バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

策謀の中の少女/8 カードゲーム小説WカードFu

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カードゲームライトノベル Wカードフュージョン11話 策謀の中の少女8
 
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 「長・・・老・・・?」
 ナユタさんが絶叫し、泣きはらした目のまま長老の方を見る、と同時に、周りの人の目線も長老の方に向いた
 当の長老は、僕達の方にその目を向ける
 「すまなかったなお客人、このままここから出て行きたいところじゃろうが、もう少し、わしらの、いや、わしのわがままに付き合ってくれんか?」
 「長老?」
 「何、すぐに終わる、嫌ならすぐ出て行ってもらって構わん、ナユタに付き添ってほしいのじゃ」
 「はぁ・・・」思わずカーディンの方を一瞬見るが、カーディンも判断しかねているのか、なにも答えてはくれない、仕方がない、
 「わかりました」
 「すまんな」
 長老が今度はナユタさんの方を向く
 「ナユタ、今のおぬしなら真実が見えるはずじゃ、食料庫の奥に行ってきなさい」
 「食料庫の・・・奥?」ナユタさんが静かに顔を上げる
 「でも、食料庫に奥なんて」
 「いいから、行ってきなさい」
 「あ・・・」ナユタさんがかすかに首を縦に振る「うん」
 と、角を左手の方に歩き出す、
 僕達もその後について歩いていく、
 先の方も駐車場のようになっていて、駐車スペースにはそここに人がいるのだが、さっきの一幕を見ていたのか、よってくる人はいず、ただ、おびえたような目をこちらに向けてくるだけである、
 さらにナユタさんは先にあった曲がり角を左手に曲がり歩き続ける、と、その先には、下に降りるための坂道と、長めの銃を持った大人が二人いた、
 その人達はフードとマントを深くかぶった格好をし、右手にアサルトライフルを構え、足に分厚い茶色のブーツを履いており、よく見ると、マントとフードの下から、胸部に金属製のプレートを付け、頭の被り物の下にヘルメットをかぶっているのが見垣間える、
 恐らくはこの先に行く者が無いか見張っているのだろう、とすると、この先に食料庫があるのだろうか、
 ナユタさんがふらふらと二人の間を通って行くものの、どちらも咎める様子は無い、恐らくは、さっきの話を聞いていたに違いない、
 そして、僕達もその大人たちの間を抜け、下り坂を下って行く、
 先にあったのは、地下二階といった風だろうか、一階と構造はほぼ同じでさらに暗いが、やはり真っ暗というほどではない、
 中ではさっきの大人と同じだったり頭に羽飾りみたいなものを付けた少し違う感じの服装をしたりしている人達が、駐車スペースごとにいくつも積み上げられた箱の番をしていたり、縦に並べられた銃の前に居たりする、
 おそらく、この階は倉庫として利用しているのだろう、
 しかし、それより僕の目を引いたのは、駐車場にいくつか存在している車だ、
 なんだ、車、あるんじゃん、
 「ねぇ、ナユタさん、ここの人たちって車持ってたんだね、運転は出来る人いるの?」
 「ああ、車はあるぜ、もっとも、全部エンジンやらタイヤやら壊れてて繋ぎ合わせても走行できないんだと、上にあるのが邪魔だから全部こっちに押し込んじゃったんだって・・・」
 説明口調だが、こっちを向かず、どこかぶっきらぼうで元気が無い、やはり、さっきの論争が堪えているのだろう
 そのままナユタさんはまたも左手に曲がり、突き当りまで歩いていき
 「止まれ、ナユタ」
 「なんだよ、おっさん」
 ナユタさんが不機嫌そうに前の人をねめつける、そこにいたのは、二人の、さっきの坂の前の人達と同じ、衛士たちだった
 「この先は食料庫だ、お前、前に食料よこせとわめいてここまで乗り込んできただろうが、少ない食料、まさか無断で持ってく気か?」
 「そうだな、食料が少ないことをまた喚かれてはたまらん」
 が、不機嫌一直線のナユタさんは動じず、にらむその目線のまま
