チェック!」
白衣の人たちが蜘蛛たちを検査していき・・・
一人がこちらを見る
「OKです!機体数も欠けていません」
「よし、では行け!」
前に出てきた人の指示により蜘蛛たちが池に散っていく・・・
そして、前足に突き刺した成果を持ち帰ってきた・・・
確かに、外来種のリストに載っているような、
魚、たにし、亀、蛇、わに・・・
わにぃ!?
確かに大きな頭と並んだ歯を持つ鰐だ、それを何体もの蜘蛛たちが前足を突き刺し仕留めてきたのだ、
だが、その口の中には犠牲になった蜘蛛たちが入っていた・・・
俺は目の前の、池と目の前に大量に並べられた血に染まった外来種たちを見る・・・
「・・・俺は・・・一体何を見ているんでしょう・・・?」
「さぁな、だが、もしかしたら、これこそが私たち人類が見るべき、地獄なのかもしれない・・・神に感謝しようじゃないか、この惨劇を見るべき人間が、私達だけなのだということに・・・」
「・・・そうですね、俺たちは、これを受け止めなければならないのかもしれません・・・」
「ピピピ・・・」
「ん?」
後ろから蜘蛛が近づいてきて・・・その前足を振り上げた!?
振り下ろされるその足を思わず跳び退り避ける!
あの前足には外来種駆除用の刃物が仕込まれている、当然、人の体も傷つける!!
「どうなってるんですか!」
「ピピピ・・・ピピピ・・・人間、外来種・・・」
「はぁ!?」
「人間・・・原産・・・アフリカ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・」
思わず首を横に振り
「いやいや、それは違う、私達の祖先はその足と船で全世界に行ったんだ、外来種なんかじゃない、そもそも、外来種の定義とは、人間が他の土地より持ち込んだ生物のことだ」
「ピピピ・・・ピピピ・・・人間・・・外来種を生む、元凶・・・」
「確かにそうですけど、それを償うためにこうやって・・・」
「どうなってるんだ!?」
博士の声に、白衣の人達が右手の方で建てた柱付き白い簡易屋根テントの下の机に乗ったノートパソコンをいじり
「蜘蛛がこちら側の操作を受け付けない・・・それに・・・AIのリミッターが外れている・・・!?」
「リミッター!?」
「蜘蛛たちは、人間に危害を加えたり、敵対する思考を持たないようにリミッターを付けられているのです!」
なるほど、それが外れていると・・・
「ピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・」
ん?なんだ、目が赤く光って・・・
ザバババッ!!
水音に背後の池の方を振り返ると、池に広がっていた他の蜘蛛たちも呼応するように目が赤く光り、こっちに・・・
「さすがにやばいな・・・先生達は逃げてください!僕が銃で威嚇しつつしんがりを務めます!」
「わかった、基地の方には連絡しておく」
「お願いします!」
そして、先生達が走り出す間にも僕は銃を撃ちつつ皆を守るようにかつ後ろの蜘蛛から外れるように下がり
「うわぁああ!!」
なんだ!?
後ろの元来た道の方を見ると蜘蛛の大群が先生たちの前に!?
「まさか、待機させていた蜘蛛たちか!?」
白衣のリーダーさん、本当ですか!?
くそ!これじゃ・・・
「どうにかなんないんですか!?」
「無理だ!すでに停止プログラムは試した!!」
「よう、困ってるみたいだな!!」
上から鷲ヶ埼さんの声・・・?
見上げて見るとあれは・・・セスウィング?!
セスウィングが銀色の細かい網を投下していく・・・
「まったく、基地の蜘蛛たちが変な動きを始めたんで追って来てみたら・・・特殊電磁網だ、捕らえたやつだけでなく周辺にも効果がある、精密機械を故障させるんだ、おっと、触れない方がいいぜ、相当な電流がかかってるからな!」
しかし、そのかいあってか、蜘蛛たちが痺れたように震え止まっていく・・・
「ピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・」
ん?一体の蜘蛛が池に向かって行く・・・?あの個体は最初に僕を襲ってきた個体か!?池の方で何を・・・?
と、蜘蛛たちがそいつに集まって巨大化していく・・・
「馬鹿な、あんな機能は付けていない!!」
すると・・・まさか・・・!?
