バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

騎士剣戦隊キシケンジャー/9

騎士剣戦隊キシケンジャー 9
 
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 「行くぞ、ユウキ」
 「来いよ、サトル!」
 キシケンチェンジ!
 互いに思い思いに剣を前にだし、間合いを測る・・・
 こいつの剣術、前々から思っていたのだが・・・
 「行くぜ!」
 向かってきて振り下ろされる剣を突きからの弾きで防ぎつつ、一気に胴目掛けて突く、
 これをユウキは大きく左手に体を回してかわし、その回転を軸に攻撃?!
 っつ!
 とっさに後ろに跳ぶが、剣圧が俺に当たった気がした、しかし、大振りの後の攻撃は隙だらけだ!
 「はっ!」
 気合の烈息と共に放った一撃は回転して鞘盾を前に出そうとしていたユウキの胸胴を捕らえ、吹っ飛ばしたのだった・・・
 
 「いつつ・・・」
 「大丈夫か?」
 倒れたユウキに右手を指し伸ばし、引き上げ、互いに変身を解除する・・・
 ここは基地と同階にある多目的スペース、
 元はダンスを教える教室だったらしく、激しい運動も許可された場所だ、ユウキが持ち主に交渉し、新しい持ち主が現れたら退去する約束で二束三文で借りたらしい
 しても、こいつの剣術・・・才能は無い・・・が・・・
 「剣が大振りだな、だが、もう少し鋭ければ・・・」
 と、話してやると、ユウキは嬉しそうに笑みを浮かべ
 「そうか、アドバイス、ありがとうな!!」
 『ははは、にしても、私は嬉しいぞ、五人そろって剣の練習など、ようやく、騎士としての自覚が出て来たんだな!!』
 『いや、そうじゃなくて』『明らかに違いますよね・・・』傍らで他のみんなと共に見学していたイエローリアとピンクリアの話し声、
 『ソウルクレストも守護精もなかなか見つからないし、確実に戦力を上げられる方向に舵を切っただけっていうか・・・』『以前の魔怪人に手も足も出なかったのも大きかったし・・・』
 「そうですね、だから、ソウルクレストや守護精探しの時間を鍛錬の時間に振り分けたと・・・」
 「はっきり言って、二度も三度も負けるのはごめんだからね・・・」
 「それに、ソウルクレストについても、シルバーダの物は効果があったのに私達のは無かった・・・」
 『ソウルクレストは剣に付けて使うから、剣の鋭さが増せば増すほどその力が上がって行く、少しコツが必要だけど、サトルならすぐに習得できるでしょう、後はユウキかな・・・』
 女性陣の会話からのイエローリアの声にブルーリアの宝玉の周辺が光り、
 『確かにね、個々人の戦闘力を増すためには、やはり、鍛錬こそ一番効果的で確実だ、で、サトル、君のユウキの剣の評価は?』
 と、返した、そうだな・・・俺はブルーリアの方を見ながら
 「・・・俺にも色々弱点はあるし、言うほど強くないことも自覚している、ユウキに関して言うなら、あと一歩という所だ、」
 「おう、良い評価ありがとうな!!」『うむうむ、日々鍛錬、これこそが騎士の道!!』
 「中学か高校からフェンシングか剣道をやっていれば、いや、今からでも遅くはない、」
 戦力を上げられそうだし、俺はユウキの方を見て問いかける
 「どうだ・・・?」
 が、ユウキは笑顔ではなく普段通りの表情で
 「それも、戦力アップの手かもしれないが・・・剣術には興味ないし、行くつもりもないし、今はいい、それに、俺、やりたいことがあるんだ」少し口端が上がりながら「いや、見つかりそう、と言った方が正しいかな?それをきちんと見据えたいんだ」
 「ん?なんだ、それは?」
 俺の言葉に、ユウキは満面の笑みを浮かべ
 「教える気は、無い!」
 思わず全員が片肩落とし、ずっこけた
 「なんだ、まったく・・・」
 「で、またやるのか?」
 「いや、他のメンバーの実力も一通り見ておいた方がいいだろう、それじゃあ・・・」
 あ!?
 窓の向こうに結界が!?
 
