カードゲームライトノベル Wカードフュージョン11話 策謀の中の少女3
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「何すんだよいきなり!」
これって、女の子・・・?
日焼けした浅黒い肌、可愛げと気の強さが両立された面影、髪はそこそこ黒く、適当に一直線に切られた前髪、角度を付けて真っ直ぐに切られた横髪、こちらもテキトーに結わいた後ろ髪
「おいこら!聞いてんのか!?」
「はいはい聞いてるよ、で、なんでパン泥棒なんてしたのさ?」
思わず即興で返してしまった
「な!お前、あの店主たちの仲間か!?」女の子が慌て、怒り出す
「違う」
まいったな、事情を聞きたいだけなんだけど・・・
「じゃあ、なんでパン泥棒の事を聞いて私の足止めなんて!」
「単に聞きたいこと聞いただけ」
「はぁ!?」
目と口を見開いた、少し大きめの戸惑いの声
「聞きたいことってただそれだけの・・・」
「いいけど、大声で喋って他の人達が来てもいいの?」
少女はハッと気が付いてように両手でその口を押さえた、どうやら状況が呑み込めたようだ、
「とにかく、今度はちゃんと聞くよ」
その子の目をきちんと見て、問いかけてみる、
「どうしてこんなことしたの?君、人間でしょ、他の人はいるの?僕はこっ「私が人間て・・・お前も人間か!」
突如、その女の子の顔がほころぶ、目じりを少し下げ、両口角を少し上げ
「まさか、私達の他にも人間がいたなんて!」
ドサッ!
両手を袋から離し、いきなり僕の両手を握り、胸元で互いに握り直す、
「ちょ」
「間違いない、あなた、人間ね!」
「ええい!うるさい!」
思い切り両手を振って振りほどく!
「とにかく、事情は飲み込めた!?僕は君をあのパン屋の店主に突き出すつもりなんてないの!!」
「うんっ!」
人懐っこい笑顔で首を縦に振る、まったく・・・
「それじゃ、まずはパンをかたづけよっか?」
「あ・・・」
そこには、僕が押し止めた時とパンの袋を落とした時の計二回の衝撃で散乱しまくったパン達が転がっていた、
急いで二人でパンを集め直し、パン袋に詰め直し、その少女が脇に兜を持ちつつ両手に抱え直す、
「それじゃあ、まずはカーディンの所に戻ろう、いいね?」
「カーディン?」
「僕と旅をしている車型のロボットだよ」
「旅を、一緒に?」
「そう、とにかく行くよ!」踵を返し、元の道を歩き出す
「あ、待って」
後ろの方からその娘が付いてくる気配がする、さて、カーディンの方はどうなったかな・・・?
いきなりその場を任せて離脱してしまったのは些か無責任だっただろうか・・・?
そう考えつつ元来た路地をカーディンがいるはずの左手の方に曲がる
「とっとと、ここ通しやがれ!」
「ちょ、ちょっと待ってください、今、事情を説明しますから・・・」
どうやら、まだパン屋の親父ロボがカーディンの向こう側にいるようだ、思わず角の方に身をひそめ、様子をうかがってしまう
「どうした?」思わず声の主の方を向き、右手人差し指を口に当て
「しっ!」
追ってきていたパン袋を抱えた女の子を制止し、そのまま顔の方向を戻してカーディンの様子を見る、
どうしようこの状況、カーディンがどうにもできないなら、僕の方から何か知恵を、とはいえ、僕も何も思いつかないんだよなぁ・・・
「ええっと、まずあのロボは・・・そう!私の連れなのです!」
「何だとっ!!」
パン屋ロボがいきなり大声で怒鳴りつける!ううむ、カーディン、この後どうするつもりなのか・・・
「どういうつもりだ!てめぇが泥棒を指示したってのか!」
「違います」
「あ・・・?」カーディンの冷静な言葉にパン屋の調理師ロボの声が戸惑いと怒気を含んだものに変わる、
お?
「私は普通に買い物を頼んだつもりだったのですが、何を勘違いしたのか財布も持たずに飛び出して行ってしまったのです、もちろん、商品分の料金はお支払いしますよ、いくらですか?あまり吹っかけられるのは勘弁ですが・・・」
「さ・・・三千百二十四メタだが・・・」
「わかりました、これで足りますか?」
上の方からちょろっと鉄の棒と丸い関節の補助アームの一部が見える、ここからは、よく見えないが、カーディンが補助アームで前に手に入れたレースの賞金の一部を渡しているのではないだろうか
「あ、ああ・・・ちょっと待ってな・・・」
パン屋のロボの戸惑う声と向こうに駆け出す音、そんな声や音が聞こえてしばし、今度は駆け戻る鉄足音が聞こえ
「ほれ、おつりだ、次からは連れの世話はちゃんとしろよ!」
「どうもすみません、お騒がせいたしました」
またも補助アームの途中の部分が一瞬見え、ゆっくりと鉄の足音が離れて行き、バタンとドアが閉まる音と共に完全に聞こえなくなった、
よし、今だ!
急いでカーディンの方に近寄る!
「あ、ちょっと!」
後ろの子も慌てて近づいてくる気配がする、
「ごめん、カーディン!」
「双歩!」
手早く後部座席のドアを右手で持ち手を持って開け、
「ほら、早く入って!」
「わ、わかった!」
走ってきたパン袋の子が後部座席に入り込むのを確認してドアを閉めた後、助手席のドアを急いで左手で開けて乗り込み、その左後ろ手で助手席のドアを閉め、ドアのロックを押し込みかけて、左肩上にあるシートベルトを引っ張り出して右腰下の金具に留め、
っとそうだ!
慌てて後部座席に向き、
「シートベルト閉めて!」
「シートベルト?」
後ろでちょこんと座るパン袋の女の子に言うも、戸惑ったように目を見開いて止まるばかり、
こいつ、車乗ったことないのか?
「そこ!ドア上の金具を座席の中央にある金具に押し込むの!」
「え?こうかな・・・?」
パン袋の少女は左肩側に寄りつつ金具を指示通り左手で引き出す、が、その肝心のシートベルトを立ち上がって避けようとする、
「避けない!ちゃんと体を押さえつけるように付ける!!」
「私としては、出来ればシートベルトが無いままに走り出したくはないのだが」
「わ・・・わかったよ・・・」
そのパン袋の子がきちんと座り、シートベルトを体の前に通しながら座席中央の金具に差し込み、留める
「よし、行けるよ、カーディン!」
「わかった!」
カーディンが走り出す、荒野の街から逃げるように、急ぎ走って駆けて行く・・・
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