ネトゲ恋愛記 ~サブタイトルは秘密~ 11
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ビュォオオオオ・・・・・・
辺りを覆う雪山の吹雪が、私の身を斬る・・・気がする・・・
「いや~、またここに来るなんて嬉しいわ~」
「・・・頑張りやす・・・」
山を左に右に大きく振るように登る私に、先を行く、色白の女性二人(一人はそういうお白いだが・・・)が、声を掛けつつ先導し見守る・・・
「ここへは指示された通路以外は高レベルの敵キャラが出ることで有名なのよね・・・私、職チェンジしに来た一回以外はめんどくさくて来ないんだけど、いやいや、後輩の付き添いなら楽しくてしょうがないわ~」
「忍者の転職場所に向かう時には即死トラップ多数の忍者屋敷突破強要でしたからなぁ・・・」
全部の職にこういう仕掛けあるのか・・・
そして登り切ったその先に立っていたのは荘厳な教会、
高い高い灰色の石筍のような三本の塔、その中の中央の物に足を踏み入れ奥にいる、鏡のように反射する円状の床の中央の灰色のローブを着けた白髭爺に話しかける、
白髭爺は私の方を向き両腕を掲げながら口を動かす
「おお、汝、僧侶への転職をお望みか」
「そうです」
そう、僧侶になるためにここまで来たのだ・・・僧侶に決めた理由は、
・・・やっぱり、ギルド何人もいるのに、他の分野と違って回復役が一人っていうのは心細いよね、オセリアさんも苦手分野があるって言ってたし、オセリアさんなら僧侶の職について優しく教えてくれそうだし・・・
余り悪い言い方しちゃうけど、わかりやすく他人に恩を売れるっていうのも大きいのだが・・・
「それでは、こちらを授けよう」
サンプルスキルブック・ヒール(試験用の2時間限定のスキルブック、一時的にヒールを使用可能になる、このスキルブックが無くなる前に試練をクリアすれば晴れて転職となる)を入手しました
という表示が出る
「では、神の使者にその力を認めてもらいなさい」
暗転、目の前が左右に開いて光があふれ、気が付くと、地下のコロシアムのような場所に転移し、少し中央に向かって歩いていた、
どうやら、ここまで歩いてきた、という設定らしい・・・
中央に、大きな十字架が見え、そこに光が降りてくる・・・
その光は大きな羽持つ両腕組んだ毛一つない男性の姿を取った・・・
「転職を希望する者よ、我は大天使、神に代行し、己が資格をここに試そう、では、始めるぞ!」
いきなり地上から大きな円の光が広がるような攻撃を受け、HPが半分になる!と同時に天使を光のバリアがつつむ・・・
「さぁ、その力を見せて見よ!ちなみにこのバリアはお前のHPが半分以下の時のみ自動展開される」
あ、そういう事ね・・・
「ここどすか・・・5番とはずいぶんさがしましたえ・・・」
「あ、いた!頑張ってね~」
コロシアムの左の上の方、どこかに通じているのか細い筍状の、白い光が向こうから少しあふれる場所にいきなりらんこさんとオセリアさんが現れ声を掛けてきた、
どうやら、声は届くようだ、
いざという時はあの二人に知恵を借りよう・・・
そ う思案を巡らせつつ、大天使の方に視線を戻し
「ベガさん、スキルの使用方法!」
「装備武器を強く握りながらスキル名を叫べば自動的に発動するようになっています」
「ヒール!」
強く握って声高に叫ぶと、HPが回復した!
そこで、天使のバリアが氷が砕けたような軽い音を立てて粉々に砕け、消滅する・・・
「なにぃ!?」
そこに私は剣を持って切り込み、一撃を加える!
「ぐわっ!」
「やった!」
セレシアさんの声が響く中で、天使がいきなり両肘を力強く外側に出し構え
「はっ!」
両腕を外側に出しながら先ほどと同じ見た目の光の衝撃波で私を思い切り弾き飛ばした!
「なかなかやるな、ならば、これならどうだ!」
すると、私が着地する中でまたバリアが展開した、ええい、何度も何度も・・・
ん?なんか、私の横に光に包まれて、剣を持った木の人形な奴が現れ、光が消えて前のめりに倒れ伏した・・・?