 「お、来たな、キシケンジャー」
 ギャルガ!?それに・・・筋肉質な羽に黒い仮面をつけた悪魔に、槍と槌を持った二体の魔怪人!?
 あの感じ・・・間違いない、また強化されたやつだ!!
 周りにビルが立ち並ぶ中の広場で俺達は対峙する!
 「ランサー!」
 「ハンマー!」
 二体の魔怪人の声と同時にギャルガはおどけるように顔と共に剣を斜めにしながら突きつけてくる
 「どうした?シルバーダは来ないのか?」
 「俺ならここにいるぞ」
 そこに俺たちの横からシルバーダが走って現れ合流する、
 「ひさしぶりだな、シルバーダ、どうだ、こちらの居心地は?」
 「慣れれば悪いものではない、影は・・・どこにだって現れるからな!」
 剣を引きぬき、鎧をまとう、
 「俺達も!」
 おう!
 「キシケンチェンジ!」
 剣を引き抜き変身、一気に立ち向かう!
 「行け!戦闘員ども!」
 戦闘員たちが向かってきて、いち早く、抜け出した俺とサトル、シルバーダが前に出る、
 「ここは私達が引き受ける」
 「頼んだぞ」
 「行ってください!」
 戦闘員たちに立ち向かうイエロー、グリーン、ピンクの声を聴きながらシルバーダを中心に俺たちは走る、
 「三人だけじゃ不安だな」
 「シルバーダ?、だが、前と同じようにやれば・・・」
 「うまくいくかはわからない、行くぞ」
 ブルー、確かにな・・・
 「こっちだって三体だよ!」ギャルガが右手を前に出して指示!「ランスアモン!ハンママモン!!」
 対し、俺とサトルが一気に突進、ランスアモンの突きとハンママモンの振り下ろしを外側に避けつつ、二体に対し剣を振るう!
 鋭く捉えたその剣に、二体はひるみ、少し後ろに下がる!
 「ランサッ!?」「ハンマッ!?」
 「何!?お前らの剣は効かなかったんじゃないのか!?」
 ギャルガの驚愕の声に、俺とブルーは答える!
 「いつまでも同じ俺達だと思うなよ!大体こう入れればいいんじゃないかって、前に戦った時に思ったのを試したら大当たりだ!!サトルやレッドリア達も鍛えてくれたしな!!」
 「攻撃が効かなかった時より、鍛錬は続けた、剣をぶつけても攻撃が効かなかったなんて剣士としての恥さらしを何度もやる俺ではない!!」
 「ともかく行くぞ、」俺は一緒に突進してきた二人の方を向き「ブルー、シルバーダ、ギャルガとハンマーを、俺がランスをやる!」
 「おっと、そうはさせないぜ!」
 いきなりギャルガが前に出て、蛇腹剣を叩きつけてくる!
 だが、そんなものが効く俺とサトルとシルバーダじゃないぜ!!
 全員が剣で防御してきっちりいなす
 「行け、ランスアモン!ハンママモン!、シルバーダに一点攻撃だ!!」
 「ランサー!」
 「ハンマー!」
 二体がシルバーダに向かって行く・・・
 「シルバーダ!俺達が援護を・・・グハッ!」
 「おっと、お前らの相手は俺だろ?」
 ギャルガの蛇腹剣による広範囲連続攻撃に俺とサトルは援護に行けない、その間にも、
 シルバーダの剣がランスアモンに叩きつけられていくも、ランスアモンは槍を横に出してきっちりと受け止め、そこにハンママモンがハンマーを叩きつける、
 それは引いて避けたシルバーダだが、ここにヤリの追撃、これはまともに喰らった、
 「この・・・ブリザードガストアンドフリーズリターンクレスト!」
 「ランサー!」
 「ハンマー!」
 一撃目で二体の足元が凍るが、それを予期するかのように二度めの前に互いの氷を突いて叩いて割り、
 「何!?」
 シルバーダが驚く中で二撃目の冷凍剣撃を一気に後ろに跳びのきながら互いの長柄で防御してダメージを軽減、
 すかさず攻撃の隙を晒したシルバーダに近づき、槍突きと槌の叩きおろしを喰らわせ吹き飛ばした!
 「ぐはぁ!」
 「シルバーダ!」
 「シルバーダ!」
 シルバーダが倒れ、俺とブルーが声を上げる中で他の三人が何とか駆けつけ
 ピンクが皆の方を見回しながら言葉を発す
 「ここは一旦引きましょう」
 「ミラーデブリアンドリフレクショットクレスト!!」
 「ウォールシールドアンドウォールハンマークレスト!!」
 イエローが発生させた鏡の破片をグリーンが城壁で一気に押して目くらましし・・・
 俺達はどうにか退避したのだった・・・
 
 「くそ!どうする?」
 街中の家の隙間の路地で俺はみんなの前で思わず無念の言葉を吐く
 「とりあえず、基地に帰りましょう」『賛成、基地はまだ結界の中にはないでしょうに・・・』
 そうだな、ユナの言う通り、
 だが、シルバーダが路地を出て、正面の明らかに基地の方とは違う方に歩き出した・・・
 「あ、シルバーダ、どこ行くんだ?」
 「・・・俺は・・・影だ・・・お前達とは一緒に行けない・・・」
 またそれか・・・
 シルバーダはそのまま歩いてどこかに去って行った・・・
 いや、そうは言ってもあいつ、一体どこ行くんだ・・・?
 怪しみ、シルバーダの後を着ける俺達は、その先で・・・八百屋をやっているシルバーダを見た
 それは言葉に合わせて両手を叩きながら周りを見回し
 「いらっしゃい、いらっしゃい、野菜が安いよー!!」
 並べられた野菜の前で、ねじり鉢巻きを巻き、大きく○と八黒い前掛けを着けたシルバーダに、
 えぇえええええ!?
 俺達は驚愕したのだった・・・
 
