バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

暗黒騎士フラウリア(17)/9

暗黒騎士フラウリア(17) 9
 
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第9話 ドキドキのお誘い!?
 
 「フラウリア、一緒に夕食に行きませんか?」
 言い出したのは裏口より一緒に出てきたシュークさんだった
 その横から私を見る顔は穏やかで他意があるようには見えない・・・
 「でも、初対面の男性と・・・」
 「他の騎士団の団員も行っている店ですよ、暗黒騎士団の人もいますよ、賭けてもいい」
 「じゃあいなかったら?」
 「帰ってもらって構いませんよ」
 ううん、それなら、人付き合いとして・・・
 「ふふ・・・わかりました、それじゃあ少し寮に寄っていいですか?寮母に外で食べると伝えないと・・・」
 「いいですよ、私はもう伝えてありますので」
 そうして寮で伝えた後、たどり着いたのは、少し裏通りにある料理屋、
 石を積み上げて作られた真四角な家、扉の斜め上にある釘で張り付いた木の板には液体の入った樽の絵が描かれていることからどちらかと言えば居酒屋だろう、と見える、
 シュークさんは容赦無く扉を開ける
 と、右手の奥にカウンターがあり、頭に布を巻き白いシェフ姿のおじさんが私達の方を見る
 「お、いらっしゃい!シューク、」シュークを見る顔はなじみの人が来たといった感じで緊張の欠片も見えない「また女の子連れてきたのかい?」
 「そうだよ、今度こそ楽しそうな話が出来そうでね、ステラ副団長のお墨付きさ」
 ステラさんから・・・?
 「あっ!」
 ん?誰だ?
 「まさか、私より先に他の男に連れられてくるとは・・・」
 声が聞こえた方は少し遠くの丸テーブル、そこには鎧を着たまま足つきの鶏肉にかぶりつくジャンドさんと、
 同じテーブルその手前で残念そうに髪をかき上げるクーベルさんがいた
 「あら、本当にうちの騎士団の人がいたわ」
 「それじゃ、賭けは僕の勝ちだ、あそこに開いてる席に行こう」
 左手の手前にある窓際の席に着く、
 そこに置かれた薄い木のボードが二枚、糸で繋げられたメニューを机に広げ見る
 「何がいいです?」
 シュークさんの質問にメニューをよく見る、
 右側には肉類に魚、パン、パスタとメインになりえるメニューが、
 左側にはスープとサラダ等の副菜に下の方にはお酒やジュースなどのドリンクにデザートが乗っていた、
 「そうですね・・・これなんかどうでしょう?」
 私は右人差し指でメニューの名前を指していく
 「豚肉の燻製、固めのパン添えに野菜たっぷりコンソメスープ」
 「いいですね・・・じゃあ、僕は」
 言いながら正面のシュークさんも右人差し指で指していく・・・
 「ストロング牛肉セット、トマトサラダとパンは君と同じ固めのやつにしようか・・・」
 「ご注文はお決まりでしょうか?」
 貫頭衣に紺色のエプロンに頭にバンダナと、ごくごく普通の注文係の女性が来て声を掛けてくれた、私達は先ほどの注文を伝え、女性はカウンターの方を向き去っていく・・・
 「それでですね・・・」
 シュークさんが真正面から話しかけてきた、目に少し力の入った、任務の時よりも真剣な雰囲気・・・
 「あ・・・はい・・・?」
 「お菓子は作れるんですね?」
 「え、ええ・・・」
 いきなり訊くことがそれですか・・・?
 戸惑いながらも私は肯定する、
 そっか、ステラさんから聞いたのか・・・
 「お料理は・・・」
 「ええ、平民時代も父と弟の食事をよく作ってましたし、大学では料理は当番制でしたから・・・」
 シュークさんの顔が途端に明るくなり、私の方に顔を近づける
 「そうですか!では白身の魚を焼いた時は塩か?オイルか?」
 「オリーブオイルがいいですねぇ・・・」
 「そうですね!塩もいいんですがオリーブオイルには劣ります、あの風味がいいんですよ!では、ピザはトマトとチーズ、どちらが好き?」
 話すうちにだんだん楽しくなってきた!
 「どちらもですが・・・私はトマトを多めにしたいです」
 「そうですか!トマトソース!!いや、切ったトマトか!?」
 明るさを増して話しを返すシュークさん!
 ああなるほど・・・この人は・・・
 料理好きか、それなら、ここのマスターがわざわざ話しかけてきたのもわかる
 そんなこんなで料理の話で盛り上がる・・・
 そうだ!
 「そういえば、そんなに料理が好きなら、料理人になられては?」
 シュークさんは軽く首を横に振り
 「いえいえ、」続けて話す「僕は料理で生計を立てるつもりはありません、趣味や家族に作るのが楽しいんです」
 「お待たせしましたー」
 そこでウェイトレスさんが料理とフォークナイフスプーンとカトラリーを運んで来て、並べる、
 私の方は豚肉の燻製、固めのパン添えと野菜たっぷりコンソメスープ
 シュークさんの方はストロング牛肉セットにトマトサラダとパン、
 「いただきます」
 「いただきます」
 私達はそう言って両手を合わせ一礼し、料理に手を付け始める
 「そういえば、ステラさんは、もぐもぐ、料理とかしないんですかね?」
 「あの人は教会の出だから教会料理しか食べませんよ?もぐもぐ」
 燻製からいい出汁が噛めば噛むほど出てくる・・・
 ・・・行儀が悪いと思いつつも喋りながら話してしまうのだ、喋るのが本当に楽しい、特にシュークさんとは楽しく感じる・・・
 と考えつつも話しを進めるために私はシュークさんに尋ねる
 「教会料理って何です?」
 「マッシュポテトにサラダなどの、要は植物系ですね、ストロング牛肉って本当にストロングですね」
 目は普段通りに余裕ある涼し気な感じなのに口では力を入れて噛んでいる、ほんとに噛みづらそうだ・・・
 「異教徒の料理みたく、大豆から肉のようなものを作れればいいんですけどね・・・」
 「大豆から肉!?」
 思わず驚いてしまった、
 大豆は畑の肉と言われているが、それが本物の肉に・・・?
 とリアクションで一瞬シュークさんに呆れられるかと思ったがその表情は全く変わっていないのはこれがシュークさんの素なのだろうか?
 「あくまで肉のようなものですよ、」喋り言葉も変わっていない、内心ほっとする私「異国の異教徒はそうやって肉や魚を避けているとか・・・」
 へぇ・・・
 口に含んでいる燻製と一緒にパンを食べると燻製の出汁がパンに絡んでおいしい
 そんなこんなで、私達は料理の話を思い切りして、
 料金を払い店を出て見送られながら互いの寮に帰ったのだった・・・
 
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