氷漬け罪の雪女と氷精霊との出会い ダブモン!!6話/09
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台地3
「これは、村、かな・・・?」
雪の積もる中央の大通りに家が並んでいる、クリーム色の石材で出来た家々であり、
雪よけにか、屋根は上に鋭く三角になっていて、窓は木製の雪よけの屋根を上げられるようになっているが、今はほとんどが閉じている、
と、その中にいくつもの布を重ね着た服をまとった少し年の行った青年が、急いでこちらに駆け寄ってきた
「おい!君達、そんな薄着じゃ凍ってしまうぞ!」
「心配無用」
返事をしたのは先頭にいたカンテーラだ、その左手のカンテラを青年に掲げる
それを見た青年は驚きの表情へと変わり
「暖かい・・・まさか、君の力で暖めていたのか!?」
「その通り!」
カンテーラが両手を両腰に当て、自慢げに無意味に胸を張る
が、青年は眉尻を下げた心配そうな表情へと変わっていく、
「しかしなぁ、君がいなくなったら子供達は凍えてしまうだろう、村の中には防寒具をそろえた衣料店もあるから、凍えないうちによって揃えておきなさい」
「はーい」「はーい」「はーい」
「はーい」
「それと、洞窟のことも訊いておきますですよ」
「ああ、そうだった、なぁ、洞窟が通行止めって本当か?」ウィルピーの言葉に思わず俺は問い始める
「ああ、あの洞窟な、」一瞬だけ後ろの方に視線を向ける青年「向こう側を抜けるのに使っていたんだが、村の馴染みのダブモンが人を近づけないようにしてるんだよ、騎士団が来たんだが、追い返されたんだ」
「騎士団?ダブモンがらみのトラブルは教会の管轄じゃないのか?」
「さぁなぁ、実は、俺の幼馴染に軍に入ったやつがいてさ、そいつがらみのトラブルなんだと、くわしいことは村長にでも聞いてくれ、奥の方の・・・」場所を正確に覚えていないのか、村を見ながら解説を始めた「宿屋の斜め前の、教会の方じゃないところに居を構えてるから、衣料店もそばにあるからわかると思う」
「了解」答えたそばから、青年は心配そうな顔をこちらに戻す
「じゃあな、ちゃんと防寒しろよ・・・」
そう言って、青年が村に戻って行く、単なる通りすがりだったのだろう、
とにかく、青年の言った通りに村長とかいうのに話を聞く必要があるか・・・
そのまま村の中に入り、先の方に歩いて行く、
一応、女性や女の子、老人なども、さっきの青年と似たような格好で歩いていたりするが、
一様に奇妙なものでも見るような眼で俺達を見ていた、
よそ者が珍しいのかとも思ったが、台地の下の方で会った青年もいた通り、ここは雪の台地の通り道に当たる、
その上、この雪景色じゃ、ここで身支度したり泊まって行ったりする人間も珍しくないだろう、
恐らく、青年の言った通り、服装が寒そうなのが原因なのに違いない・・・
そんなこんなで村の中を歩いて行く、
と、左手の方の家に、雪だるまを背景にベットの絵が描かれた扉向こう斜め上に刺さった鉄柱からの吊り看板を見つけた、
こっちに来てからよく見るタイプの宿屋の看板だ、
そうなら、あれの斜め前、教会の方じゃない方・・・あ、あれか・・・?
