水晶の島のデモの末路 ダブモン!!9話21
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「大統領邸が行政の中心部も兼ねているからな、主要人物も集まっているはずだ」
大きなクリーム色の壁に覆われた屋敷、そこに突入していくデモ隊・・・
俺達も走り出す
「それで、悪人捕らえてどうしようってんだ?」
「本来なら、兵士たちに引渡し、正当な裁判でも受けさせるのだが、もう、そうはいくまい、私達が法律にのっとって行うしかない・・・」
デモ隊にあけ放たれた扉をくぐる、そこにあったのは、人の胸像が奥左右にあり、左右に道が分かれた広場、金縁の豪華な赤じゅうたんが敷かれ、白いアーチで天井を支える柱が立ち並ぶ青い高級石タイルの広場で、デモ隊は左右に分かれる、俺は・・・
「左右どっちに行っても奥までたどり着く」
「なら、人が少ない方、左だ!」
「仕方ないな・・・」
神父の話から、俺たちは左に向かって走り出す!!
「にしてもさっきの話、私達が法律にのっとって行うって、私刑じゃないのか?」
「それは軍事・治安・司法等の行政機関がきちんと動いていればそうだろうな、だが、今はそうではない、治安維持機構が明確に働かない場合において治安維持機構に逆らい自身の命を守るために行動すると緊急避難にあたるのか否かは難しい問題だが、少なくとも今回は私の知り合いの不当に辞めさせられた裁判官などに頼るつもりだよ、出来る限り形式的には動くつもりだ、皆が私の言うことを聞いてくれるならね」
「神父ってのは顔が広いんだな」
などと言いつつ適当に奥の方に進むように廊下を先に先にと走り込む
「不幸な時代ほど顔が広くなるのは皮肉だがな」
ん?あれは・・・廊下の先の方!
「ちょっと、どういうつもりよお父さん!!」
・・・薄緑の派手なシャツを着た・・・海水浴場にいたお姉さん!?
「ここにいればデモ隊は怖くないって言われたからここに来たのに!!」
「待て待て、話せばわかる」
俺達から見て左に向かい合うのは口髭など生やした気弱そうな男性、
ボタン付きの妙にしゃんとしたシャツなど着ているが、本人の気質とあってはなさそうだ・・・
「市民なんぞどうとでもしてくれるって言って、大学に裏入学裏卒業までさせて大企業に就職させたのはあんたじゃない!!、それなのに、ビィジョンブック内じゃそれがばれて叩かれてんじゃない!!」
「ばれても堂々としてればいいのだ!そんな奴らはお父さんが叩き潰してやる!!」
そういう問題じゃねぇ
「もういいわ、私は逃げるわ、じゃあね!」
女性が奥に駆け曲がり角があったのか右手の方に曲がって見えなくなる・・・
「お、おい、待ちなさい!」
と、男が気配を察したのかこちらに顔を向け、驚いたのか一瞬目を見開く
「はっ、デモ隊!?くそっ!!」
そして、その男も逃げて行く・・・
「・・・思い出した、あれは・・・まさか、事務次官!?」
「へ?」
言い出した右手の神父の方に、思わず俺たちの顔が向いた
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