 「長老から食料庫の奥に行けと言われたんだ、いいからとっとと通せ」
 食料庫の前に立つ人たちは一瞬引いて動揺するも、すぐに持ち直す
 「し、しかしだな、見知らぬ人たちもいるし、それに、食料庫に奥なんてあったか・・・?」
 「長老に聴きに行けばいいだろうが、それに食料もとらない、何なら、見張っててもいい」
 「・・・」「・・・」
 食料庫の人達は互いに顔を見あわせ、黙った後、左手側の人が僕達の左手奥に向かって走り出し、反対側の人が道を開け、僕とナユタさんとカーディンの方をじっと見る、
 多分、駆けてった人は長老に確認を取りに走り、もう一人の方は僕たちを見張ることにしたんだろう、
 そうと知ってか知らずか、ナユタさんがズンズンと先へ進んでいく、
 駐車スペースで出来た食料庫の中はほとんど何もない、ただの駐車場といった状況になっていた、
 端の方に確かに木で出来たような箱が一個か二個あるが、それだけだ、
 この人数でこれだけ食料が少なくなっていたのなら、確かに盗みに入りたくなる気持ちもわかる気がする・・・
 だけど、今のナユタさんにはこの庫の状況は目に入らず、一気に奥の方に向かう、
 なんだ、なんか、一気に近づく気が無くなってきたような、回れ右したくなってきた気が・・・
 これは・・・
 「匂いか?」
 そうだ、カーディンに言われてようやく気が付いた、言われなければ気付かなかっただろう、
 そんなに強烈なものじゃない、ただ、なんとなく近づきたくなくなるだけ、
 誰かの言葉が無ければ意識することすら難しい、なのに、とてつもなく先に進みたくなくなる、
 多分、何かあると思わなければ、すぐに戻ることを選択してしまうだろう、それがどうしてか意識することなく・・・
 でも、何があるんだ?見た目には何も・・・いや違う・・・?
 よくよく見れば、うっすら、壁の中央部分が違う・・・?意識しなければ、いや、意識していたとしてもスルーするであろう、そんなちょっとの違い・・・
 そこにナユタさんが近づいていき、右手の平を何かを調べるようにカベに這わせていく、確かに、食料庫の奥と言えば、この壁の事を指しているとしか思えないが・・・
 そんなことを考えていると、突如、ナユタさんの右手が壁の右手少し下の方で止まり、壁に指をうずめるように何かを掴み、押し、
 次の瞬間、壁の一部がまるで扉の様に奥に開いた!
 これは、一体・・・?
 あ、開いた扉を見ると縦歪曲に壁を穿つタイプの持ち手を持った扉になってる!
 そうか、目の錯覚か立体映像かを利用して、他の壁と同じ壁だと誤認させていたんだな!
 ナユタさんが扉の中に入って行く、よし、僕も
 「双歩」
 「カーディン?」
 声を掛けられ、立ち止まり、カーディンに顔を向ける
 「この先は私は立ち入れない、君の目で真実を見極めてくれ」
 なるほど、確かに、その扉は人間が出入いりできる大きさしかない、車程の大きさもあるカーディンでは無理だろう、
 「わかった」
 少し意気を込めて返事を返し、正面に向き直り、入口の中に入って行く、
 そこは、小さな小部屋だった、奥の方に瓦礫で潰れた上へと向かう階段がある、大方、元は避難階段だったのだろう、
 けど、問題なのはその階段の前である、
 そこには、ぎっしりと木のような物で出来た箱が並べ積まれ、以前使ったものか、左手上にあったであろうそのうちの一つが部屋の中央に忽然と置いてあった、
 そして、ナユタさんがその箱の前に立ち止まり、かがみながらその箱に両手を差し込み、箱の中から肌色の何かを抱き上げた、
 それはそう、生まれる前の赤ん坊、大き目の胎児といったところだろうか
 「嘘だ」
 だが、それは僕から見てもわかる、見た目こそ胎児そのものだが、生命が息づかぬそれは明らかに機械、ロボットだった
 「嘘だ」
 だけど、そんなものがここにある意味は、奥にある箱にも同じものが詰まっているとしたら・・・
 「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
 ナユタさんの、赤子を抱いた両手が震えている
 「嘘だぁーーーーーー!!」
 
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