事態に乗じ、近くの木の裏に隠れ・・・
「ウルフォス!!」
こいつ・・・
すると、蜘蛛が両前足と上半身を上げ、さながら、両前足が手首より前に刃生やす手の形となりこちらを見据える
「蜘蛛の内部に高エネルギー反応!」
鷲ヶ埼の声が響く!
「その通り、我々はこの方にリミッターを外してもらったっ!!」
蜘蛛が胸部を開くと、そこ橙色の大きな球体が存在していた・・・すぐに閉じ
「我々はこれにより知性を獲得した!そして、我々の意思で、人間を排除することを決定したのだ!」
「まて、待ってくれ!」
人間の一人が蜘蛛の方を見上げながら駆け寄り、止まりつつ大声を上げた、
あれは、学狼の先生!
「私達はこれから外来種を駆逐し続けることを誓おう、私達の手で絶滅してしまった動植物も、可能な限り再生すると誓おう、命乞いだと言われても構わん、だから、攻撃をやめてくれ!!」
蜘蛛も先生の方を見ている
「ダメだ!人間は嘘をつく、私達こそ、この世界においてこの星を正常化するものだ!そして、その後に新たな人類を創造しよう!!もう世を濁さない清浄なる人類を!!」
「だが、君たちに憑りついたそれもおそらくは宇宙外来種、この星を正常化した後は、一体どうする気だ!」
「無論!この星を正常化した後は、我々もすべて、この核と共に自爆しよう!!」
周りが唖然と凍り付く・・・
だが、そんな中でも私は・・・前に進まなければならないのだ!!
お前の叫びが聞こえてくるぜ学狼!人間はそこまで愚かじゃない!自分たちの中の悪を探し出し、排除して、先に進めるってなぁ!!
一歩、右足を前に出す!
それを感じてか、蜘蛛の視線がこちらに向く・・・
「ウルフォス・・・なぜ我々を止める!我々はこの星のがんを駆逐しようとしているだけだ」
ウルフォス!?
周りの声が聞こえ、一斉にこちらに視線が向く中で・・・
大きく息を吸い・・・
「ワオオオオオオ!!」
先制の咆哮!!
「ウルフォス!地球に縛られ、言葉無き獣と化したか!ならば、我が慈悲で持って裁いてくれよう!!」
一気に両手と両手で組合い
パワーでは向こうの方が上か・・・だが・・・!
そのまま蹴り込んでひるませ、ついでに大上段からの爪!
相手は腕を交差させて止めるが、戦闘経験が違う!
その腕を大口で食いちぎり、相手が動きを止めている間に蹴りをもう一発!
吹き飛ばしたところで光線を・・・
が、食いちぎった腕が這い上がって伸び、私を縛る!?
違う、腕が小さな蜘蛛と化し、それらが足を繋げて私を縛っているんだ!
そこで、前の蜘蛛が後ろ脚分の蜘蛛を両腕に回して両腕を回復させ、一気に両方振り上げ斬りかかってくる!
「おっと、これが入り用かな?」
セスウィングが網を投機、俺の蜘蛛をしびれさせ取り払う、
ちょっと痺れた感じがするがなんともない!
そこから向かってくる蜘蛛の内側に入り胴を両爪で開くように左右一閃!コアを露出させる!
「しまった!」
すかさず
「ワオオオオオオ!!」
吐かれた光線がコアウィルスごと蜘蛛を貫き、爆発、消滅させた・・・
・・・
「結局、横たちは正しかったんでしょうか?」
池に散らばる外来種と蜘蛛達の死骸を見つつ、俺は横でともに池と死骸を見る先生に問いかけた
「さぁな、だが、これからも私たちの信じたことをやり続けるだけだ、間違っていないかと自分や他人と問い合いながらな・・・」
「彼らとも、問い合いたかったです、そして、暴力ではなく、会話で、結論を付けたかった・・・」
「そうだな、向こうが暴力を選んできた以上、それに対抗するしかなかった、だが、今度はきっと・・・」
「はい、先生・・・」
ウルフォォオオオス!
夏を乗り切れ!
ウルフォスの水晶羽飾りがかっこいい、ウルフォス麦わら帽子!!
巻いて涼しい、ウルフォスクールタオル!!
水場で楽しい、ウルフォスサンダル!!
暗闇で光る!ウルフォスビニールバッグ!!
病気を防げ!ウルフォスクールマスク!!
夏を乗り切れ!
ウルフォス、サマーグッズ!
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