バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒/23

Demon'Blacksmith Bustle 魔鍛冶師の喧騒 23
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 背中に感じる重みを押しのけ、両手両足で体を上げる
 ガラッ!
 「げほっごほっ!」
 瓦礫をどけた時に出た煙で思わずむせてしまった・・・
 そんなこんなで周りを見渡す・・・
 辺りには崩れた城の瓦礫以外ただただ遠くの山々に青空がと白い雲が広がるのみ・・・
 ・・・さすがにやりすぎたか・・・?
 ここまでやるつもりはなかったんだがなぁ・・・
 立ち上がり
 「さて、次はどこに行くかな・・・」
 いつの間にか手元の剣は消えてなくなってるし、なんて言うか、気絶する前に消滅していくのを確かに感じたんだよなぁ、他の武具は残ってるんだが・・・
 「ありがとうございました・・・」
 ん?背後から・・・
 涼やかな少年の声に後ろを振り返ると、そこにいたのは肩や膝上が白と黄色の縦縞で膨らんだ白い衣装を身に着けたまるで王子のような存在、
 金に近い長い栗色の髪を肩口で切りそろえ、涼やかな顔には同じ色の眼、頭に金色の王冠を乗せ、体には青い高級なベストを着ており、足腕は白いタイツに覆われている、
 「お前がさんざん言われてきた王子ってやつか?」
 「そうですよ、あなたがさんざん呼んできたリッキーです」
 「は?あのちいせぇ蝙蝠か?」
 「はい、そうでなければ、というより、私の父と祖父と強いつながりを持つ者でなければ魔神の召喚になど至らなかったはずです・・・」
 なるほど・・・
 「で、この状況はお前の望んだものなのか?そうでないのか?」
 「ご想像にお任せします」
 そう言って、リッキーはやはり、涼やかに笑った・・・
 「ったく、変なとこまで親父や祖父に似てるんだな・・・」
 「そうですよ、だって、親子ですからね」
 「ああ、はいはい・・・」
 そして、リッキーは空を望む・・・
 「私は、どうすればよかったのでしょうか?」
 「知るかよ、俺は俺のやりたいようにしただけだ、どのみち、俺がここに来た時点で、この城は終わっていた」
 「・・・そうですね・・・」
 と、リッキーが俺の方を笑みを浮かべながら真正に見る
 「ありがとうございました・・・」
 「なに?」
 礼を言うとはどういうことだ?
 疑問に俺がその顔を見た時、リッキーはすでに消えかけていた・・・
 「これからも息災で、夢が叶うといいですねなんて、無責任なことは言えませんが・・・」
 「みんなそう言うぜ、気にしなくていい」
 「そうですか、それではお元気で・・・」
 最後にそう言い残し、リッキーは消えてしまった・・・
 今のは幻か?はたまた残像思念か?
 ま、いいか、もう何も残って無い、魔力や空間の気配もないこんな場所に用は無い
 ・・・山を下りるか・・・!!
 こうして、数日後、俺はくすんだレンガ造りで橙とかの三角屋根の家々並ぶ町中の大通りに面した大きく開かれ短い橙の庇付きのおしゃれなカフェで、つるを模した装飾のみで構成されたような白い机と椅子のテラス席にて、
 売り払った武具の金で菓子を待ちながら足を机の上に乗せつつ店の灰色の貸し新聞を広げていた・・・
 「魔力で近づけなかった故国旧王城崩壊、近々政府は調査団を派遣・・・ね・・・」
 「お待たせしました、とびきりレモンセットです」
 「お、来た来た!!」
 ウェイトレスのねぇちゃんが話しかけてきたのを機に、俺は足を退ける、
 銀のお盆より差し出されたのは、
 この店特製のレモンタルトとレモンティーだ、
 爽やかな酸味が食欲をそそるこの店の一番人気のセット、というのが宣伝文句だ、
 この店の前に立っていた側面A字黒板にそう書いてあった、
 早速白い皿に一緒に乗ってきた小さいケーキフォークで先を切って口に入れると、
 酸味と甘みの強烈なハーモニーが口の中で奏でられ、
 真っ白で蔓のような持ち手付きのティーカップを手に取り入っていた紅茶を口に入れると、紅茶の飽和した風味とのど越しを感じると共にレモンの爽やかな香りが喉元に広まった・・・
 さて・・・
 俺は菓子の味を堪能しながらも遠くの方を当てなく見つめる・・・
 次はどこへ行くべきか・・・ま、歩きながら考えればすむことか・・・
 今は、この甘味を堪能させてもらうとしよう・・・
 
終わり
 
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