騎士剣戦隊キシケンジャー 13
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「くそったれ!」
魔鋼と変わった体のその手の甲を、コンクリートの柱に叩きつける、
ここは夜はいいが、昼は太陽の熱でじりじりと焼かれるような場所・・・
「俺と戦う前に逝っちまっただと!ふざけやがって!!」
最強と呼ばれる騎士と闘う絶好の機会だったのに!!むざむざ逃してしまうとはっ!!
やはり、このイライラを解消するためには・・・
「どこに行く?」
外へと歩き出した俺に声をかけてきたのは、ジオとかいう青色のひし形野郎・・・
「お前には興味がねぇ・・・いや・・・」横目で後ろにいるジオを見る「お前、結界出せるか?」
「もちろん、出し入れ自由自在だ・・・」
「なら・・・付いて来い・・・!」
「・・・よかろう・・・」
キャー!!ワー!!
少し手触りの悪い白い石タイルで作られた広場で悲鳴がこだまする中、俺は結界を見つけ、そこに向かって走り出した、
『サトル、恐らく、また、魔怪人・・・?』「だろうな、またあの新世代魔怪人とかじゃなければいいが・・・」
結界の中心部、そこにたどり着くと同時に、他の皆も集まっていた
そこにいたのは、青い鎧の狼と、青いひし形の鎧!
それらが俺たちに視線を向ける・・・!
「ひさしぶりだな、キシケンブルー」
「ウルフェイ・・・」『もうちょっとおとなしくしてくれててもよかったんだよ?』
「ふざけるな、俺がおとなしくしてるたまだと思うか?ブルーリア、キシケンブルー共々、叩き切ってやる、ジオ、他の奴らの相手は頼んだぞ?」
「はぁ・・・」ジオがあきれて両手を左右外側に出し顔を横に振る「これだから人間は・・・」対しウルフェイは目のみをジオに向け「なんか言ったか?」「いいや別に・・・戦闘員!」
ジオが勢いよく右手を前に出すと同時に黒いもやが集まり具現化するかのように戦闘員たちが・・・いや!?
「なんだ?何体かいつもと見た目が違うのがいるぞ?」
ユウキの言う通り、パーツはいつもどおりなのだが、べースの人型部分が黒い・・・?
「こいつらは新世代戦闘員、今までの戦闘員の3倍の能力がある、簡易的だが、指揮能力もあるぞ」
「なるほど、雑兵とはいえ、向こうも強化してこないわけがないという事か・・・」
「サトル、ウルフェイを頼めるか?」
「ああ、その代り、ジオの方は任せたぞ」
「わかってるって!」
キシケンチェンジ!
「更に行くぞ」『マスターレッドクレスト!!』「聖なる赤の騎士!パラディンキシケンレッド!!」
聖なる赤の騎士となったレッドをジオとかいう奴が右手を顔前に出しながら不敵に静かに見据える
「ほほう・・・それがネオを破った姿ですか・・・相手にとって不足は無い!」
仲間たちとジオ、戦闘員たちが駆け出し激突する!
キキヤャアア!!
戦闘員たちが前後に分かれ二重の壁のように連携を取り槍を前に出し持ち、一定間隔よりシルバーダ達を取り囲む
「こいつら・・・陣形を使う様に・・・だが!」
「だけどこんなもの」「俺達が」「突破して見せます!」
しかし、皆経験を積んだ仲間たちだ、盾持つシルバーダを前に、陣形を崩すように一点突破、そこから反撃を展開していく、
が、新世代戦闘員は強いようだ、
シルバーダ相手でもなんとか一撃をつばぜり合いで持ちこたえ、仲間の槍の援護で一旦引かせた、クレストの吹雪攻撃も槍を盾にした陣形で威力を半減させている、
どうやら、倒せるにしても時間がかかりそうだ、
「この程度ですか!?」
「何!?」
対して、レッドとジオ、レッドが剣で攻めればジオが両腕で的確に防ぎ、受け流す、返す刃も同様に
どうやら、防御に徹して時間を稼ぐ作戦のようだ、もしくはカウンターを狙っているのか?
いや、だが、それを気にしている様子はない、なんせ、俺の前には・・・
「そろそろ、おっぱじめようか、キシケンブルー・・・!」
「ああ・・・そうだな・・・!」『行くぞ、ウルフェイ!!』
小手調べの上段打ち合わせの斬りから距離取りの弾き合い、そこから向こうが一気にこちらに近づき、大剣二本を叩きつけてきた!
