ネトゲ恋愛記 ~サブタイトルは秘密~ 18
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「それじゃーね、久利亜ちゃん!」
「はいはい、クックルードでね」
そうして、私は灰色の校舎から乾いた土の校庭を通って入り口の校門まで走り、その後、帰路へと付くのであった・・・と、重圧な校門より出ようとしたところで、前の女子二人が私の気配からか内側より振り返り
「あーっ!亜里沙じゃん!!」
「ほんとだ、亜里沙だ!」
「おー、理音(りね)ちゃん、戸羽(とわ)ちゃん」
二人と会う、
道路側の理音ちゃんは薄黒い左サイドテールを伸ばし眼を盾にした少し驚いた表情を見せ、塀側の戸羽ちゃんは焦げ茶の髪の毛を左右に髪の毛が爆発するかのように結わえていて、目じりを少し下げうれしそうな表情を見せた
「今日一緒に帰らない?」
「そうだよ、帰ろうよ!」
「おぉー、いいねー」
久利亜ちゃんとは帰る方向が全く違うのだが、この二人とは途中まで一緒なのだ!!
校門を出て、横並びでガードレールで守られた灰色のタイルの歩道を歩く、
しばらくは四角い灰色のビル街が続いているものの、その内に向こう側共々くすみつつもカラフルな商店が並んできて、しまいには商店のみとなって行く
「そういえばさ、亜里沙、最近男狙ってるって話ほんと?」
「え~、うそうそ!?」
「やーだーどっから聞いたの~、そういう理音だって陸上部の男子見てるらしいじゃん!」
「それこそどっから聞いたのよ~」
「私が見かけた~」
「え~どこから見てたの~」
「いいないいな、私にもいい人現れないかな~」
「え~戸羽ちゃん絶対かわいいから絶対あらわれるよ~」
「ねーねーどっか寄ってかない、あの小物やとかさ~」
「お~いいね~」
桃色の立てかけ屋根が個性的な店である、
中には壁に掛けられた棚に動物やゲームのキャラクターのぬいぐるみ(パステルカラー系列)が並び、
中央には白い網で三角柱に織られた回転ひっかけ棚があり、そこにはスマホのケースやらキーホルダーなどがかけられている、
私達は一目散にそちらの方へと近寄った、
「ねーねー、この兎のキーホルダーいい感じ」
「こっちのオタマジャクシのがいいって」
「こっちのパワーストーンぽいのの方がちょっとクールで御洒落っぽくない!?」
「いいね~」
「いいね~」
そうやって、キーホルダーやらスマホケースやらに向けての議論が進んで行く・・・
ん?入り口から誰かが・・・あれは・・・あのメガネのネクタイ制服のイケメン気味は・・・
「弧己す君!?そんなとこで何してんの?」
弧己す君が少し引くように口を開く
「いや・・・その・・・見かけたから・・・」
「え~見かけたんなら声かけてくれてもいいのにぃ~」
「いや、友達と楽しそうに話してたら話しかけづらいだろう・・・」
「え、あれが例の男!?」
「そうみたいだよ!?」
少し後ろの二人がきゃいきゃいしだす
「やだ~そんなんじゃないったら~」
「え~」
「え~」
「まったく・・・ん?」
あれ?そういえば・・・弧己す君の腰元・・・
「弧己す君・・・私の選んだベルト、付けてくれてるんだ~」
そう、弧己す君の腰元の、銀色のベルトが光っているのである・・・
「いや・・・その・・・ベルトに関する校則は無かったから・・・」
「え~あのベルト、亜里沙が選んであげたの~」
「え~相変わらず~」
「やだもぅ、どういう意味よう!」
「じゃ、じゃあ俺・・・もう行くから」
そう言って、弧己す君は走り去って行ってしまった、思わず、道路まで走り出て
両手をメガホンにして叫ぶ、
「また学校でね~」
うふふ~私の選んだベルト、付けてくれてた~
そうして、しばらく駄弁りつつも帰路に付き、
晩御飯の後、クックルードにログインする・・・
てきとうなウェストシティの片隅で、インスタント作業台で何かアクセサリを作ろうと
「アクセサリ作ってますか?これどうぞ、」
唐突にマッキーが後ろから話しかけてきた・・・
思わず振り返ると差し出された右手にアイテム譲渡の証である光が瞬いていた
「これは?」
「防御珠(大)(防具に合成すると防御力上げスキルの付く珠、この度のアップデートでめでたく上位互換ができたものの、数があまり出回っていないほか、最上位のモンスター以外あまり影響はないため、今だに求める人は多い)です、スキルの付いていない武具やアクセサリにスキル付加で付けることができます、」
「あ、上から3番目の?まだ実行して無いや・・・それに色変えも・・・」
「それでは、実行して、いっぺん作った後、これをお試しください、8割の成功率ですが・・・」
「8割?」
「ええ、スキルの吸いだしで8割、スキルの付与で8割です、装備を作った時にランダムでスキルが付くでしょ?」
ランダムで・・・スキル!?