「今度のバリアは貴様程度の軟弱者では絶対に破れん!しかし、その人形の攻撃なら破れてしまうだろう、なお、その人形はHPを回復してやらないと動かないぞ!」
ああなるほど・・・
「ベガさん、他者へのスキルの使用方法!」
「通常のスキル使用の他に、対象を視界の中心にとらえる必要があります、中心にいるか手前にいる相手が標的として優先されます、自分にかけたい時は地面か空を見るか、敵にかからないのであれば敵を見つつの方法を推奨しますなお、オプションで名前を呼んで対象を設定する方法もあります」
名前呼びは・・・気分を変えたい時でいいや、それじゃ、人形を視界の中心にとらえて・・・
「ヒール!」
人形に緑色の光がきらめき、人形が息を吹き返したように両手をついて立ち上がり、剣を構えて天使に向かって行き、その剣を振るってバリアを破る
「ぐわっ!おのれ、もう容赦せんぞ!むん!」
右手を大きく横に振るうと、当たっていないにもかかわらず人形が一瞬で壊れ、光の塵となって消滅する・・・
「ここからは全力だ!かかって来い!!」
こうして・・・
私は近づいて剣を振るいまくり、あっちは衝撃波で・・・吹っ飛ばなかったけど、攻撃して来て、
そのまま、HPが減ったら回復したり、思い出したように先ほどの試練が再度挟まれたりしつつ8分ほど、攻撃し続け・・・
「ぐっ!よくやった!」
天使の動きが止まり、偉そうに腕を組みながら宙に浮かぶ・・・
「お前の力を認め、僧侶となることを認めよう!!」
そして、高い高い高いな所より私を見降ろし見据え
「今後も、仲間と周りの人々を助ける慈悲の心を忘れずに精進するように」
そうして、いつの間にかさっきの爺さんの前まで戻ってきて・・・
「おめでとう!今日から君は僧侶だ!!ぜひこれからも精進しなさい!これは教会からの選別だ!」
「僧侶の証(アクセサリ、装備中は回復術の消費MPが2ポイント下がる、常用には便利だがスキルとは重複しないタイプである上、ボス戦などでは別の物に替えられることが多い)・・・?」
そうして、私達は、一通りの寺院の探索を済ませ、外に出てきた・・・
「それにしても、あのスキルブックって便利ですよねー別の職業のスキルも使えるとか・・・」
「売ってますえ」
「え・・・?」
「売ってますえ」
・・・ここは、セントラルシティの北東、グランドバザールと呼ばれるところ・・・
そこかしこに床に布を広げて商品を並べたり、簡易的なカウンターの上に商品を並べたような店が隙間無く道の両端に置かれている・・・
「ここは、ギルド経由じゃなく、個々人でアイテムを売れる場所だよ」
「ついでに、僧侶向けの装備も一緒に探しましょう」
そうやって私達は横一列で歩いて行く・・・
「にしても、スキルブックって売ってるんですね、どこで手に入るんですか?」
「アイテム製造どす」
「アイテム製造?」
右肩の方のらんこさんを思わず見る
「職業と同じように、アイテムの製造傾向を決めて、そこでアイテムを製造できるんどすえ、武器、防具、アクセサリ、料理、回復及びバフ、攻撃およびデバフ、おれ、団長さんがカウンターで時々お酒作ってはりますえ」
「ああ、あれ、アイテム作ってたんですか!?」
「食事系のアイテムは、あのバーテンダーのカウンターっていう家具で調理すると、あのモーションになるんどす」
「へぇ~」
「アイテムクリエイトは一分野に一人いれば十分どすし、もう六つあるから、これこそ自由に決められますえ」
「う・・・、じゃ、じゃあ、スキルブックはどれで作れるんですか!?」
「スキルブックはネクロマンサー専用どす、今の所、存在価値がそれしかないって言われてますさかい・・・」
「あ、あの杖なんかいいんじゃないかしら?」
オセリアさんの声を聴き、思わず走っていった左手、先の方を見ると
「ガメオベィラちゃん!?」
「よぉ、お久し」
そこに立っていたのは、確かにガメオベィラちゃんだった
「何してるの!?」
「売り子、ここ、私の店・・・」
確かに奥には黄色い布を敷いてその上に杖やら剣やら置いてある短いレンガ壁前の簡易的な店が・・・
「あの時の子?」
と、オセリアさんがガメオベィラちゃんをまっすぐに向く
「あれから、目的は達成できたのかしら?」
ガメオベィラちゃんもオセリアさんに視線を返し
「おかげさまで」
「そう、よかった、そうそう、そこにある杖が見たいんだけど・・・」
「はいどうぞ、もっといいスキルのやつが見つかったから、売りに出したんだ」
と、オセリアさんが虚空を見て黙る・・・もしかして、メニューを見てるのか?