思わず剣で二本を受け止める、
と、目の前のウルフェイが顔に力を込めたかのように
「ああ・・・ああ・・・イライラする!なんで俺達に命懸けの戦いをさせてくれないんだろうなぁ!!」
「俺は・・・お前とは違う・・・命懸けの戦いなんて、望んじゃいない!!」拒絶と共に、思い切り剣を弾き飛ばす!
「違わねぇよ!!じゃあお前はどうだ!?戦いたい相手に、勝ちたい相手に、絶対に戦いたくないだなんて言われたらぁ!!」
剣を両外側上に構え、突っ込んでくる!?
「うぉおおおお!!」
「俺は・・・俺はぁあああ!!」
向こうが剣を交差に、俺が上より縦一文字に斬り裂き、がっきと組み合う!
互いに足腰を込めての押し合い、筋肉がきしみを上げる、だが・・・負けるわけにはいかない!!
・・・押し切った!
「何っ!」
弾く中、渾身の突きの一撃、確かにウルフェイの胴を捕らえた、が・・・
気が付くと、俺の左頬が切り裂かれていた・・・
「あと少し、狙いが正確なら、俺をお前の頭を砕いていたぜ?」
「もう少し、俺が力を込められていたら、お前の腹を貫いていた・・・」
これ以上ないほどの背筋の寒気と高揚感、ウルフェイの気持ちが少し・・・いや、わかるわけにはいかない!!
はっ!
背後から皆の掛け声とともに戦闘員たちが爆発する音・・・
「みんな!レッドとブルーの援護だ!」
「シルバー、あんたが指示出すの!?」「この中じゃ唯一の正式な騎士だろ」「私達の気持ちは同じです、従いましょう」
「ちっ、興がそがれたぜ、じゃあな・・・ジオ!」「致し方無い・・・」
ウルフェイとジオがそれぞれの得物を大きく振るい、辺りに岩と砂煙を飛ばして目くらましとし、いつの間にか結界と共に消えていた・・・
それを見て安心したせいか、俺の変身も解ける
「大丈夫かサトル!」
「ん?」声を掛けてきたユウキを先頭に皆が駆け寄ってきたのを横目で思わず見る、皆、俺と同様に変身が解けていた
「ユウキか、大丈夫だ」
しかし、皆の視線はなぜか俺の左頬に行く
「だが、頬から血が・・・」「そうよ」「怪我の手当てをしないと」「化膿してしまいます」「怪我は直しておいた方がいいぞ」
確かに、右手で拭うとそこにははっきりと血が流れていた、そして、ようやく痛みが伝わってきた・・・
あの時は痛みなど感じなかった・・・
「・・・後で自分でやっておく」「そうか」「ちゃんとしときなさいよ」「それじゃあ、これからどうする」「とりあえず、辺りを警戒しましょう、まだあたりにいるかも」「気配はないが、警戒するに越したことは無いな・・・」
と、皆が離れて行く・・・すると、足元に紙切れが落ちているのを発見した・・・
俺は、フェンシング道場の一室を借り、フェンシングの格好で、正座をし、瞑想をしていた、
やはり、戦いのことで心を鎮めたい時は、この格好が落ち着く・・・
『どうしても行くのか、サトル?』
横に置いたブルーリアが訊いてきたのは、あの紙切れの内容だろう・・・
「ああ・・・行くしかない?」
『本当にみんなに知らせなくていいんだな?』
「書いてあっただろう、一人で来いと、それに・・・」
『それに?』
「もしかしたら、チャンスかもしれない・・・」
『チャンス・・・か・・・』
「ブルーリア、止めても無駄だ、お前を置いてでも、俺は行く」
『止めるなんてとんでもない、むしろ、奴との因縁を持ち込んだのには僕の責任もあるからね、付き合うよ、この戦いを終わらせるために、ね』
「・・・ありがとう・・・」
「遅かったじゃねぇか」
満月が頂点にのぼる頃、月光の波止場で俺とウルフェイは再開し、見据えあう
「書いてあったとおり、誰にも知らせてないだろうな?」
『残念ながら、僕はいるけどね』
「かまわねぇよ、てめぇも倒す奴の一人だ」
『そうかい、ありがとう』
「それじゃあ、殺ろうか!」
ウルフェイが剣を構える、
「『キシケンチェンジ!青の騎士!キシケンブルー!!』」
青きエネルギーが俺の体を迸り、スーツとマスクと化し、俺も剣を構え、対峙する・・・
互いに走る緊張感・・・同時に俺の脳裏には昼の一瞬の交差が思い浮かんでいた・・・だが、二度とあんなふうにはならない・・・!