様式は他の家と変わらぬながら、両開きの扉のある前面中央に煉瓦の四角い塔があり、その上の方に4方に逆U字の空洞を作り、その中央に鐘を吊り下げ、その上に羽ロザリオが立っている、
あれが教会だろう、つまり、その反対、一軒を間に挟んだ向こう側にある、少し大きめの家、あそこが村長とかいう家に違いない、
近づいて、声を掛けてみる
「すいませーん」
「はいよ~」
木の扉が奥へと開かれる
「どちらさんかね、聞きなれない声だが・・・?」
開いて出てきたのは、太り目のおっさんだった、
この村通用の布服に、白く抑揚のある髭を生やしている・・・
それが不思議そうに俺達を見降ろしているのだ
「なんだね、君たちは・・・」
「あの、洞窟を通りたいんですけど、通れないらしくって、事情を村長さんが知っているらしいって聞いたんですけど・・・」
「僕達、力になりたいんだ」
「事情を話してくれれば助かるな、なんて」
「ふぅむ・・・」
村長と思わしきそのおじさんは俺達を見定める様に見おろし
「俺もウィルピーもいる、こいつらだけじゃないぞ」
「です」
後ろからカンテーラとウィルピーの声が聞こえ村長さんがそちらを見る
「なんだ、ダブモンもいるのか、教会の回し者じゃないのか?」
「教会には何度か世話になったが、今は仕事も何も受けてないぜ?」
「ふむ・・・そうか、ま、わしも教会には何度も世話になったしな、とにかく、入りなさい、外で話を聞かれるとまずい」
村長が俺達を招き入れて行く、
家はすぐに広い応接間になっており、木の壁が周りを覆い白いテーブルクロスのかかった丸い机と椅子が右手に置かれ、正面の奥壁際に火のついたレンガ造りの暖炉もある、
暖炉の右の方には扉もあることから、あそこから裏に行けるに違いない、
靴を脱いであらかじめおかれていた客人用のスリッパに履きかえていると、
暖炉の前、暖炉を向くように毛皮深い一人用ソファがあり村長がそれをこちらに回してでっぷと怠惰そうに座った、
「椅子が欲しいなら勝手に持ってきなさい」
そう言われ、俺達は左奥に重ね並べられた椅子を勝手に持ってきて村長の前に並べ座る、
「さて、何から話そうか・・・そうだ、洞窟に近寄れなくしてるダブモンが誰か、知っているかね?」
「さぁ」「いいや」「聞いてねー」
「私も」「ですね」
「ふむ・・・なら、そこからか、あれの名はスノゥメア、元はこの村にも時々来て力を貸してくれたり物を物々交換したりしてくれていたのじゃ」
「そうなんですか?」「それがどうして?」「どんな事情があるんだよ?」
「事情はわしもよくわからん、だが、あの洞窟が使えなくて困っておるのは事実なんじゃ」
「村の人が軍に入った人がいて、その人がらみという話しがあるって・・・」
「確かに、あやつとそのダブモンは仲が良かった、まるで親友かあるいは・・・」
「あるいは・・・?」
「あまり詮索することでもなかろう、とにかく、仲が良かった、ともかく、あやつが軍に入った後、久方ぶりに返ってきて去って、そのしばらく後、突然騎士団がやってきて、村で少し休んだ後、洞窟に向かって行ったのじゃ、そして、返り討ちにあい、帰ってきた・・・」
「それだけか?何か変わったことは?」
カンテーラの質問に、村長が大声を上げる
「おおありじゃとも、なんてったって、近くで魔族の侵攻があったっちゅう話しだったからな」
「なんだって!?」「ええ!?」「本当かよ!?」
「大事じゃないの!」「ですねぇ・・・」
「あ奴が一時返ってきたのは、魔族の侵攻の援軍でたまたま近くに寄ったからに他ならなかった、じゃからすぐに村から去って行った、が、その後魔族の軍は撃退したと聞く、騎士団が来たのはその後じゃ」
「ふぅん、で、その人は今?」
「さぁのう、騎士になったとは聞かんが、道案内とかで騎士団の一向にいてもおかしくはなかったが、騎士団の中にもいなかったしのう、噂じゃ、そのダブモンが氷漬けにしてしまったとか・・・」
「こ・・・」「氷漬け・・・」「なんでそうなるんだよ・・・」
「わしもうわさで聞いただけじゃよ、ま、そんなこんなでな、あ奴の家族も内心心配しとるんじゃないかも思うてなぁ・・・」
「で、他に騎士団が来る心当たりは?」「全くないなら」「それでもいいけどな・・・」
「騎士団が来た時は何も無かったが、騎士団が話してるのをこっそり聞いてしまってのう・・・」
「何を・・・?」
「剣を回収せねばと・・・」
・・・
そんなこんなで宿屋の一室、晩飯を食った後の作戦会議、
いつもは割と人がいるらしいのだが、洞窟が通行止めで部屋はガラガラ、俺達は四隅にベットのある部屋を運良く二室手に入れたとそういうわけだ、
窓右側の良星横のカンテーラはまたも斜め正面の自分のベットが四葉さんに占領されているのに不満気味な表情である、少し力の入った目が語っている、話終わったら退くんだからそこまで不満を抱かなくてもよさそうなもんだがな
「ま、わしも騎士団やこの国の軍ににらまれたくはないんでな、教会に話すわけにはいかんのじゃよ、だからこのことは内密にな」
とは、剣の話をした後のじいさんの言である、
なお、宿代で手いっぱいで防寒着は一切変えなかったことは付け加えておく、とほほ・・・
まずは、話しを切り出してみる
「どう思う、あの話、裁定の剣だと思うか?」
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