カードゲームライトノベル Wカードフュージョン11話 策謀の中の少女2
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「あれは・・・新しい街か!」
見えてきたのは、楕円の丸い石で平たい家々が作られた街、
少し細めの道路の左右に丸石を積み上げて平たく削られた石でふたをしたような独特の家々が並ぶ街だ、
その家々は出入り口が無いわけではなく、ちゃんと正面に色々な色やデザインの石造りの扉があり、その右や左に田字や日字や日横字の様々な色合いの石枠の窓も見える、
多く見るのは一階建ての平屋であるものの、扉の無い家がそのまま上に重なったような二階建てや三階建ても存在している、
と、街の手前右手側に青く白枠白文字の四角い鉄製看板が立ってら、フランベルジュ・ヒルト、か・・・
「ねぇカーディン、フランベルジュ・ヒルトって・・・」
「ああ、間違いない、あの店のロボットに言われた地名だな」
「ということは、ここで聞き込みしなきゃいけないわけだ・・・」
「そうだな、だが、その前に食料を調達しておきたい」
確かに、水やカーディンの燃料なんかはスタンドに寄ればきっちり手に入るんだけど、食料だけはちゃんと買わなきゃならないんだよな、
どうもこの辺り色々な歪みを感じる、
そりゃ、燃料も水もロボット達が必要だから無料で、食べ物はロボット達が必要無いから有料なんだろうが、実際にスタンドで他の車型人型をはじめとしたロボット達なんかが燃料を補給してたりするところや水を入れ物とかから給水している所を見たことあるし、
それにしたってなんで必要のない食料品を店で売るはずがあるんだろうか・・・?
「できれば、食料品店で情報も手に入れられればいいんだが・・・あと、私が店に入れそうにないのもきついな、ドライブスルーとかないだろうか・・・」
「まぁ、食料品店でついでに道聞けばどうにかなるでしょ、後、店に言ってお金払えばちゃんと食料売ってくれると思うよ」
「そうか?」
「そうだって、実際、店の中に入れるロボットばかりじゃないでしょ」
「言われてみればそうだな」
「あ・・・!」
「どうした、双歩!」
道路右手側、あの、上の方で突き出された棒に左右の鎖で垂れ下げられた、濃緑色で横に少し伸びた円形の形をしていて、白い、上が丸く膨らんだ四角いシルエットが付いた看板は・・・
「あれ!あれって、パンの看板じゃない!?」
「ん、どこだ?」
「ほら、右側の少し前の方に、小さくて緑色で食パンっぽい物が描かれてる看板があるじゃん!」
「ああ、あれか!しかし、食料品店だとは限らないが」
「ダメもとで聞けばいいっての!ダメだったら謝ってそれで終わりなんだから、そんなこと心配してる場合かって、ついでに聞きたいことも全部聞いちゃおう!先へ行く道とか、違ってたら食料品店の場所も!」
「ううむ、確かにその通りだな!」
バタン!
「こらーっ!ドロボー!!」
いきなり話をしていたパン屋かもしれない店のドアが向こうに開き、中からガラクタ鉄人形がパンっぽい物を満載した紙袋を両腕に抱えて飛び出してきた!
な、何だ・・・?
あれは・・・人間!?
間違いない、僕程の大きさで丸い鉄頭に黄色いガラス玉の両眼、四角く上下に開閉する口部に簡素な鉄鎧のような胴部と腰部、円柱状の前腕下足にシンプルな鎧のような手に、足の先、それらが首部を除いてキザキザパイプで人型を構成するように繋がっていて、首からはボロボロの薄茶色のマントを羽織っている
一見するとロボットにも見えるけど、着ぐるみを無理やり来てるようなあの走り方、やっぱり、人間だ!
あ、店の方からまた誰か出てきた!
それは、看板のような丸い帽子をかぶり、白い調理服と白いエプロンを着たロボット、
顔は切れ込みが入ったフランスパンの下の方に電球の両眼球が付いたような物で、ガタイはそこそこいい方だが、
いかんせん顔を含めた衣類以外の部分全てが無塗装の鋼のロボットそのものである、両手首や両足首の肌の形の装甲の切れ込みから内部に鉄で出来たパワーケーブルが覗くのがいかにもといった感じだ、
そのロボットが右手に、あれは、伸ばし棒だろうか、長い鉄の缶状の部分がありその両端に先の膨らんだ滴状の持ち手が付いている、そして、それの一方の持ち手を右手で持って振り回し、さっきの子を追いかけまわしているのである、っつ、これは・・・
「カーディン!あの二体の間に割り込めない!?」
「え・・・だが・・・」
「いいから、出来るの!出来ないの!?」
「や、やってみよう・・・」
カーディンがスピードを上げ、パン職人ロボの前に割り込む!
「な、何だてめぇは!!」
同時に、さっきのロボぐるみは左手側の家の間の路地に入って行く!
「っつ!早く追わなきゃ!カーディン、ここお願い!」
「え、えええええ!」
「おい、てめぇ、どういうつもりだ!」
よし、パン作りロボの気がカーディンの方に行ってる、まわりに別のロボットの気配も無い、今のうちに!
急いで右腰のシートベルトの留め具のスイッチを右手で押して外し、左手で助手席の窓際のロックを引き上げ外しそのドアをドアノブを引いて開け、外に出て右手後ろ手でドアを閉め走り出す!
「おい!聞いてんのか!」
「お、落ち着いてください・・・」
ごめん、カーディン!こっちに来て初めて見た人間なんだ・・・このまま出来る限り時間稼いで!
急いでさっきの着ぐロボの入って行った路地に入る、
幸い、路地の分かれ道にまだ到達していなかったおかげで僕の視界の中にいる、それに、着ぐるみを着ているせいか動きも少し遅い!これならすぐに追いつき
あ!右足の方に曲がって行く!くそっ!
思い切り足の速度を上げ、追尾、同じ角を曲がる、
よし!見失ってはいない!奥の方に走って行っているのが見える!
さらにスピードを上げて全速力で走り込み、後ろの方から思い切り飛びつき、抑える!
「うわっ!」
頭にかぶっていた球状の頭が取れ、前の方の地面に落ちて軽い鉄の音響かせバウンドし、勢いが無くなり転がった・・・
カン!カン!コロコロ・・・・
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