はぁあああ!!
三者の声が重なり、走り込む、
俺が放ったのは渾身の突き、それをウルフェイが両大剣で払いのけていく、
「なに!?」
が、俺は耐えきり、一気に突き飛ばす!
「がはっ!」
ウルフェイが俺の見る目が、狂気と歓喜に満ちてくる・・・
「やるじゃねぇか・・・」
「力押しが出来ないとでも思ったか?」
「ああ、思ってたね、だが、それだけ、倒す価値があるってことだよなぁ!!」
こうして、戦いが始まった、俺が大上段を当てに行けば、一方の大剣で防ぎつつ向こうが脇より振り抜いてくるが後ろ上に跳び回避しつつカウンターの突きを繰り出し今度は向こうが後ろに跳躍避け、
剣を組み合えば、互角の力量で弾かれる結果となり、向こうの大剣を弾きつつ外側から突きを決めて行けばもう一方の大剣をうまく回して防ぎつつ大剣を再度振り回し、そちらも剣で弾きつつ下段より一閃、防いだ大剣での受け流しもきっちりと構え直しての突きを両大剣で交差して防ぎ、その後互いに弾く、
そうやって、互いに少しずつ消耗していき、息が切れるころに俺はようやくこの手を出す
「『バタフライアンドサンダービークレスト!!』」
「ようやく出してきたなぁ!!」
素早く近づいて振るわれる大剣を、俺は思い切り蝶の様に、
「上!?」
そう、上に回り舞う!
「『雷光雷針点!!』」
そこから驚き一瞬固まったウルフェイに、落雷の一撃を喰らわせた・・・
「がぁあああああ!!」
上空からの突きの一撃にウルフェイが倒れる中、俺は向こうに着地する、力を使いすぎたのか、変身が解けた
「ま・・・まだだ・・・」
まだ・・・か・・・
背後を見るとウルフェイが確実に立ち上がってきていた・・・
「いいだろうウルフェイ、そこまで言うなら付き合ってやる、だが、約束してほしい」
「約束・・・だと・・・?」
ウルフェイは力なく両腕を垂れ下げながらをも俺を油断なく見据える・・・
「もう、他人に迷惑をかけるな、お前の命懸けの戦いなら、何度だって、この戦いが終わってだって付き合ってやる」『サトル・・・』
俺は手に持つブルーリアに目配せし
「悪いなブルーリア、だが、」そして再度ウルフェイの方を見る「他の人の迷惑になるようなことだけはもうやめろ、魔皇帝の元からも離れろ」
ウルフェイの瞳が再度俺の方を力強く見る、いや、恨み強く・・・なのか・・・?
「・・・本当に・・・」
『ん?』
「本当に・・・他人の迷惑になるようなことをやめて、魔皇帝の元から離れれば、俺の命懸けの戦いに付き合ってくれるのか?」
「ああ、何度だって、この命尽きたってかまわない」『サトル・・・そこまで・・・』
「ブルーリア、俺もこいつと同じだ、だが、俺はこいつ程じゃない、他人の迷惑になるのなら、俺はきっと、剣を折る」
「なら、今すぐ付き合ってくれよぉおお!!」
「いいだろう!完璧に叩きのめすまで、付き合ってやる!!」
はぁあああ!!キシケンチェ・・・・
「危ないっ!!」
すると、いきなりウルフェイがなりふり構わず俺を横に弾き飛ばした!?
・・・俺の背後から来た青長い光弾は・・・ウルフェイの胴を貫いていた・・・
「ウルフェイ!?」
倒れるウルフェイに思わず駆け寄り受け止める俺達!
「ウルフェイ、ウルフェイ、なんで!?」
「やはり人間とは脆い・・・」
光弾と声が来た方を思わず見る、
そこにいたのは青いひし形・・・!
