バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

この争い起きた戦場で ダブモン!!8話/26

この争い起きた戦場で ダブモン!!8話26
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
f:id:OirenW:20191231190535p:plain
 
 「さぁ、これで勝負あったわ!」
 わぁああああ・・・
 背後より歓声が沸き起こり、向こうの将はがっくりと片膝を落とす
 「致し方あるまい、兵を引こう、そこの将と対戦できなかったのが残念だが・・・」
 言いつつも、こちらの将軍に向かって目線を向ける
 しかし、こちらの将軍は冷静に見返し、口を開き、
 「そのような事は、誰かの命を賭してでもやるべきことではない」
 前に出て話しだす
 「確かに実力を確かめるのはある意味では意味のあることかもしれん、今後、私達にそのような機会が訪れることは無いだろう、だが、だからといって誰かを犠牲にしてまでそのような事は行うべきではない・・・」
 その言葉に、向こうの将軍は力なく頭を伏せ、
 「・・・確かにその通りだな・・・それでは、約束通り、この首、持って行くがいい」
 そんなもの、私は・・・いえ、みんなは・・・
 「いらないわ」
 「なんだと?」
 向こうの将軍の目が言葉を発した私の方に向き、いきなり厳しくなる、
 「どういう意味かね?」
 「いらないって、言ってるのよ、それよりも、ここにいる人たちを早く引かせて、壁を再建するまで手も出さないで、あなた一人の命より、ここにいる全員の命の方が大事だし、重いわ、それに、あなたなら、しばらく手を出しそうにもないしね、ですよね、将軍様?」
 言って私は威圧するかの方にこちらの将軍を横目で見る
 「あ、あぁ・・・」
 戸惑い気味に答える将軍
 「ふ、ふははは・・・」
 と、いきなり顔を上に向けながら笑いだす向こうの将軍
 「命を賭して戦った相手を慮り、更には冷静に判断まで下すか・・・」
 徐々に考えを変えたかのように顔を下げこちらの方を真正面に向く向こうの将軍
 「いいだろう、今はここを引き、防御に徹するとしよう、上の方には、私から何とか」
 「そのような事はするべきでは無いっ!!」
 突如、魔族群より迫りくる火の拳!
 「おっと」
 それをウィルピーが槌と鋏を振るい、発生した爆発とともに弾いた!
 「おいおい、あぶねぇなぁ・・・」
 ウィルピーがぼやく中、消える爆炎の向こうに姿を現したのは、あの爆発の魔族!
 その他全員がどよめき視線を向ける中、その魔族が、いまだ片膝着く向こうの将軍に目を向ける
 「魔王様はここを攻略しろとおっしゃった、それを無下にするつもりかっ!!」
 「そう言われても、兵士がいなくなれば戦う事すらできなくなる・・・」
 「もういいっ!この私が一人でも!」
 魔族がこちらに顔を向ける、その目には狂気にも似た闘志が宿っているように見えた
 「仕方ねぇ、もう一回ぶっ潰すぞ相棒!!」
 ったく・・・
 「わかったわ」
 「今度はそうはいかない!」
 魔族の声が響き渡り、
 私達は再び対峙する
 「おいおい、せっかく来てみれば物騒な事をやっているな・・・」
 天より来たりた声は一陣の刃となって私達の前を横切って豪衝撃波と共に両軍を完全に分断した、
 あれは・・・カブトムシ!?でっかいカブトムシ!?
 そして、弧円を描くように真上まで飛んで太陽を背にしながら人型となって私達の合間に降り立つ、
 両足で立ち、右手はカブトの角、左手はクワガタの鋏となっていて、副椀を持ち、
 筋肉質の肉体を包むかのような茶色い甲殻に、複眼、そして三本の角を持つ甲虫種、
 間違いない、あれは・・・
 「トリプティオ様だ!」
 「トリプティオ様ー!!」
 私の思考が答えをまとめきる前に両軍の兵士たちが声を上げる、
 あれが・・・本物の・・・伝説のダブモン、トリプティオ!?
 それが冷静に周りを、おおよそ私を中心として見渡し
 「はじめまして、私が伝説のダブモンとも呼ばれるものの一体、トリプティオというものだ」
 威厳と爽やかさを両立した地の精練さを体現したような声である、
 「今回は、私自身の気を感じてここまで来たのだが、」
 そして、向こうの将軍の方に顔を向ける
 「君が持っているものは私のカードだね?」
 「はっ!そうでございます」
 魔族の将が頭を下げ、二枚のカードを差し出した、トリプティオとトリプティオ・オーバーのカードだ、
 「残念ながら、それは僕が没収させてもらうよ」
 「は!?しかし・・・」
 向こうの将軍が頭を上げる間には、いつの間にかトリプティオの鋏にカードが取られていた・・・
 それをトリプティオは向こうの将軍を見降ろしたまま
 「しかし・・・なんだい?こいつは古い時代に私が私に挑んできた格闘家に記念として渡したものだ、その格闘家はもうこの世にはいないだろう、君はこれをどこで?」
 「そ・・・それは・・・」
 向こうの将軍が言葉に詰まり、うつむいた・・・
 「大方、その格闘家の日記か何かに挟まっていたのを偶然見つけたんだろう、残念ながら、これは彼に与えたものでね、ましてや、これを使ってカードバトルに負けるなどとは・・・」
 「・・・」
 向こうの将軍、顔を伏せたまま一言足りとて喋らない、
 「もし、これを取り返したいのなら、後で僕の所まで取りに来ればいい、その時は遠慮なく相手になろう」
 「・・・」
 向こうの将軍のあきらめたような悔しそうな顔・・・
 「さて、続けてはそちらの」
 「待て」
 げっ、さっきの魔族!?