 「お前は何やってんだ!?」『そうだ、いくら騎士ではないとか言ったってなぁ・・・』
 俺たちは思わず近づき声を掛けていた・・・
 それをシルバーダは不思議と俺達を見て
 「いや、おやっさんがいないから、店番してないと」
 「いやいや、そういう問題じゃ」
 「おや、お客さんか?」
 いきなりひょいと顔をだして現れたのは初老の老人だ、
 古びたジャケットにシャツに長ズボン、帽子を着けたいかにも八百屋然とした格好だが、前掛けもしっかりと付けている
 「おやっさん、」それに対し、シルバーダは軽く会釈をし、「すいません、いきなり怪物が現れたって聞いて、様子を見に行ってました」
 「大丈夫だったか?怪物が現れたあたりは人が石になるっていうからな・・・とりあえず、今日は下がっていいぞ」
 「すいません、おやっさん、」
 シルバーダが俺たちの方を向く
 「とりあえず、上に上がってくれ」
 「えええ・・・」
 促され二階に上がって行く俺達、そこにあったのは四畳半の部屋、いささか、いや、六人もいると明らかに狭い・・・
 そこに円を描くように座って、一番奥の窓を後ろにしたシルバーダが話し出す・・・
 「実は・・・こっちに来た頃・・・」
 
 ~回想~
 「くそ・・・いろいろ勝手がわからん・・・隠れ家になるようなところか、出来れば金を稼げるような場所も・・・だが、大半の場所は身分証明が無いと雇えないと・・・ん?」
 電信柱に張り付けられたチラシには、給料は安めだが、住み込みで働ける八百屋のバイトの情報が・・・
 「お願いします!!」
 俺は、チラシを持って八百屋の前で頭を下げた、
 顔を見あわせるおやっさんとおくさん、
 しかし、すぐに俺に向かい
 「真面目に働いてくれるか?」
 「はい!」
 「何か、わけありのようだが・・・ま、うちも人手が足りんから、少しの間だけなら・・・」
 ~回想終わり~
 
 「と、そんなわけだ」
 まぁ、確かに真面目そうだし、ここの親父さんが人情味のありそうな人だが・・・
 『どうだ、こいつの内務調査員としての実力は認めたか?』
 なるほど・・・こいつ、ちゃんと他人がどういう人間か見抜ける人間なんだな・・・
 「そういうわけで、ここで住み込みで働きながら拠点にしている」
 ん?急に体が・・・硬く!?しまった!窓の方を見ると、ここがすでに結界の中に!?
 皆を見回し
 「みんな、変身しろ!早くしないと石に・・・」
 「まて、おやっさんに知らせないと・・・」
 シルバーダが急いで階段を駆け下りる、それを俺達も追うと、
 そこには野菜の棚の間に、石になったさっきのおやっさんと同様の格好ながらジャケットの

無い太った年配の女性が!?
 「おやっさん!おばさん!!」
 え!?この二人が!?
 「おやっさーーん!おばさーーーーーん!!」
 泣き崩れて行くシルバーダ
 「くそ・・・どうして、どうしてこんなことに!!」
 「いや、結界を解けば元に戻るから・・・」
 「何!?」
 一気に俺に顔を寄せるシルバーダ!
 「本当か!?その話は本当なのか!?」
 「本当、本当、だが、その前にあの魔怪人を倒さないと・・・」『どちらがこの結界の主かわからない以上、二体倒す必要が出るかもしれないがな・・・』
 シルバーダは少し根詰めるように歯をかち合わせる表情を見せながらも
 「ぐ・・・だが・・・やるしかない」
 『大丈夫だシルバーダ』
 「何!?本当ですか、」今度はレッドリアに顔を寄せるシルバーダ「レッドリアさん!」
 『ああ、この俺に秘策がある、連携攻撃だ!』
 「れんけい・・・こうげき・・・?」
 『この六人が力を合わせれば、きっと、あいつらに勝てる、だが、その為には一旦六人でチームワークの訓練を行う必要がある、まだ、基地にまで結界は行っていないはずだ、一旦引いて、みんなで訓練をするんだ!』
 しかし、シルバーダは目をしばたたかせつつ
 「だが・・・俺は・・・」
 伏せていき
 ああくそ!
 「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」
 俺は思わず、シルバーダの両肩を両手で抑えながらその顔を見据える
 シルバーダは俺を見て驚きに目を見開いている
 「この人たちを救いたいんじゃないのか!?世話になったこの人たちを、この人たちを救えるのなら、その位のわだかまり、関係ないだろ!」
 「はっ!?確かにその通りだ・・・」そして、レッドリアを見ながら「レッドリアさん、」皆を見回しながら「みんな!」
 『なんだ?』『言ってみろ』『声に出して』『うむ』『聞きましょう』
 「シルバーダ」「さ、言ってみてくれ」「そのとおり」「ああ!」「私達でよければ、協力します」
 シルバーダは口を真一文字に結び、意を決した表情となり
 「この俺を・・・鍛え直してくれ!!」
 俺にぶつからないように大きく後ろに下がりつつ頭を下げたのだった・・・
 
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