「ええっ!?そうなの、まだスキル付き作ったことないや」
あ、そういえば団長が大成功でどうとか言ってたっけ・・・
「頑張って作ってください、スキル無しとか誰も欲しがらないんで」
「あ・・・はい・・・で、この珠は一体・・・」
「古代機士専用のアイテムクリエイトで作るんですよ、他のアイテム製造と同様に、もちろん、私はこれしかできません、アイテムからスキルを取り出し、それを珠として保存できるのです」
「へぇ~使ってみるけど、」
思わず右手で右腰のバックを開けて光をとり、バックに入れて閉める
「そういえばこれって消費アイテム扱い?気軽にプレゼントしてるけど、敬遠とかされない?」
「いいえ、敬遠されないですね、あと、これは素材アイテムです」
「素材アイテム?メニュ~」
思わずメニューを呼び出しアイテム欄に切り替えて・・・分かれているアイテム欄の色分かれ重ねられてる上タブの左から二番目の茶色いタブを押し
確かに素材タブの格子状のボックス、その少し下の方、素材たちの最後に追加されていた
「アイテムボックスの・・・、ほんとだ、素材欄の所に入ってる」
「アイテムは大まかに分けて5種類、装備アイテム、料理アイテム、消費アイテム、素材アイテム、大事なものに分かれますからね」
確かにそうなんだけど、私は思わずアイテム欄のアイテムそれぞれの左下の数値、所持数を見る
「そういえば、素材アイテムは1枠255個だよね、全部同じくらいなのに」
「消費アイテムは戦闘バランスを考えて種類ごとに個数が制限されますけど、素材アイテムはそんな心配ないですからね」
「でもさ、他のは全部一枠取っちゃうじゃん・・・」
「装備アイテムは色の指定や付与スキルが入りますから、どうしても複数個は持てないんですよ・・・」
「じゃあ、料理と大事なものは?」
「料理もたくさん特殊能力がランダムで入ったり、成功、失敗、大成功判定で料理の質が変わりますから、装備アイテムと大差ないんですよ、大事なものはシステムそのものが違って、あれ、多分、道具の番号しか入ってないんですよ、個数とかは入ってない」
「ええっと・・・」
「同じようなアイテムでも、複数個は持てなかったでしょ?」
「ああ!紋章の欠片収集クエスト!あれ確かに紋章の欠片が全部別枠で入ってた!!同じアイテムにしか見えないのに!!」
「まぁ、そういう事です」
「なんでそんなめんどくさい事するの?」
「容量が足りてないんですよ、何万人もプレイするゲームを、一つのサーバーでセーブしてるんです、少しでも容量は減らしたくなるもんです」
その言葉を聞いた私は、思わず、メニュー越しにマッキーの方を見る
「そういうもんなの?」
すると、姿勢を直立に戻していたマッキーも無表情のまま私を見据え
「そういうもんです」
と、返してきた
ふぅん・・・
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