 トリプティオがなぜか私の方に向きかけた顔を、声をかけた魔族の方に向きなおす、魔族もトリプティオを見上げ
 「貴様、伝説のダブモンと呼ばれる癖に、なぜ、戦いを止めるようなマネをした!?」
 「本来なら、戦いに介入などしないのだがね、私のカードを使ったカードバトルに勝ったようだし、戦いも収まりかけていたんでね、介入しても大して影響はないと・・・」
 「違う、戦いは収まってなどいない・・・」
 「何?」
 「今ここで貴様を倒し、私達が一番力を持っていることを証明させてやる・・・魔王様の手下であるにもかかわらずに従わぬ貴様に、天誅を下してやる!!」
 「ダブモン達は魔王の手下などではない!女神様の賜りものだ!!」
 さすがに将軍が一言言いだすが、それを左手鋏で遮り制すトリプティオ、
 「ふむ・・・まぁいい、ここ最近、少々退屈だったからね、少し相手をしてあげよう・・・」
 「見たか、貴様ら、一斉に魔法発射だ!!はぁああ!!」
 「ま、まて!」
 将軍が止めるも、さっきの魔族の賛同者がいるのか、半数ほどの魔族が一声に炎を飛ばし、
 魔族もその拳を直接トリプティオの右足に叩き込んだ
 唸る轟音と爆炎にトリプティオが包まれる、が、
 「その程度かな?」
 爆煙が晴れた時、何事も無かったかのようにトリプティオはそこに立っていた
 見上げ目を見開いた驚愕の表情を浮かべる爆発の魔族
 「なんだと・・・?」
 対し、トリプティオは慈悲すら浮かべるように見据え、
 「君の拳には魂がこもっていない、ただただ魔法をぶつけるだけの拳だ、以前戦った格闘家など、甲虫類の体の構造を研究して私の弱点を独自に分析、その上でまっすぐに突いて来たよ、私もスネに物が当たったなりには痛かった」
 「ふざけるな!」
 今度は両拳に魔力を集めて叩きつける一撃、
 しかし、爆煙が晴れても、爆煙の向こうにいたトリプティオには何らダメージを与えられているようには見えなかった・・・
 「今の怒りの一撃というのは実にいい、破壊力が増大している、しかし、怒りはただただ発散するだけでは当てるべき部位を狙い切れない、大切なのは感情と、それを超える冷静さもだ」
 「な!?お前達、何をしている!!」
 さっきの魔族の振り返っての檄が飛ぶが、魔族たちは顔の力が混乱した困惑の表情を浮かべるのみ、
 そう、最初の一発の後、まったく魔法が飛んでいないのだ、
 わかってしまったのだ、力の差を、
 恐らく、魔法を数限りなく当てれば、確かにトリプティオを倒せるかもしれない、しかし、その前に自分達が蹂躙されるだろう、そう確信させるほどの、それほどの力量の差を・・・
 「この!」
 振り返った爆発の魔族の両拳に魔力が宿る
 「おっと、戦意を喪失したものに乱暴はよくないな」
 トリプティオが右つま先を上げて降ろした次の瞬間、
 さっきの魔族の下の地面がぽっかりと空いて、魔族が落ちて閉じられると地面から、岩に身体全てをからめ捕られ一切身動きが取れないような状態でプッと音立て吐き出されるように飛び出した
 何もできなくなった魔族が、着地し、ころりと転がる・・・
 「ああ、一応空気穴は空けておいたよ、でも、早い内に取り外さないと、餓死ぐらいはするだろうねぇ・・・」
 「とっとと回収しろ!!」
 向こうの将軍の声が飛び、兵士たちが押して引いて引きずり回収していく、
 この戦いで一体何度兵士に回収されれば気が済むのだろうか・・・
 「さて、話を戻そうか、」
 と、先ほど同様、なぜかトリプティオが私の方に目線を向けてきた
 「お嬢さん?」
 「私?」
 「その通り」
 私に目線を合わせる様にひざまずくトリプティオ、つったって、向こうの方がまだ私の三倍以上高さがあるわけだが・・・
 「君は私のカードに勝った、もし望むのであれば・・・君の願いを叶えたいと思う」
 え・・・!?私の願いを!?
