バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

ハーフビースト:ハーフヒューマン/10

ハーフビースト:ハーフヒューマン 10
 
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10
 
 「う~ん、ここは・・・?」
 「おお、気が付いたようじゃ」
 とまぁ、知り合いのドクターのとこにラズを運び込んだってわけだ・・・
 診察室とは別の入院患者用の、といっても、診察用の机と椅子が無くて代わりにベットとそのわきに小さい箪笥がある程度の違いだが、の部屋にラズを寝かせ、様子を見ていたところ、
 ラズの目が覚め、その上半身を起こす、
 「気分はどうだ?」
 ラズがそばの丸椅子に座る俺に目を向ける
 「あ・・・真斗さん・・・あれ?ここは・・・」
 ラズが見慣れぬであろう部屋を見回し、俺のそばにいる人物を見つける
 「ドクター?」
 そう、半蛾のドクターだ
 「うむ、久しぶりじゃのう」
 返しで首を縦に振りつつラズを注視するドクター、
 対するラズもドクターを見たまま再度口を開く
 「僕、どうしてここに・・・?」
 「おそらく、体の変異に精神が耐えきれず、正気を失っておったんじゃろう・・・」
 「正気?体の変異って・・・あ!」
 ようやく、ラズが自分の右手を見て気付く、
 その手の平を自身に向けるように動かす蔓巻く右手を見開き見る両目は驚きと歓喜に力いっぱい大きく開かれている
 「僕・・・なれたんだ、半人半獣に!!」
 笑みがこぼれ嬉しそうだ、ま、ここに来た理由が半人半獣になる為だったからな、もっとも、その姿だと半人半獣じゃなく半人半草だけど・・・
 「これで獣の感覚を利用してもっと植物のことが知れる・・・全く新しい論文が書ける・・・もっと、未知を知れる!!」
 おかげで俺がとばっちりを受けたわけだが、にしても・・・
 「正気を失うなんてことあるんですか?ドクター?」
 「珍しくは無いらしいぞ、」ドクターはラズを注視したまま話す、ま、さっきまで寝込んでた患者だ、簡単に目を逸らすわけにもいくまい
 「ま、半身が別物になるんじゃ、正気ぐらい失っても不思議じゃなかろう・・・」
 「そういうもんかね・・・」
 ちなみに、俺はある日目覚めた時には半人半獣になったため、そういう苦しみは全く受けていない・・・
 と、そうだ、あの狂気に飲まれていた時・・・
 俺はラズに対し、思い出したことを話す、
 「そういえば、お腹がすいてたようだが、何か食べたいものはあるか?」
 「今は一応、点滴を打ったから栄養は問題無いとは思うがな・・・」
 ドクターの付け加えからラズは俺達に向かって首を二度ほど横に振り
 「ううん・・・」
 俺達を力なく不安そうに見据える
 「その・・・言ってもいい?」
 「なんだい?野菜も肉も食べたそうじゃなかったけど、もしかしてそれらかな・・・?」
 「ドクターやナースがおいしそうに見える・・・」
 これにはさすがのドクターや後ろで控えていた看護師も引く!
 「正確には、ドクターやナースの虫の部分がおいしそうに見える・・・」
 虫?ああ、そうか・・・
 「虫食か?わしはあんまり・・・」
 「私も同感です・・・」
 ま、半身が虫ならそうなるか・・・
 ドクターと看護師の言葉に納得しつつ・・・
 二人に向かって話す
 「適当に何か探して買ってきましょうか?」
 「そうしてくれ」
 「頼んでいいかしら?私、心当たりが無くて・・・」
 「わしも残念ながらな・・・」
 もっとも、俺もあまりあるわけではないが・・・
 「わかりました、行ってきます」
 そうして・・・
 近くのスーパーでバッタクッキーなるものがあるのを思い出し見つけて持って来て、ラズに渡す、
 と、ラズは急いで袋を開け、中身のクッキーを口に放り、
 両目じりを下両げ口端上げた笑顔になる、
 「うん!おいしいおいしい!」
 楽しそうに食べ始める
 「ほんとにおいしいのか?」
 「うん!はい!」
 と、俺の一言に皆に袋ごとバッタクッキーが差し出される、見た目は茶色の少し厚みのある円形、
 存外普通だが・・・
 全員が袋から紙の擦れる音を立てながら手に取り、
 口に入れてみても俺は普通のクッキーにしか思えない・・・
 「ううん・・・わしは苦手じゃ」
 「私もです・・・」
 二人は顔の力抜けうんざりして嫌そうである
 が、ドクターは元気を入れ直したのか改めてラズを見て
 「ともかく、これで食性はわかったな、色々試してみて、食わず嫌いかも調べてみて、色々やってみるぞ!今日は検査のために入院じゃな!!」
 「ですね」
 「ええっ!?」
 ラズは大きく目と口を開き驚くが、ここは仕方ない
 「では、俺はもう帰りますね」
 ドクターが今度は俺を見てさっきのテンションのまま多少首を一度縦に振り
 「うむ!何かあったらまたよろしくな!」
 はいはい・・・
 
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