「メニュー!」
私もメニューを出してマップよりガメオベィラちゃんの店を選択して、
出てきた商品一覧から唯一あった杖を見る
木の杖(魔術師、僧侶共通の武器、攻撃力は低いが、デフォルトで最大MPが上がるほか、魔力や回復力が上がる能力が付きやすい)・・・回復力上昇(中)か・・・
「いいじゃない?値段は・・・?」
オセリアさんが私の方を向く
「トークンアリスちゃん、どう?」
ふむ・・・今の所持金と勘案するに・・・
「これぐらいだったら、他にもそろえられるかと思います」
「じゃあ、それに決めちゃいましょう、他にも探さなきゃいけないものもあるし、そういえば、スキルブック欲しいのよね?ヒールは僧侶になったから使えると思うけど、それがいい?」
「出来れば別のやつがいいですね・・・」
「それでしたら、ファイヤーボールのスキルブックあたりどすかなぁ、」
と、一緒に左手の方から見ていたらんこさん
「最大MPは僧侶も高いどすし、普通に殴るよりも・・・」
それを聞いたオセリアさんが私たち二人を同時に見るように視点を移動させ
「そうね、ついでに探しちゃいましょう」
「ああ、待って、私も行くわ、店はほっぽっといてもどうにかなるし、あなた達についてったほうが面白そうだしね」
そう言って、ガメオベィラちゃんも付いてくることになったのだった・・・
・・・アイテム製造か・・・
結局、ギルドのみんなに聞いても、有能な答えは得られず・・・
「自由に決めろ」
「私も、口出しする気はない」
「古代機士が口出しすることではありませんので」
「俺も、その分野はあんまり詳しくなくって、専門分野は詳しいんだけどな・・・」
「あ~だったら私も口出ししないわ」
とまぁ、 サラさん、フレナさん、マッキーさん、エーグルちゃん、アニタちゃんの感想である
「アイテム製造ってどれを選べばいいかな・・・?」
そんなわけで、学校のいつもの階段で、三人に相談していたのだった・・・
「俺は防具を製造してるぜ」
「俺は・・デバフアイテムだ・・・」
「デバフ・・・?」
弧己す君の口から出た聞きなれない言葉に思わず訊き返した
「相手の能力値を下げたりするアイテムだ、バフはその逆で能力値を上げたりするもの、一応、攻撃アイテムの一種だから、ジャンルとしては攻撃アイテムだな・・・」
ええっとそれじゃあ、この際だから前から気になってたこと弧己す君に訊いてみるか・・・
「食事アイテムと回復アイテムの違いは・・・」
「食事は食べた後一定時間様々な能力値が上昇する、回復アイテムとは違う、ただし、重ねがけで着ず、次の物を食べると消える、バフアイテムは重ねがけできるけど、効果時間が短いし、重ねがけにも限度がある」
「へぇ~、あ、久利亜ちゃんは・・・」
私の右手にいた久利亜ちゃん
「あたしはまだ決めてない、一度決めると変更不可でしょあれ、」
まぁ、そうなんだけど・・・
「これは自由に決めた方がいい、」
弧己す君・・・ううん、自由かぁ・・・
でもなぁ・・・武器・・・防具・・・アクセサリー、いやそれより・・・
回復アイテムは・・・私がどうにかすればいいし、攻撃アイテム・・・食事は、あざとすぎるか・・・よし!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――