 女神といいこいつといい、誰かの願いを叶えたがる症候群でも持っているのだろうか?
 まぁ、偉くて力があって余裕のある奴というのは様々な理由で力なき者の願いを叶えたがるものなのかもしれない、
 でもな・・・願いって言っても・・・あ!
 「じゃ、じゃあ、私を大人気アイドルに・・・」
 「私の力は大地の力を司るものだ、残念だが、そのような願いはかなえられない・・・」
 だよねー
 周りのみんなが目を丸くしてきょとんとしているが、あえて無視、
 「それじゃあ・・・この戦いを止めてちょうだい、完全に」
 「了解した」
 すると、トリプティオがその両角鋏を地面に付きたてた
 地面が揺れながら盛り上がってる!?
 「な、なんだこれは!?」
 「退避しろ!魔族領まで戻れ!!」
 「ええい!こちらも退避だ!!」
 互いの将軍の声が響く中
 「四葉!そこも危ない!!」
 良星!?思わず振り返り
 「わかってるって、」
 ウィルピーに目線を送る
 「戻ろう、ウィルピー」
 「おう!」
 そうして、私達と兵士たち全員がその場から避難する、
 その間にも、隆起した地面が一気に盛り上がって行き、
 私達がかなり離れたところにまで退避したころには、
 今までに見たことも無いほども巨大で高い大岩山が出現していた、
 唖然と見上げる私達・・・
 「このような高き山、我が生涯ではただの一度も見たことも、いや、中央大陸どころか、この世界でも存在しているとは思えない・・・」
 将軍がそこまで言う高さなのか・・・
 確かに、雲を突き抜け、そのてっぺんはまったくと言っていいほど見えない・・・
 そこにトリプティオが降りてきて着地する・・・
 それは私の方を見据え
 「これで願いは叶えたぞ・・・」
 と、確かにそう言った、
 そう、これほどの高さと険しさならば、人間魔族両軍が軍を率いて立ち入ることは不可能だろう、
 端の方に壁が見えるが、確かに、この辺りではもう戦いは起こらないに違いない
 「それでは・・・」
 「ふぅむ・・・」
 すると、去ろうとするトリプティオを遮るように横の将軍が右手を顎に当てて何かを考え、そして・・・
 「この山の名はどうするべきか・・・」
 とのたまった
 「山の名?確かに、これを機に決めておいたほうがよいかもしれんな・・・」
 トリプティオもなぜか乗り気である
 「どんな名だろうと構わねぇ様な気がするがな」
 「同感」
 「トリプティオ殿」
 と、ウィルピーの私の感想を聞いていないのように将軍がトリプティオに声をかけた
 「なんだね?」
 将軍を見下ろすトリプティオ
 「この山に、貴殿の名を付けようと思うのだが?」
 なるほど、確かに、山を作った張本人はトリプティオなんだから、確かにふさわしいかもしれない、が、
 「それは辞めた方がいい」
 そう、トリプティオは言い放った
 「私の名や異名を冠する山は大小合わせこの世に三十程存在している、極力やめた方がいい」
 「では女神様の・・・」
 「女神の名や異名や業や功績にちなみ名を付けられた山は軽く一千を超える、これも極力避けた方がいいだろう・・・」
 げーっ!あの女神、そこまで山の名前になってるのか・・・
 「ふむ・・・それなら・・・」
 と、将軍が先ほどと同じようにしばし考え、私の方に顔を向ける
 「時に、主の名前は確か・・・」
 何だいきなり・・・
 「四葉、蜜羽、四葉
 「ファーストネームは?」
 「四葉だけど?」
 「ふむ・・・それならば・・・」
 将軍は山を見据え堂々と
 「この山を四葉山と命名する!!」
 は・・・!?
 「え、ええっ!?」
 「いいんじゃないか?」
 トリプティオ!?私が驚く間に同意しないで!
 「他に同じ名の山など存在しないし、女神や私達に頼るよりよほどいいだろう・・・」
 が、私の気持ちも空しく、トリプティオは続ける
 「まぁいいじゃねーか、別に不都合があるわけじゃなし」
 ウィルピー!?
 両腕を組み、納得したかのように私の方を見ながら首を縦に振る、
 「よかったじゃんか、これで名前が売れるだろ?」
 「だな」
 「そうそう」
 良星、兎白、鼓動!?そんな軽くっ!?私の方を少しあきれながら見つつっ!?
 「・・・」
 アクリスは微笑みながら顔の筋肉が少し引きつり戸惑っているのが見える
 「よかったな、俺の頭にも今回のことは焼きつけておこう」
 「いやー、いい土産話ができたわ―」
 「俺の場合は距離が近すぎて土産話に出来るかどうかも怪しいもんだがな、がっはっはっ!!」
 カンテーラ、フリィジア、イグリード!?まで!?
 「え、ええぇええええええ・・・!?」
 戸惑いの私の声だけが、まわりに響いていくのだった・・・
 
ダブモン八話 この争い起きた戦場で おわり
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――