ネトゲ恋愛記 ~サブタイトルは秘密~ 15
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「というわけで、アクセサリのポータブル作業台手に入れるの手伝ってください!!」
ミステーシャにいた人たちに頭下げつつ声をかけ、私達はアクセサリのポータブル作業台を手に入れるため、一路、アクセサリの街、アクリタールへと向かう、
街は巨大な砂浜につながる大きな川がある場所に隣接しているとのこと、その川で琥珀が取れるため、アクセサリ産業が発展した・・・
とまぁ、そんな話しらしいのである、アニタちゃんによれば
「いやぁ、一人で成長してくれてよかったよ」
砂浜歩く中で白々しく放った言葉に、私は横目で後ろ歩くアニタちゃんの方を見る
「作業台が必要とか一言足りとて言ってくれなかったんですけど?」
「まぁまぁ、怒らない怒らない」
にしても、これ、ツインテゴスロリ幼女の中身があれとはねぇ・・・いや、プライベートの詮索は無しか、考えるのやめよ・・・
端が見えないほどの砂浜、その比較的海に近い場所を歩いて行く・・・
「この辺りの貝殻を拾うとアイテム生産の応用が効くのよね」
そうなのか・・・
先行くオセリアさんの言い出したことに思わず感心する
「アクセサリにできますし、水属性耐性の薬にできますし、貝や魚なら水属性耐性及び知力アップの料理も作れますしね」
そういう用途もあるのか・・・続けてアニタちゃんの放った言葉にも感心してしまう
「アバレスク鯛の塩焼き(使用素材二つで出来る料理、しかしめったに釣れない鯛とダンジョンの深奥でしか取れないマジマジマナ塩と、両方貴重なアイテムであるためめったにはつくられない、内容は高い水属性攻撃力に攻撃力と魔力上げの代わりに火耐性、防御力、魔法防御大幅下げと攻撃に特化したものとなっている)など最高だな・・・そういえば・・・トークンアリス」
「なんですか?サラさん?」
「その腕輪なんだが・・・」
あ、シルバーピンクの腕輪(ネカフェ体験プレイ特典アイテムの一つ、ネカフェ体験プレイでは入手したアイテムの他にいくつかのアイテムが付く、これはその一つ、使用したアバターの装備品は丸々もらえるため、他の装備も入っている)
「これですか?先日ネカフェでプレイしてもらっちゃいました!」
「そこで、私に会わなかったか?」
「会ってませんけど何か?」
「そ・・・そうだよなぁ・・・」
出来る限り不自然ではないように言ったが、これ、突っ込まれたら絶対ぼろが出るよなぁ・・・
しかし、それ以上は話が進まず、先頭からサラさん、オセリアさん、私、アニタ・・・さん・・・いや、ちゃん!!の私達四人はアクリタールへ到着する
「うわぁ・・・」
その町は灰色の石積みの家々に、琥珀やリボンで精一杯飾り立てた物が並んでいた
「かわいい!」
「か・・・かわいい・・・?」サラさんは困惑している!!
「今の時期はこれがかわいいんですよきっと!」アニタちゃんは焦ったように話しだしている!!
「・・・」オセリアさんは笑顔で突っ立っている!!