「貴様、ジオ!?」
「なに、私は裏切り者を始末しただけの事・・・何も責められるようなことはしてません」
「がはっ・・・キシケンブルー」聞こえた声に、思わず視線が戻る
「ウ・・・ウルフェイ!?」
「こ・・・こいつを・・・」
ウルフェイがその手に握っていたのは・・・青い・・・クレスト!?思わずその手に握る・・・
「なんで・・・なんで・・・」
「いいか・・・俺に負けるまで・・・誰にも、負けるんじゃねぇぞ!!」
ウルフェイが消えていく・・・
「ウルフェイ・・・」「『ウルフェ~イ!!!』」
涙がこぼれ出る・・・ようやく、ようやく・・・心置きなく戦える相手と出会ったのに・・・
が、そんな暇も許しちゃくれなかった、ジオの手より、光弾が発射されたからだ、
俺は跳び起きるように避け、ジオと対峙する、
「っち、さすがに二回目はうまくいきませんか・・・」
「行くぞブルーリア」『わかっているさ、サトル』
「ですが、先程の決闘で消耗しきっている身、すぐに始末してあげましょう」
「『キシケンチェンジ!青の騎士!キシケンブルー!!』」
さらに
「『マスターブルークレスト!!』」
俺の体に更なるエネルギーが迸り纏われていき、新たな鎧兜盾、そして、剣がのびるかのような追加の刃が装着される・・・!
「『刃たる青の騎士!ブレイドキシケンブルー!!』」
背後からの青い爆発が、俺達を揺らす!!
「下らない、姿が変わっただけだ・・・はっ!」
両手からの銃撃、盾を使う必要もない、一気に突撃する!
銃撃が横をすり抜けて行く・・・
「ば・・・馬鹿な、なぜ当たらない!?」
何発も何発も連射するが、一発足りとて当たらない、
当たり前だ、向こうの腕の角度を見て、弾道を予測、そのギリギリ外れるところに足を動かして移動しつつ突進しているのだから!
「ええい、このこのこの!」
「無駄だ!」
連射が続く中、そのまま距離を詰め、大上段からの一撃!
「ぐはっ!」
そこから一気に二閃剣を叩き込み、最後に思い切り突く!
「ぐはあああ!」
「とどめだ!マスターナイトスラッシュ!!」
そこから一気に解き放たれた剣閃の衝撃波は、避ける間もなくジオを真っ二つに叩き斬り、消滅させたのだった・・・
「まだ安心は出来ませんよぉ~!!」
響く声とともに、ジオが巨大化!?
「くそっ!みんなを呼ぼう!」
『でも、もうみんな寝てるんじゃないの?』
「俺達だけでも行くんだ、ブルーサーペント!!」
すると、機械のような青胴長竜が移動してくる、そこに俺は跳び乗り
「そんなもの、こうだ!」
しかし、ジオの両手よりのガムシャラな射撃攻勢に距離を詰められない!?
外れた光弾により、地面が幾度も火花のような爆発音が響き
『どうするんだ?電撃もこの距離じゃ届かない』「くそっ!みんなを待つしか」
「キシャアアア!!」
あれは・・・上から飛んでくる赤と黒の竜は・・・ヴォルケーノドラゴン!?
「まさか、俺達に力を貸してくれるのか!?」
「キシャアアア!!」
『行くぞ、サトル、合体だ!』「おう!」
人型へと変わるヴォルケーノドラゴンの開いた胸部にブルーサーペントが収まり、胸に首長竜の顔が置かれつつ目の青い、王冠が拡張されたようなマスクの頭部がかぶさる!
「『完成!サーペントキシケンオー!!』」
「だからそんな物に意味はない!!」
ジオが再度の銃撃、だが、まったく効いていない!
そのまま近づき、剣の一撃をお見舞いする!
「ぐはっ!そんな!?」
そこから追撃を二回繰り出し、
「『サーペントナイツキングスラッシュ!!』」
電撃を帯びた一太刀が、ものの見事にジオを爆散せしめたのだった・・・
「ウルフェイ・・・」
月の登る海で俺はウルフェイのクレストを見る・・・
『ま・・・良い奴ではなかったが・・・』
「ウルフェイ、お前の力を借りて、王国を取り戻す、そして、また会うその時が来たら、今度こそ、決着をつけよう・・・」
『その時は、是非とも、ご同伴させてもらいたいね、剣としてか、はたまた、判定人としてか・・・』
リストバンドに戻ったブルーリアを、俺はウルフェイのクレストがに視界の端に入るように上げて視線を向ける
「ああ、お前も一緒だ、ブルーリア、さぁ、心おきなく戦うためにも、この世界とお前達の王国に、平和を取り戻さないとな!!」
言って見る夜空の月に、ウルフェイが写っている気がした・・・
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