「私にはわからんのだがどのあたりがかわいいんだ?」
「え・・・かわいいじゃないですか、あのリボンとか!!」
「家に無節操に張り付いているあれがか・・・?」
「綺麗だから、ちゃんと取り替えてるんですよ!」
「ゲームだからその辺りはテクスチャは劣化しないと思うのだが?」
「もう!風情が無いですよ!!」
私は思わず、花を触るようにすぐそばのリボンに右手で触れ
「ほら、触るとしっかりシルクの感触がします!!」
「え?そうなのか?」
「ええと・・・早いうちにアクセサリの作業台の販売所に行きませんか?ついでに、そこでアクセサリの製作もしちゃいましょう」
オセリアさんが私とサラさんの掛け合いを止めつつ、近場より少し遠めの左にある家の扉に入って行く・・・
「いらっしゃいませー!!」
追って入った場所は赤いじゅうたんの上に、左手、手前にいる、オレンジポニーテールの縦ボーダースーツと紺色タイトスカートを着て応対してくる女性とさらにその奥に斜め小分けに作られた商品棚があり、そこにはリボンやロール状の布材が並ぶ衣料素材販店、
「奥にあるミシンで作業できるよー、それから、5000ダルピンは持ってきた?」
「しっかりと」
「それじゃ、店員さんに話しかけて買っといて、あと、リボンテープも一つ」
アニタちゃんのアドバイスから私はしっかりと店員に向いて話しかける
「アクセサリポータブル製作台下さい!」
「こちらでございます!」
左側に小さなミシンの絵とその右側に大きくアクセサリポータブル製作台 5000ダルピンの文字
さらには下にはい、いいえの選択肢が入ったウィンドウが出てくる
「はい!それからリボンテープも!」
5000ダルピン払ってアクセサリポータブル製作台を入手しました
とチャットウィンドウに表示される
「色はどれになさいますか!」
こうして、リボンテープも購入しつつ入口正面奥、商品棚があるところから右手の奥にある、作業台まで移動する
「なんでミシンなんだろ?」
「大抵、最初のアクセサリはリボンだからな・・・」
「でもアクセサリってリボンじゃ作れないものも「ごちゃごちゃ言ってないでとっとと作れ!!」
サラさんに言われ、素材を指定し、作業が終わり、私の手にはちょうちょ結びされた幅広のリボンが確かに握られていた、
シルクではなく麻の少しごわごわした感触だが、確かに作った物は手元に存在していた、赤い、リボン・・・
「・・・みんなにも渡したい・・・」
「いらん」「おなじく」「ごめんなさいね」
全員からの一斉攻撃である
「個人のアイテムボックスには限りがあるんだ、本当に必要なものが作れるようになった時、渡して来い」
「同じカテゴリなら、私の方が作れる量多いしねぇ・・・」
「私達に作れる量があるなら、その分金策して、早いうちにいいものを作れるようになったほうがいいわ、それに、それは取っておいていいかもしれないけど、全ての作成アイテムがそうとはいかないから、あ、それが大切なら、ロックかけときましょう!」
「ロック?なんですかオセリアさん?」
「ロック機能って言って、それかけとくとそのアイテムは売ったり渡したり素材にしたりできなくなるの、やりかたは・・・」
・・・それでも、誰かに何かあげたら、大切にしてくれるよね、例えば、弧己す君に・・・
「それで、さっきからボーっとしてたわけか・・・」
教室で、いつもの席で、椅子そのままで後ろ向いて目を呆れたようにそらす久利亜ちゃんの言葉を聞く
「でもなぁ、唐突にプレゼントやってもなぁ・・・ネトゲとかなら多少顔見知り程度でもいいんだけどね、売られること前提なら」
う・・・売られること前提かぁ・・・
「団長さんが言ってたんでしょ?アイテムボックスには限りがあるって、現実でも同じことよ、」
呆れたのか右手を上げて軽く広げる久利亜ちゃん
「だからこそ、食べ物系のお土産が好まれる、食べてしまえば残らないし、包装紙残しとけなんてやからはいないでしょ」
「確かに・・・でも、食べ物ならちょっとの顔見知りでも渡して違和感はないわけだ・・・」
疲れたのか久利亜ちゃんは右手を下げる
「ま、よほどの高級品じゃなきゃね、もっとも、今は夏真っ盛り直前辺り、そういうイベントが連続する冬ならともかくねぇ・・・」
「う・・・」
確かに、窓からは日差しが強烈サンサンと降り注いでいる・・・
「他は・・・」
久利亜ちゃんは一瞬何かを思い出すようにに目線を上げ今度は考えるように目線を下げながら右手を口のそばに持ってくる
「そうね、ゲーム内でいわくのあるアイテムならありかもしれない、」
が、また呆れたように目線を外しながら右手を外側に広げた
「けど、その前に誰が誰なのか判別しないとねぇ・・・」
こうして、私は現実、ゲームの両面より弧己す君にプレゼントを渡す方法を考え始めるのだった・・・
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